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1364. 発達に必要な「良質な葛藤」と知性発達科学の先端研究


今日は午前中に出版記念ゼミナールの第二回目のクラスがあった。回線の問題以上に、Adobe ConnectとPreziの相性が悪いのか、それともAdobe Connectで画面共有をすると負荷がかかりすぎるのか、それらの問題でこちらの音声が途切れ途切れになってしまったようだ。

早急に手を打ち、結局これまでのゼミナールと同じようにマイクロソフトのPPTを活用し、画面共有をしないことにした。クラス終了後、Preziで作成した資料を全てPPTに移し替えていくという作業を行っていた。

この作業に随分と時間を取られてしまったため、夕方になるまで今日のクラスの振り返りをすることができなかった。今日のクラスを通じて得られた新たな気づきについて簡単に書き留めておきたい。

本日は、拙書『成人発達理論による能力の成長』の第二章を取り上げた。具体的には、「点・線・面・立体」の成長サイクルやフラクタル構造の話、五つの成長法則に関する話、そして本書の中では詳しく言及することのできなかった、知性発達科学の先端的な研究成果を二つほど紹介した。

特に印象に残っているのは、私の論文アドバイザーであるサスキア・クネン教授の研究成果に関するものだ。クネン教授の研究は、ロバート・キーガンの仮説的主張「発達には適切な課題と適切な支援が必要になる」というものを取り上げ、最適な葛藤量と葛藤と向き合う時期、そして支援の量などの変数を考慮に入れてコンピューター・シミレーションを行った。

葛藤量と葛藤と向き合う時期による分類に基づき、合計で六つほどのシミレーション結果をクラスの中で紹介した。シミレーション結果が示唆していることを端的に述べると、葛藤の量のみならず、人生のどの時期に葛藤と向き合うのかということが重要になる。

さらには、葛藤の量に加えて、どのような質の葛藤と向き合うのかということも合わせて大切になる。ある受講者の方が「良質な葛藤」と向き合うことの大切さについて指摘をしてくださった。

まさにその通りであり、発達を促さない葛藤もあれば、発達を促す性質を持つ葛藤というのが存在している。発達を促す葛藤の最たるものは、今の自分の発達段階よりも下過ぎず上過ぎずという課題である。

私たちには、発達の上限値と下限値から構成される発達範囲を有しているため、発達範囲の中にない課題は発達を促さない可能性が高い。クネン教授の研究では、どのような種類のどのような性質の葛藤が発達を促すのか、というところまで踏み込んでいないので、その点について研究を進めていくことは意義があるだろう。 その次に、私のメンターを務めてくださっているルート・ハータイ教授の研究についても触れた。彼の研究は、ダイナミックシステム理論とネットワーク理論が合わさった「ダイナミックネットワークアプローチ」という手法を用いて、能力の多様な要素間の関係を明らかにし、能力の動的な成長プロセスを明らかにするものである。

ハータイ教授のシミレーション結果も大変興味深く、着目する一つの能力に影響を与える多様な要素の関係性によって、その能力がどのように伸びるのかのプロセスが左右されてしまうのだ。さらには、多様な要素の中でも、とりわけ影響力の大きいものが存在しており、それはシステム科学の言葉で言えば「コントロールパラメーター」と呼ばれる。

コントロールパラメーターは、ある種、システムの挙動を決定づけるかじ取り役を担っており、その値いかんによってシステムの成長プロセスは大きく異なってくる。ダイナミックネットワークアプローチを活用した発達研究というのはまだまだこれからであり、ハータイ教授の研究はその先駆けのようなものである。

実際にこの研究は、クネン教授の研究とは少し異なり、実証データをもとに数式モデルを検証したわけではなく、仮説的にパラメーター設定を行いながらシミレーションを実行しているため、要素の定量化の問題などがまだ完全に解決しているわけではない。

いずれにせよ、近年の発達研究では、発達現象を動的なシステムかつネットワークとして捉える発想が芽生えており、二人の研究は今後も注目に値するだろう。そして、私もそうした観点で発達研究を進めていこうと思っている。2017/7/29(土) No.9: A Lesson from a Gentle Breeze A glorious tomorrow becomes today while a sublime today remains today forever. Time neither passes nor flows. In reality, it does not exist.

Instead, we have only this present moment. The past and future unite with the present.

We have only the present, and we are the present per se. A gentle breeze is passing by the world in front of me, but it is not so in a profound sense because it is always a manifestation and embodiment of the present moment. Friday, 8/4/2017

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