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503. 来学期履修予定のコースと仕事の深まりについて


今学期の最終試験を昨日無事に終え、今日から次の学期が始まるまで後二週間ほどある。来学期は、私がフローニンゲン大学を選んだことを決定付けた「複雑性と人間発達」というコースが開講される。

このコースを担当するのは、私の論文アドバイザーであるサスキア・クネン教授と非線形ダイナミクスの専門家であるラルフ・コックス教授である。このコースの必読文献の一つは、クネン教授が編集した “A dynamic systems approach to adolescnet development (2012)”である。

この書籍は一昨年に購入し、すでに二、三回通読をしてきた。この書籍には、非線形的な発達現象を探究する優れた研究者の論文が収められており、理論モデルの構築の仕方から数式モデルの構築の仕方まで、非常に参考になることが多い。

来学期に受講するこのコースの最終試験の一部として、この書籍が丸ごと試験範囲になっている。そのため、このコースを通じて、本書を何度読み返すかわからないほど、本書を繰り返し読み込んでいくことになると思う。

二週間後の初回のクラスが開始される前に、課題論文を全て一度は事前に読んでおき、講義資料のPPTがPDFとしてすでにダウンロードできるようになっているため、全七回分の講義資料にも事前に目を通しておこうと思う。

このコースの定員は20名であり、比較的小規模であるため、同じ関心を持つ他の受講生との交流にも期待をしている。このコースは本来、より統計色・数学色の濃いい “Research Master(研究に特化した二年間の修士課程)”のプログラムに在籍する学生が履修するものらしい。そのため、今のところ、このクラスを受講するのは、同じプログラムに在籍している天体物理学をかつて先行していたエスターぐらいしか知らない。

このコースで核になるのは「ダイナミックシステム理論」である。私はこの理論に出会うまで、基本的にはピアジェ派や新ピアジェ派の構造的発達心理学を通じて、人間の知性や能力の発達について探究をしてきた。

ダイナミックシステム理論は、無数の概念で構成されているが、その中でも特に重要な数十個の概念を学んだ時、発達現象に対する私の考え方が一変するような体験をしたのを今でも鮮明に覚えている。そのぐらい、ダイナミックシステム理論の考え方はユニークであり、構造的発達心理学には無い観点を私たちに提供してくれる。

ダイナミックシステム理論を学べ学ぶほど、人間の知性や能力の発達が持つ新たな側面が浮き彫りになってくるのだ。今後、「複雑性と人間発達」というコースを受講する中で、ダイナミックシステム理論に関する様々な考え方を書き留めておきたいと思う。

そのような非常に楽しみなコースが来学期には待っているが、それまでの期間に、自分の研究を含め、その他の諸々の仕事を前に進めておこうと思う。今は何よりも、自分の仕事を通じて日々を生きて行くことに一番の充実を感じている。

「仕事をする」というのは、「自分の生を生きる」という意味にまで限りなく近づけることができている。かつての私は、両者の齟齬に苦しめられていたが、自分の仕事を発見し、それを前に進めていくことが、これほどまでに自分の生命力を高めることにつながるとは、思ってもみなかったのである。

人が真に成熟していくというのは、自分の生に限りなく近いところにある仕事を通じてしか成しえないのではないか、とすら思うようになっている。それぐらい、今の自分にとって、「仕事」という意味付けをしている行為の持つ意味は重たい。

日々の仕事と真剣に向き合う中で、少しずつでいいので、仕事も自己の成熟も深めていきたいと思う。季節の深まりと同じように、それらを深めていくこと、季節の変化と同じように、それらを変化の真っ只中に置くことを心がけたい。

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