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556. 欧米の一流校の博士課程


先日の「複雑性と人間発達」のクラスで同席した、博士課程に所属しているドイツ人のヤニックとお互いの近況について、先ほど立ち話をしていた。知性発達科学に関する自分の研究をより深く探究したいという想いと、探究の過程で得られた知見を活用した実務の質をより向上させていきたいという想いから、数年以内に博士課程に進学しようと考えている。

これまでは、米国か英国の博士課程に進学しようと思っていたのだが、フローニンゲン大学の発達科学の研究グループは、実に活発かつ質の高い仕事をしているため、フローニンゲン大学の博士課程の進学可能性も浮上している。

そのため、ヤニックにフローニンゲン大学の博士課程について、いろいろと話を聞いていた。日本の大学の博士課程は、基本的に、学生が授業料や生活費などを自己負担する必要があるだろう。それに対して、米国の一流校の博士課程では、授業料や生活費が支給されるところが多い。

ヤニックに話を聞いてみると、オランダやドイツの博士課程でも似たような状況とのことである。特に、フローニンゲン大学を含む、オランダの大学の博士課程では、授業や生活費の支給のみならず、給料までが支給されるそうである。

つまり、オランダの大学で博士課程に進むというのは、その大学に就職することに等しいのだ。私の知る限り、日本では、博士課程の学生に対して、授業料、生活費、そして給料のようなものが支給されることはほとんどないであろうから、その事実に対して、少し驚かれる方もいるかもしれない。

その後に発したヤニックの指摘はとても的を得ているとともに、少しばかり感心させられた。ヤニックが述べたのは、「自分の専門分野に対する貢献のみならず、フローニンゲン大学のために研究をしているのだから、給料が支給されて当然だ」ということであった。

昨年、フローニンゲン大学の心理学科で博士課程のポジションを得られたのは、わずか三人だけとのことである。確かに、ヤニックを含め、博士課程に在籍している者たちは極めて優秀であり、博士課程に進学した時からすでに、意義のある研究論文を執筆できるだけの力を兼ね備えていたのだろう。

そうしたことから、このように世界から非常に優秀な者を選抜し、その者たちに給料を支給するというのは、当然といえば当然だろう、と思わされた。彼らの姿を見ていると、研究者としての力量のみならず、自律心が非常に高いため、大学側の方が、このような者たちを確保できたことに感謝しているのかもしれない。

このような状況は、おそらく欧米の一流校の博士課程に等しく見られることだろう。非常に狭き門をくぐり、博士課程に進学し、そこからさらに激しい競争に揉まれたり、優秀な同僚や教授陣たちと日々切磋琢磨をしていれば、研究者としての力が磨かれていくのは自然のことのように思う。

欧米の一流校の博士課程に在籍している者たちとそのような大学以外の博士課程に在籍している者たちとの間には、探究活動に勤しむ環境に関して、埋めることのできない差が最初から存在しているのだ、と痛感させられた。

どの大学の博士課程に進むのかは、研究者としての自分に大きな影響を及ぼすのだと思う。今のところ、博士課程の候補は、欧米の二、三校に絞っているが、そこに到達するまでにはもう少し時間がかかりそうである。

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