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1295. 真に強靭な思考の第一段階:「ヴィジョンロジック段階」の思考特性

July 19, 2017

ウィルバーのSESの注記を読み、先ほど第一部も読み返した。ここでまた少しばかり何か文章を書き留めておこうとする衝動が起こった。

 

今日はとても風が強く、いつもは優雅に空を飛ぶ鳥たちも、今日ばかりは自由自在に空を飛ぶことが難しいだろうと思っていた。しかし、書斎の窓越しに空を改めて眺めてみると、強い風をもろともせずに空を飛ぶ鳥たちの姿があった。

 

抵抗を抵抗とせず、抵抗を推進力に変えるあの姿から、私はまた一つ重要なことを学ばされたようだった。書斎の中にバッハの音楽が流れゆく。

 

昨日、以前から購入を考えていたバッハの楽譜を購入し、それが届くのが待ち遠しい。日々の作曲実践の中で、バッハの楽譜を五線譜上に再現し、解析的かつ感覚的な楽曲理解を試みたい。

 

明日は久しぶりに大学の図書館を訪れ、夏季休暇の後半に読む予定の論文をいくつか印刷しようと思う。フローニンゲン大学の教授陣の夏季休暇は以外と短く、私の論文アドバイザーであるサスキア・クネン教授は明日から研究室に戻るそうだ。

 

一年目のプログラムが終了し、二年目のプログラムが始まるまでの期間は、実質的に二ヶ月半弱あり、その期間は夏季休暇に当たる。しかし、プログラムが進行していた時以上に、私は文章を読み、そして文章を書く日々を送っているようだ。

 

大学という正規の学術機関に所属する形で探究を続け、そうした機関に所属しない形で探究を続けることの双方が重要なのだと改めて思う。

先ほど、SESを閉じ、本棚にしまったところで、その中で再度ここで書き留めておくべき内容は何かを考えていた。発達科学を探究する者として、やはり関心を持つのは、ウィルバーが命名した「ヴィジョンロジック段階」という意識の発達段階である。

 

ウィルバーはピアジェの発達モデルの延長線上にこの段階を捉え、オーロビンドが提唱した高度な霊的認識段階の前にこの段階を捉えているがゆえに、ヴィジョンロジック段階の特性はなかなか捉えづらい。

 

つまり、ピアジェの認知的発達モデルとオーロビンドの霊性発達モデルの二つが掛け合わせられてヴィジョンロジック段階というものが据えられているため、二つの発達領域の特性が混じっている印象を拭うことができないのだ。

 

こうした印象を与えるのは、ウィルバーが指摘しているように、認知を司る発達領域と霊性を司る発達領域は明確に切り分けることができないという点と、ウィルバー自身の信念である「どの発達領域も高度な段階に至れば霊的である」という点が影響しているだろう。

このように、ヴィジョンロジック段階の特性は依然として詳細を把握することは難しいが、今回改めて気づかされた重要な点が一つある。それは、ビジョンロジック段階の認知的性質に関するものであり、その言語特性についてである。

 

ウィルバーは、ピアジェが提唱した「形式操作段階」に続く「後形式操作段階」を、ヴィジョンロジック段階と重ね合わせている。とりわけ重要なのは、形式操作段階はこの世界のある領域における問題を解く際に力を発揮することができるのだが、その領域そのものに対して新たな問題を投げかけることができないという特徴を持つ。

 

一方、ヴィジョンロジック段階では、既存の問題を解くことのみならず、既存の問題が生まれる領域のコンテクストそのものを適切に把握することができるがゆえに、新たな問題提起をすることができるという特徴を持つ。

 

現代社会においては、問題を解くことに躍起になる傾向が依然として強く、問題解決能力の涵養が声高に叫ばれていることにそうした傾向を見て取ることができる。しかし、一歩冷静になって考えてみれば、問題そのものが生み出されるコンテクスト(あるいは構造)そのものを把握し、それに対して問題を投げかけることができるような「問題提起能力」の存在を私たちは見落としていることに気づくのではないだろうか。

 

問題が生み出されるコンテクストに盲目的であっても、問題だけに焦点を当てることができれば、確かにその問題は解決されたかのように見える。そうした仮の問題解決で止まってしまうのが、形式操作段階の思考特性である。

 

そこからさらに思考特性を深めると、様々な問題が生み出されるコンテクストそのものに感性が開き、コンテクストに対して新たな問題提起をする認知能力が芽生える。それがヴィジョンロジック段階の認知的発達特性の重要な点だろう。

 

そのような特徴を考えてみた時に、形式操作段階とビジョンロジック段階の言語がもたらす感覚的な差異について改めて気づかされることがあった。端的に述べると、形式操作段階の言語は、一見すると堅固な言葉の鎧を持っているのだが、何とも言えない固着性がある。

 

そうした固着性をもたらしていたのは、おそらくその段階の思考特性が問題に立脚するコンテクストに盲目的であり、それと同一化しているからなのかもしれない。一方、コンテクストそのものを対象化し、さらには複数のコンテクストを行き来し、多様な意味を網の目のように構築できるヴィジョンロジック段階の言語は、独特の堅牢性を感じさせる。

 

こうしたことからも、真に強靭な思考とは、少なくともヴィジョンロジック段階に到達した思考を指さなければならないだろう。2017/7/12

 

追記

厳密には、ヴィジョンロジック段階の意識構造は、前期・中期・後期と三つに分類される。ここで述べているヴィジョンロジック段階の特性は、中期と後期のものを指す。2017/7/19

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