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600. スキャフォールディングという支援の恩恵


11月の初旬から毎週末開催しているオンラインゼミナールのクラスを自分でも少し振り返っていた。先日のクラスでは、発達支援に有益な概念を四つほど取り上げた。

そのうちの一つは、「スキャフォールディング」と呼ばれるものである。スキャフォールディングという言葉を言い換えると、「足場固め」という言葉を当ててもいいだろう。

端的に述べると、スキャフォールディングとは、他者からの適切な支援のことを指す。よちよち歩きの幼児がしっかりとした足取りで歩けるように、両親が幼児の体を支えてあげるようなイメージである。

または、幼児が歩く道に障害物があれば、それを取り除いてあげることによって、幼児が歩きやすくしてあげるようなイメージである。これらのイメージからも、スキャフォールディングには、二種類のものがあることを想像することができるだろう。

一つは、直接的なスキャフォールディングと呼ばれるものである。これは、支援者から実践者に対して、手取り足取り支援することを意味する。

実践者があるタスクをこなすことに苦戦していれば、支援者自らがそのタスクの一部を行い、タスクの遂行の仕方を身をもって示すことなどが該当する。よりわかりやすい例で言えば、武術を習いたての実践者に対して、言葉だけではなく、実際に実践者の腕を掴んで技のかけ方を身体を通じて教えることは、直接的なスキャフォールディングの最たる例である。

そして、もう一つのスキャフォールディングの種類は、間接的なスキャフォールディングと呼ばれる。これは、支援者から実践者に対して、手取り足取り支援をするのではなく、何らかのフレームワークや実践のヒントを提供することを指す。

先ほどの幼児の歩行運動の例にあるように、両親は直接的に幼児の身体に触れなくても、間接的に幼児の歩行を助ける支援ができるのだ。幼児が歩く道の上の障害物をさりげなく取り除いてあげることは、「幼児にとって歩きやすい道」という型を提供することを意味している。

その他にも、武術の技のコツを比喩的に言葉で実践者に示すことは、間接的なスキャフォールディングと言えるだろう。さらには、パワーポイントの活用や企画書の構成案を作成することも立派な間接的スキャフォールディングである。

想像していただきたいのは、例えば、二時間何か特定のテーマについて説明をしなければならない時に、パワーポイントなどの資料なしに話を順序立てて行うことはできるだろうか?一般的に、それは至難の技だと思う。

私たちはパワーポイントというツールを活用することによって、二時間にわたって順序立てて説明をする、というタスクをうまく遂行することができるのではないだろうか。つまり、パワーポイントのスライドが、ある種の「フレームワーク」としての機能を果たし、私たちはそうしたフレームワークの恩恵を受けながら、話を順序立てて行うことが可能になるのである。

これはまさに、間接的なスキャフォールディングである。企画書の構成案についても同様のことが言えるだろう。構成案というフレームワークがあるからこそ、そこにコンテンツが埋まっていき、一つの企画が成り立つのである。

日常生活を振り返ってみると、何気ないところに、直接的・間接的なスキャフォールディングが存在していることに気づくだろう。私たちは知らないところで、他者や様々なツールによる支援を受けているのである。

自分を取り巻くスキャフォールディングが何かを列挙することによって、その数の多さに驚かされるとともに、いかに自分が多様な支援の恩恵を受けているかに気づくだろう。

そこに気づくことができれば、スキャフォールディングを自覚的に自分で活用することにつながり、さらには他者の成長支援に対して、様々なスキャフォールディングを提供できると思うのだ。2016/12/8

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