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793. 標準化分散解析(SDA)とトレンド除去変動解析(DFA)


昼食を摂り終え、通り雨が過ぎ去った晴れ渡る空を私は静かに眺めながら、午前中の出来事を振り返っていた。先ほども、みぞれ混じりの雨が地面に叩きつけられていたのであるが、そうした激しさ以上の学びを得るような午前中だった。

今朝は、非線形性ダイナミクスの専門家であるラルフ・コックス教授の研究室を訪れていた。研究室に五分ほど早く到着し、ドアをノックすると、コックス教授が誰かとオランダ語で話しているのが聞こえた。

そのため、私は研究室の前で数分ほど待つことにし、廊下の壁に貼られたコックス教授のポスタープレゼンテーションに目を通していた。するとすぐに、一人の学生がコックス教授の研究室から出てきた。

顔を見ると、「複雑性科学と人間発達」を一緒に受講していた学生だということがわかった。彼女と簡単に言葉を交わし、コックス教授の研究室に入った。

コックス教授に挨拶をすると、お互いの近況を共有する際に、コックス教授は笑みを交えながら、「少しばかり疲労がある」ということを述べた。何があったのか聞いてみると、どうやらオランダ南部のカーニバルに昨日まで出かけていたらしい。

話を聞くと、コックス教授はオランダ南部の出身だそうで、その土地には歴史の古いカーニバルがあるそうだ。それはかなり大きいカーニバルで、三日間に及ぶものらしい。

カーニバルの話を少しばかりしたところで、私たちは本題に移った。まずは、私の方から、自分の研究テーマとデータの形式について説明し、どのような種類の非線形ダイナミクスの研究手法を活用したいのかを簡単に紹介した。

必要最低限の情報を共有しただけで、コックス教授が私の研究内容とデータの形式を掴んでくれたので非常に楽であった。そこからは、私の方から質問を投げかけ、コックス教授がそれに回答してくれるという流れで対話が進んだ。

まず最初に私が質問をしたのは、今回の研究内容の一つの側面である、教師と学習者間の行動が、各々のどのような種類の変動性を持っているのかを分析する際に、「標準化分散解析(Standardized Dispersion Analysis)」と「トレンド除去変動解析(Detrended Fluctuation Analysis)」のどちらを用いる方が望ましいのか、自分のデータセットに対してそれらの手法をうまく適用することができるのか、などについて尋ねた。 結論から述べると、どちらの手法を活用するにせよ、データを2の階乗のビンサイズに分割する都合上、最低でも256個のデータポイントが必要とのことであった。それぐらい多くのデータポイントがなければ、信頼性のある結果を得ることは難しいという説明を受けた。

残念ながら、私のデータセットにおいて、各クラスの教師と学習者の行動はそれぞれ30から50個ぐらいのデータポイントしか持たない。ただし、すべてのクラスを合算すれば、230個のデータポイントを持つ二つの時系列データが得られるため、教師と学習者がそのコース全体を通じてどのような変動性の種類を持っているかを見ることは可能であるとのことであった。

厳密には、256個のデータポイントがある方が望ましいのだが、230個でもとりあえず信頼性を担保して、変動性の傾向を分析することができるという情報を得た。また、変動性の分析に関する歴史を辿ると、最初に登場したのが標準化分散解析(SDA)だったそうだ。

しかし近年では、発達における変動性を分析する際に、トレンド除去変動解析(DFA)が主流になっているということをコックス教授から聞いた。確かに、発達現象に潜む変動性を調査する論文を見ていると、トレンド除去変動解析が用いられているものが多い。

実は数日前にダウンロードした論文を眺めていると、非線形ダイナミクスの進歩によって、さらに新しい解析手法が誕生していることを目撃していた。それらの新しい手法についても理解を深めたいと思うが、まずは標準化分散解析とトレンド除去変動解析に関する理解を確固たるものにしたい。

標準化分散解析よりも、トレンド除去変動解析の方が信頼性のある手法だということを聞いたので、早速後ほど、プログラミング言語のRを用いて、トレンド除去変動解析をクラス全体のデータに対して適用してみたい。どのような種類の変動性が見られるのか、仮説通りのものか否かを含め、今から分析結果が楽しみである。2017/3/1

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