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3382. ピアジェの発達理論を毛嫌いする人たち(その2)


今日は早朝に、久しぶりにショパンに範を求めて作曲をした。ここのところは古典派の作曲家の曲を参考にする毎日であったから、ショパンの曲を参考にすることは良い気分転換になった。

さらには、当然ながら古典派の曲にはない音楽的観点をショパンの曲が提供してくれることも有益であった。今日はこれから、バッハの変奏曲に範を求め、その後にハーモニーに関する書籍を読んでいこうと思う。

先ほど、ピアジェの発達理論を毛嫌いする人たちの発想について日記に書き留めていた。正直なところ、彼らの発想については書き留めておくべきことがかなり多く、どこから手をつけていいのか迷うほどである。

今年の春にアムステルダムで開催されたジャン・ピアジェ国際学会に参加した時、そこには日本人研究者は誰もいなかったように思う。この学会は、ピアジェの理論を研究している者たちが集まるというよりも、現在は、発達心理学の研究を行っている学者たちが集まる学会になっているのだが、そこで最新の研究成果を発表する者、あるいはそうした発表を聴く者の中に日本人の姿が見えなかったことをふと思い出す。

物理的に日本からアムステルダムまで距離があるのはわかるが、同様の距離を持つ国からも研究者たちが集まっていたことを考えると、どうも日本の発達心理学のコミュニティは内向きのような気がしてならない。

ピアジェの発達理論を毛嫌いする人たちの話を知人から聞いてみると、端的には、そうした批判をする人たちがピアジェの理論および最新の発達心理学の研究に関して非常に無知であることに驚かされる。以前聞いた話だと、ある学者がピアジェの発達理論を批判する際に採用していた唯一の論点が、今から40年ぐらい前に行われた、ピアジェの研究成果に対する反証実験だったことに驚かされた。

確かに、その反証実験では、ピアジェが提唱する論理数学的な知性は、年齢によって発達のばらつきがあり、タスクを変えると、これまで発揮できていた能力が発揮できなくなってしまうことなどが明らかにされていた。その反証実験を受けて、ピアジェ自身も理論を見直すことを行い、さらにはピアジェの死後において、ジュアン・パスカル=レオンやロビー・ケース、さらにはカート・フィッシャーを始めとした「新ピアジェ派」の研究者たちが、「発達段階」の持つ性質を丹念に調査していくという試みが行われ、その試みは「新・新ピアジェ派」と評していいだろう現在の研究者たちにも引き継がれ、発達段階の特性については現在も様々な調査が続いている。

ピアジェの発達理論を頭ごなしに批判する人は、新・新ピアジェ派の研究成果はおろか、新ピアジェ派の研究成果について何も知らないことに驚かされる。そうした批判をする人は往々にして学者であるにもかかわらず、彼らの知識は40年前の研究成果で止まってしまっているようだ。

もう一つ、これはむしろ私が知りたいと思っていることなのだが、日本の学者や教育者の中で、ピアジェの発達理論を毛嫌いする人は、それに代わる何かしらの理論を盲信しているのではないかと思い、それが何なのかを知りたいと思う。彼らが「ピアジェの発達理論」と聞くだけで身震いする様子は、どこか他の宗教を毛嫌いする際の反応と瓜二つであり、いったい彼らはどのような他の理論を信奉しているのかを非常に気になる。

さらには、そうした宗教的盲信と相まって、ピアジェの理論を根底から批判する人たちは、自己の何かしらのシャドーを投影しているように思えて仕方ない。特に、「階層」や「レベル」という言葉に過剰に反応する様子を見ていると、それらに対する何かしらのコンプレックス(例:学歴コンプレックス、幼少時代に親や権威から抑圧された体験など)が彼らの中にあるのではないかと思う。そうしたものがなければ、あれほどの過剰反応を示すことはないと思うのだ。

要約すると、ピアジェの発達理論を毛嫌いする人たちは、「発達段階」という言葉が持つ意味を狭く——あるいは誤って——捉えており、過去のピアジェの発達モデルの何が否定され、何が否定されずに残り、そしていかように発達研究が進展していったかの知識が欠落している。

また、そうした批判をする人たちは、往々にして、発達心理学に関する最新の文献のみならず、ピアジェの発達理論に関する原著を一冊も読んでいないことがあり、そこでなされる批判はどこか「私はこの宗教を信じているから、あの宗教は嫌い(実際には、彼らは自分が信奉している宗教にすら気づけていないのだから、それよりもタチが悪いのだが)」という次元に留まるように思える。

不勉強かつ未熟な知性を持つ人間が権威の立場に立つというのは、学術の世界だけではなく、政治や経済の世界においても同様だと思うが、この問題は本当になんとかならないものだろうか。ただでさえ儒教的な発想の枠組みが根強く残っているわが国だけに、そうした人間が権威を持っているという状況はとても暗澹たる気分にさせられる。フローニンゲン:2018/11/10(土)16:18

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