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2688. 明日からの作曲実践について


時刻は夜の八時半を迎えた。昼前の太陽は影を潜め、いつものような沈みゆく西日を見ることができない。

夕食を食べている最中に一匹のハチが食卓の窓のそばにやってきた。窓ガラスの上を行ったり来たりしている様子を見ながら私は夕食を食べていた。

夕食後、しばらくしてから再度食卓の窓ガラスを見ると、まだハチがそこにいた。今度は先ほどとは異なって、全く身動きせずに窓ガラスに張り付いていた。

窓のこちら側から窓ガラスを軽く叩いてみても何の反応もない。「寝ているのだろうか?」と私は思った。

窓ガラスに張り付いているハチをよくよく眺めてみると、どこか愛らしい顔をしている。触角は驚くほど細く、手足もガラス細工のように繊細であった。しばらくハチを観察した後、私は書斎に戻った。

今日は午前中にバッハに範を求めて作曲を行った。時間としては二分程度の曲だと思うが、この曲に範を求めてみると、いつも以上に一曲を作るのに時間がかかった。というのも今日はいつもとは違った形で転調の技術を試していたからである。

普段は八小節のまとまりごとに転調を活用することがよくある。今日は試しにそれよりも短い小節ごとに転調をさせてみることにした。

最初の16小節は一つの短調だけで作り、残りの16小節は四つの異なる短調に変化していくように転調させた。私の頭の中にはまだ各々の調がどこにシャープやフラットを持つのかの知識がしっかりと定着していないため、専門書をスキャフォールディングとして、それを参照しながら転調を適用させていった。

いつも作曲する際には、過去の作曲家の楽譜、専門書、そして作曲ノートの三つをスキャフォールディングとして活用している。作曲ノートに関しては、曲で試したいことや実験する際に必要な情報を予め書き出しておき、それを参照すれば曲が作りやすいような状態を生み出してくれる。

それらを駆使しながら今日も曲を作った。予定では、モーツァルトに範を求めてもう一曲作りたかったが、今日はバッハの曲を参考にしながら転調の技術をあれこれ試すことができたのでよしとする。

ピカソが即興的にその場で一瞬にして絵を描くことができたのと同じように、転調を含めて、作曲の諸々の技術を自由自在に活用できるようになりたい。このリアリティの瞬間瞬間に生じる自分の感覚や感情を自由自在に曲として表現できるようになる日を求めて、明日も作曲実践に励む。

とりわけ転調の技術をより高めていくためには、日々の実践の中で転調を頻繁に活用していく必要があるだろう。その際には短い曲であってもできるだけ転調を活用するようにしたいと思う。

明日に参考にするモーツァルトの曲では早速その考えを実行に移す。今日様々な調を活用してみて思ったが、自分の学習のためにはあえてC Majorの楽譜を最初に準備しておいて、そこからシャープやフラットを付す形で転調させていくことが望ましいように思う。

C Majorの楽譜を用いることもあるが、大抵はそれ以外の調から曲をスタートさせることが多いため、いつもその調を表す楽譜を用いている。その場合、楽譜の冒頭に付されている調号のおかげもあって、実際の楽譜上にシャープやフラットが乱立しないために見栄えがいいのだが、この調号に頼ってばかりいると、格調のどこにシャープやフラットがあるのかを一向に覚えようとしない自分がいることに気づく。

そうしたことからも明日からはあえてC Majorの楽譜を使い、そこから自分の手でシャープやフラットを置きながら転調の技術を適用していきたいと思う。これまでまた明日の作曲実践の楽しみが一つ増えた。

常に新たな課題意識を持ち、常に新たな仮説を持って作曲実践に励むこと。それが作曲技術を向上させてくれる鍵となる。フローニンゲン:2018/6/11(月)20:55 

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