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502. オランダの大学院の試験


さて、今日は午後から、「タレントディベロップメントと創造性の発達」というコースの最終試験を受けに行ってきた。試験は、以前紹介したように、フローニンゲン大学が擁するザーニクキャンパスという広大な敷地内にある建物で行われた。

会場に到着すると、多くの生徒たちでごった返していた。この建物は、何やらコンピューター試験専用の施設らしく、コンピューターベースの試験は全てここで行われるそうである。そのため、他のコースの試験もここで行われることになっており、このように大量の生徒で溢れていたのだと思う。

小雨の降る中、30分ほど歩いて試験会場に到着すると、同じプログラムに所属するエスターと出会った。エスターは、天体物理学を専攻していた例のオランダ人である。試験会場の教室に近い階段にエスターは腰掛けながら、試験に向けて最終確認をしていた。

簡単に挨拶を交わし、私も試験に向けて最終確認をすることにした。その後、お互いの最終確認が終わったところで、試験について10分間ほど話をしていた。私にとっては、オランダの大学院での初めての試験であり、コンピューターベースの試験がどのようなものなのか、かなり未知なことが多かった。

そのため、エスターからの情報は色々と参考になった。試験会場の教室の扉が開くと、そこはだだっ広い空間であった。数百台近いコンピューターが整然と並んでいる様は、爽快なものがあった。教室に入室し、適当に席に腰掛けようとすると、何やら一人一人、コンピューターが事前に指定されているようであった。

受講生のIDと名前が書いている紙が置かれてあり、アルファベット順に決められた席の中から自分の場所を発見し、席に着いた。席に着くや否や試験が開始され、コンピューターにIDとパスワードを入力すると、問題画面が現れた。

事前の説明であったように、制限時間は二時間、試験問題は全部で七題である。私は四択形式の問題が好きではなく、自由記述形式の問題を好む。そのため、全問記述式の今回の試験は、自分が好むタイプの出題形式なのだが、最初の問題から一筋縄ではいかないことに気づいた。

七題中、五題は300字の字数制限があり、残りの二題は250字の字数制限が設けられていた。今日の試験を受けてみて改めて実感したが、初見の問題に対して回答の構成を練り、それをタイプすると、二時間で2,000字の文字数に到達することはほとんど不可能である。

いかんせん、試験教室に入室するのも初めてであったため、時計が教室の前方の壁にかかっていることに気づいたのは、試験が終わってからであった。最初の四題が終了した時点で、問題の右横に小さく時間が表示されていることに気づき、時間を確認すると、残り20分になっていた。

これほどまでに時間に追われるコンピューターベースの試験は、米国の大学院入学に要求されるGRE試験以来かもしれない。残り20分という時間で、まだ手を付けていない三題に対して十分な回答をすることは難しいと思ったため、とりあえず、三題の問題が要求する主要な論点だけを簡単に文章にしておく、という戦略を採用した。

私にとっては、あまりに時間の足りない試験であったが、何人かの生徒は半分の時間で回答を終え、試験場を後にしていたことには驚かされた——彼らは早く回答ができたのか、それとも途中で諦めたのだろうか・・・。

実際に、最後の三題に関しては、100字を超すぐらいの分量しか回答をすることができなかったため、次回はタイムマネジメントを適切に行う必要があるだろう。時間に追われる試験であったことは間違いないが、試験の体験としては実に面白いものであった。

この試験に向けての学習は、義務教育時代の定期試験を準備している時のような緊張感があり、非常に懐かしく思った。また、試験の問題は、七つのケーススタディに対して、コースで習得した知識を用いながら回答していくというものであり、こうした問題を回答することそのものが、実にワクワクするような体験であった。

今後履修するすべてのコースが、このようなコンピューターベースのものではないのだが、幾つかのコースは確かにこれと同じ形式で行われるため、今回の反省点を活かしながら次回の試験に臨みたいと思う。

この試験を通過したかどうか定かではないため、悠長なことを述べていられないが、良問に回答するというのは、こちらの知識体系が多いに刺激されることがわかった。試験終了後、教室を後にし、携帯電話の電源をオンにすると、エスターからテキストメッセージが届いていた。

通常であれば、彼女は制限時間の半分で回答し終えるそうだが、今回は一時間半の時間がかかった、とのことである。私からしてみると、30分も時間を残して回答し終えたことが驚きであった。教室のすぐ外で、エスターにテキストメッセージを返信し、水を飲みながらしばらく呆然としていた。

二時間にわたる試験の間中、常に集中しながら回答を考え、文章をタイプしていくという作業に対して、さすがにエネルギーを随分消費したようであった。しばらくその場で休んでいると、同じプログラムに所属しているインドネシア人のタタが教室から出てきた。

タタは、教室の壁にかかっている時計とコンピューター上のタイマーの存在に気づかなかったようであり、私と同様に、時間が足りなかったと述べていた。自宅からバスで試験会場に来たタタとその場で別れ、私は自宅まで再び歩いて帰ることにした。

すると背後から、インド系オランダ人のスーコーが声をかけてきた。スーコーは、フローニンゲン大学に来る前は、ユトレヒト大学というオランダの名門校に在学したそうであり、ユトレヒト大学でも同じようなコンピューターベースの試験が行なわれているということを教えてくれた。

コンピューター上で試験を受けることには慣れていると述べていたスーコーも、今回の試験は意外と手こずる問題が多かったそうである。オランダの大学院でのコンピューターベースの試験がどのようなものかわかったので、次回の試験に向かうまでのプロセスと設問が非常に楽しみである。

試験がひと段落したため、明後日はデン・ハーグという街を訪れようと思う。そして今日からは、私の論文アドバイザーのクネン先生が担当する、来学期の「複雑性と人間発達」というコースに向けて課題図書を読み込んでいこうと思う。

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