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117.「発達の網の目構造」:認知構造における個人差について


これまで複数の記事にまたがって、新ピアジェ派が具体的にどういった点において、古典的なピアジェ理論を拡張させたのかを紹介しました。今回の記事は、新ピアジェ派の最後の貢献事項、「認知構造における個人差」について簡単に説明したいと思います。

古典的なピアジェ理論において、文脈が私たちの認知構造に与える影響のみならず、認知構造の個人差についてそれほど注意が払われていませんでした。しかし、私たちは生育環境も異なれば、これまで得てきた教育や経験なども異なり、認知構造内の知識や経験、あるいは構造の機能そのものが個人によって異なります。

実際に、近年の発達理論の研究は、それらの個人差を実証的に明らかにしています。

例えば、カート・フィッシャーは、個人によって発達が進みやすい領域とそうでない領域があることを発見し、個人の特性に応じた多様な発達プロセスを「発達の網の目構造」と名付けました。前回の記事で紹介したように、成人は子供に比べて、最適レベルと機能レベルの差異が大きいということに加え、成人の発達の網の目構造は子供に比べてより複雑なのです。

興味深いことに、発達の網の目構造の各々の網の目は、互いに結びつき合ったり、ある網の目が枝分かれする形で他の発達領域や知識領域に拡張されたりします。

もし仮に、リーダーシップトレーニングを提供する場合を想定してみると、リーダーシップ能力という一つのスキルを考えてみても、そこには多様な知識領域や付随する様々なスキル領域が包摂されています。

さらにそうした知識領域や付随するスキル領域の発達度合いというのは、各人様々です。認知構造におけるそれらの個人差を蔑ろにし、画一的なトレーニングを提供してもほとんど効果は上がらないであろうと想像できます。

現在実証的な研究が進行している最中ですが、教育やトレーニングを施す際に、上記で述べた認知構造における個人差を測定・分析し、各々の発達の網の構造を考慮した教育・トレーニングプログラムを提供することは、発達を支援する上で重要になると思われます・

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