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1228. 意味とメンタルモデル


今日は午後から、教育科学と複雑性科学に関する論文と、組織行動論と複雑性科学に関する論文をまず読んだ。前者の論文は、複雑性科学の中でも極めて重要な「創発」という概念を用いたカリキュラム構築や、明確な意思や意図に基づいてなされる教育と無意識になされる文化的な枠組みの吸収を区別して説明している。

中でも、「創発的認識論」の考え方が大変興味深く、これは、私たちは意味を獲得していく、という考え方に異議を唱えるものだ。その代わりに、意味とは世界への関与を通じて、継続的に構築されていく、という考え方を持っている。

つまり、意味とは、私たちが所有できるようなものではなく、世界との絶え間ない相互作用を通じて構築されていくものなのだ。ここに私は、意味というのは非連続的なものではなく、連続的であるがゆえに、自己が自己であり続けようとする根源的なものであるように思えた。

意味というのは、やはりそれほどまでに私たちの存在と密接に関わっているのだろう。もしかすると、意味というのは存在を規定し、逆に存在は意味を規定するがゆえに、両者は不可分な関係にあるのかもしれない。

夕方、小雨が降り始めた。その雨滴は量子的な小ささであり、書斎の窓から微かにその存在が確かめられた。緩やかな風が流れ、それは目の前の木々を優しく揺らしている。

少しばかり開いた窓から、小鳥の鳴き声が届けられる。しばし外界に意識を向けたところで、先ほど読んでいた二つ目の論文について考えを巡らせていた。

二つ目の論文は、経営学のジャーナルに記載されている論文なのだが、こうしたジャーナルに複雑性科学の知見が取り入れられた研究が紹介されることは極めて意味のあることだと思った。正直なところ、複雑性科学に関するこのような理論的な論文が、経営学のジャーナルに採択されていることに驚いた。

というのも、本来、経営事象や経営課題というのは非常に複雑でありながらも、経営学者の多くは、複雑性科学に造詣が深くなく、経営現象を複雑性科学の枠組みから説明した目を引くような論文がこれまであまりなかったからである。

そこでは、私が以前から気になっていた、「ダイナミックシステムの境界問題」について二つの点から解説が施されていた。システムを規定し、理論モデルや数式モデルを構築する際に、この箇所は非常に重要な論点であり、再度読み返す必要があるだろう。

また、論文の中に記載されていた、「私たちが現実世界を把握する際に、私たちはメンタルモデルを構築せざるえをえない」という言葉が強く印象に残っている。特に私たちが、現実世界の複雑な現象を認識し、それに関与・介入していくためには、メンタルモデルを構築することが不可欠なのだ。

こうしたメンタルモデルがなければ、複雑な現象を対象化することなどできないだろうし、対象化がなされなければ、適切な関与・介入など不可能だろう。また、対象とする現象が複雑であればあるほど、より高度なメンタルモデルが要求されるだろう。

このあたりの問題意識については、まさに第二弾の書籍で主張したかったことである。先ほど、一つ目の論文について振り返る中で、意味と存在の不可分性について言及したが、私たちの存在はもしかすると、メンタルモデルとも不可分な関係を結んでいるように思える。

また、メンタルモデルというものが、世界との絶え間ない相互作用によって構築されるものであり、私たちはメンタルモデルを通じて世界を認識し、世界に関与していくがゆえに、メンタルモデルは私たちの存在と密接に関係しているのみならず、世界そのものに他ならないのかもしれない。2017/6/28

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