700. 窓としての書物と運河を進む砕氷船
書物とは、より広く深い世界を知る窓のような存在である。そのようなことを思わざるをえない気づきを得た。 ある書籍や論文をひとたび読み終えた時、もはや自分が読む前の自分とは違う世界にいるような感覚になったことはないだろうか。そこまで大げさなものでなくても、ある書籍や論文を読み終...
699. 地上を仰ぎ見、働きかける者
意識の発達が自己を超越するような極めて高度な段階に達した時、私たちは地上の素晴らしさや残虐さのありのままの姿に眼を開かれるという。事物のありのままを見ることに関して、私は少々誤解をしていたことにはたと気づかされた。 いや、そもそも意識の発達プロセスの捉え方を誤解していたよう...
698. ポアンカレの回帰定理とターケンスの埋め込み定理
年末年始の一時帰国の最中に、私の中で、新たな経験の獲得が起きていたためか、フローニンゲンに戻ってきてからしばらくは、自分の内側で何かを整理し、それを静かに咀嚼するような現象が起きていた。 日本で得られた経験の咀嚼が、自分の内側で静かに進行し、それが落ち着くまでに幾分時間を要...
697.「あること」の奇跡
夜、感涙にむせびそうになった。書見台に乗せられた一冊の書物を読みながら、書見台がここにあるということ、そしてその書物があるということ、そこから自分が今ここにあるのだということを考えた時、抑えがたい感情が一挙に吹き上げてきたのだ。...
696. 幸福さの中心から
抜歯から一日が過ぎ、今日から再び夕食が食べられるようになった。だが、抜歯した部分に触れないように、そっと優しく食べ物を噛む必要があった。 そうした必要性のおかげで、私はいつも以上に夕食を味わうことに集中できていたように思う。昨日の私は、普段通りの夕食など食べる気もせず、良く...
695. 今日も明日も同じ道、違う道
今日は午前中に引き続き、昼食後から夕方にかけて、「複雑性と人間発達」のコースの全講義内容に関する振り返りを行っていた。この分野は現在の私の関心を最も強く引くものであるためか、時間を忘れて講義資料の振り返りに没頭していた。...
693. へその緒を切断して
今日は午前中から朦朧さと玲瓏さが混じったような不思議な意識状態にあった。意識自体は鮮明かつ透き通っているのだが、それが逆にぼんやりとした状態を生んでいるかのようであった。 いずれにせよ、こうした朦朧さと玲瓏さが混じり合った不思議な感覚のおかげで、午前中の仕事は静かに着実に進...