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1202.『成人発達理論による能力の成長』:発達科学のリテラシー向上と言説空間の確立


今日は、一日の多くの時間を使って、昨日のライデン訪問について振り返っていた。随分と書き留めることがあり、実際に多くのことを書き残したのだが、それでも今日一日だけでは書き残せないことが多々あることに気づいた。

明日や明後日、さらには、それ以降も折に触れて、昨日の出来事について何かを書き留めていきたいと思う。今日はいつも以上に文章を書くことに時間を充てていたためか、書斎の窓から外を見る機会がほとんどなかったように思う。

今、夕食を摂り終えて、ようやく窓の外を眺めるといった具合である。時刻はすでに夜の八時に近づいているが、辺りはまだ夕方のような景色である。

夕方のそよ風が、木々を優しく揺らしているのが見える。仕事や学校から戻る人たちの姿もちらほらと見える。

そうした景色を眺めながら、第二弾の書籍『成人発達理論による能力の成長』について改めて考えていた。未だに、本書を通じて表現したかった主題を探すようなことをしている。

本来であれば、主題を設定した上で書籍を執筆していくべきだと思われるが、書籍が完成した後になって初めて、隠れた主題が浮かび上がってくることに気づかされる。そうした隠れた主題について、これまで少しずつ書き留めていたが、今日は新たにもう一つ、主題と呼べるべきものを見つけた。

それは、本書を通じて、私は、人間の成長や発達に関する多くの方のリテラシーの向上に寄与したいということだった。実のところ、成長や発達を取り巻くリテラシーの欠如に関しては、あまり悠長なことを言っていられないように思われた。

先ほど、これは隠れたた主題だと述べたが、そうした思いからよくよく本書を読み返してみると、冒頭の「はじめに」の文章の中に、この点について間接的に言及している箇所があることに気づく。

やはり、発達科学に関する知見というのは、日本ではほとんど入ってきていないというのが現状である。それはもちろん、発達科学の知見の大部分が英語空間で構築されているということが大きな理由だろう。

発達科学の現場では、日進月歩にその知見が蓄積されているにもかかわらず、それが世の中の多くの人に知られることはほとんどない。ある種、そうした知見というのは一部の専門家の所有物と化しており、成長や発達に関する「知の独占化」が生じているとみなすことができるだろう。

発達科学における知の進展というのは、それが日々着実に進行しているがゆえに、まるでサハラ砂漠の砂漠化の進行に様子が似ているが、実際に日本で紹介される知というのは、砂漠の中の一粒の砂に過ぎない。

こうした状況は刻一刻と悪化しており、知の進展によって、成長や発達に関する情報は日進月歩で増加しながらも、知の独占化が生じているがゆえに、それらは一部の専門家の中で閉じられたものになってしまっている。

そうした状況を少しでも改善するべく、これまでの発達科学の歩みと現在進行形で行なわれている発達科学の歩みの中に本書を据え、とりわけ重要な情報を共有することを意図して本書を執筆した。さらに、それに付随して問題視していたのは、人間の成長や発達に関する現在の言説空間の脆弱さである。

あるいは、そうした言説空間の未成熟さに危機感を抱いたというのが正直なところだ。言説空間の未成熟さは、やはり、人間の成長や発達に関する正しい知識と、一定程度の知識が不足していることに要因の一つがあるだろう。

成長や発達に関して、何か目新しい発達理論や実践方法を紹介するのではなく、そもそも成長や発達に関する議論や実践をするための土壌を構築することが急務だと思われたのだ。まさに、今の日本で欠けているのは、そうした土壌であるという強い認識があった。

仮に、そうした土壌がない中で、成長や発達に関する議論や実践を積み重ねていくことに何か意味があるだろうか。確固とした土壌がない中で行われる議論や実践をいくら積み重ねてみても、それは砂上の楼閣に過ぎないのではないだろうか。

特に、私たちが議論や実践をする対象というのは、人間なのだ。人間の知性や能力なのだ。

そのようなことを考えると、なおさら、確固とした土壌のない中で議論や実践を積み重ねていくことは、非常に問題があることだと私は思う。そうした意味で、成長や発達を取り巻く言説空間を確立していくことが、今の日本に求められることだろう。

そして、そうした言説空間を構築していくためには、一人一人のリテラシーを向上させていくことが不可欠だと思ったのである。そうした問題意識から、成長や発達に関するリテラシーの向上に少しでも寄与することを願って、本書を執筆したという背景がある。2017/6/21

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