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1478. 言葉のクオリア


無風と無音が包む夕方のフローニンゲン。時刻が午後の八時に近づき、今日も残すところあと少しとなった。

今日は日曜日であるから、今日が終われば今週が終わることになる。そして、それは新たな週の始まりを手繰り寄せる。

九月がもう間近に迫っており、いよいよフローニンゲン大学での二年目のプログラムが始まる。その準備については申し分ない。

先ほど夕食中に毎日一つだけ食べることにしている、大きく真っ赤なトマトを見つめていた。その視線がトマトの果汁を踊らせるぐらいに、私は静かにそのトマトだけを見つめていた。

すると私は、このトマトの赤さに関心を持った。言い換えると、このトマトが赤いということを感じるその感覚に焦点を向けていたのである。

私が焦点を向けていたのは、専門用語で言えば、「クオリア」と呼ばれるものだろう。トマトを見ながら、自分の内側の感覚に焦点を当て、トマトの赤さのクオリアを掴もうとしていた。

赤色を見たことのない盲目の人に、赤さの感覚を言葉で伝えることは極めて難しい。ただし、盲目の人であっても、視覚以外の感覚器を通じたクオリアであれば理解することができるだろう。

例えば、よく熟れたトマトの甘みという「甘さ」のクオリアなどである。そのようなことを考えながら、一度視線を上げ、夕日が沈みゆく遠方の空を見た。

すると私は、自己を取り巻くありとあらゆる概念の持つクオリアを自分の内側で味わい尽くしたいという思いが湧いてきた。例えば、「感謝」や「感動」のクオリア。「熱情」と「絶対無」のクオリア。「成長」と「今日」のクオリア。

感謝が感謝であるその感覚。熱情が熱情であるその感覚。今日が今日であるその感覚を骨の髄まで感じ取りたいのだ。

日々が幸福の中で充実した形で営まれていくためには、「幸福さ」や「充実感」のクオリアを掴まなければならない。こうしたクオリアを掴めないのであれば、それらの言葉は単なるお題目に過ぎない。

そこから、現代人の多くはある種の盲目状態に陥っているのではないかと思った。「盲目」と言ってしまうと視覚的な印象を与えかねないので、それは一つ一つの言葉のクオリアを感じられない感覚的な麻痺だと言った方がいいだろう。

感謝の念を伝えるためには、そもそも「感謝」のクオリアを自分の内側を通じて掴むという経験がなければならない。幸福感を感じるためには、そもそも「幸福感」のクオリアを自らの内側に発見しておかなければならないのだ。

全ての言葉は本質的には、無限の階層性を持ったクオリアが詰まっている。その質的な差異を捉えていくのは私たちに課せられていることであり、それを放棄してしまうと、どんな言葉も表面的に一人歩きを始める。

世の中で見聞きする言葉の多くに浅薄さを感じることが多いのは、言葉のクオリアを私たちがないがしろにしているからではないだろうか。そうした状態にあって私たちに求められるのは、ここでもう一度自分の言葉の一つ一つを内側から捉え直していくことだと思う。

一つ一つの言葉が持つクオリアは重層的であるがゆえに、一つ一つの言葉と向き合えば向き合うほど、言葉のクオリアはそれが持つ深層的な感覚を私たちに開いてくれる。私たちが一つ一つの言葉と真摯に向き合うというのは、言葉に命を吹き込むことに他ならず、それが言葉のクオリアを呼び覚ます。

日々を幸福さの中で充実して過ごすためには、自己を取り巻くありとあらゆる言葉をもう一度根底から捉え直す必要があると改めて思った。今の私には感じることのできない熱情が自分の内側にあり、闇夜よりも深く、太陽よりも明るい幸福感と充実感があるに違いない。2017/8/27(日)

No.124: My Zeal for Academic Research My zeal for academic research ignited again.

I will conduct educational research on MOOCs in the second year at RUG. My avidity for research on education has two facets; evidence-based education and philosophy of education.

In parallel with my research on MOOCs, I will explore philosophy of education. My central interests in the field of education are the purpose of education and philosophical discourses on human development.

My second year at RUG provides me with ample opportunities and time to explore MOOCs and philosophy of education, although I will learn the latter by myself. Thursday, 8/31/2017

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