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2448. 【中欧旅行記】 教会の鐘の音と新たな行進曲の始まり


——人間は他の人と考えや感じ方を取り交わし、共感し合うことで真に偉大になる。たった一人だけでの仕事は、たとえそれがどんなに素晴らしいものであっても、それは風で一瞬にして吹き飛ばされてしまうだろう——フランツ・リスト

ブダペストの街に教会の鐘の音が鳴り響く。時刻は夕方の五時半を迎えた。

ハンガリー国立美術館からホテルに戻ってきて、今は自室でくつろいでいる。昨日は、バルトークの曲に範を求めて三曲ほど短い曲を作った。先ほどは二曲ほど作った。

作曲をしていると、心が深く落ち着いていく。同時に、自分の思考が明晰になるような感覚が伴う。

もう私の生活において作曲という行為は不可欠な営みとなった。曲を作っていると魂が安らいでいく。

作曲という行為そのものに内包されている意味と作用について、これから本格的に探究をしていきたいと思う。音を用いた造形行為に含まれる意味と作用について関心が高まる一方だ。

一昨日リスト博物館を訪れた際に、一冊の興味深い書籍を購入した。この書籍は、リストの思想を凝縮して紹介しており、ハンガリー語、ドイツ語、英語、日本語の四カ国語で執筆されている。

リストの思想には大きな共感を抱くものが多く、例えば音楽によって文化と自然の美を顕現させるという発想である。またそれに加えて、リストは万民に向けて音楽を作ろうとしたことにも感銘を受ける。

あらゆる階級の人々に音楽という啓蒙の光を届けることがリストの理想だったのだ。そしてリストは、他者との協働を通じて人は人格を陶冶していくということを見抜いていた。

私たちは他者との交流を通じ、共に働くことによってお互いの成熟を促していくのである。一人だけでなされる仕事の限界を洞察深く見抜いていたリストに大きな共感の念を覚えた。

一人の仕事は他者の仕事と絶えず関連し合っており、自らの仕事は他者の仕事の上に積み重なっていき、他者の仕事は自らの仕事の上に積み重なっていくものである。これは自らの作曲実践や学術研究に等しく当てはまる事柄だ。

私はどれだけ過去の人々の仕事の恩恵を受けているだろうか。先人が積み重ねていった仕事がなければ、今の自分の仕事はない。

これからも先人の仕事に範を求め、そこから多くのものを汲み取り、そして自らの仕事をなしていく。そのようにしてなされる自らの小さな仕事の一つ一つがいつか誰かの仕事の基礎になってくれるだろうか。

人間が文明を築いていくというのは、このような営みのことを指すのだろう。絶えず先人の仕事に範を求め、そこから新たなものを創出していく。

自らの営みは絶えず文明に参与しているという認識を明確に持たなければならない。そうした認識がなければ、この世界に寄与することなどできないだろう。

時刻は夕方の六時を迎えた。近くの教会の鐘の音が再び鳴り響く。

ブダペストの鐘の音。それはまた何かの始まりを告げているかのように聞こえてくる。

新たな行進曲が自分の内側で流れ出したのがはっきりと分かった。またここから歩き始める。どこまでも果てしなく遠いところまで私は歩いていく。ブダペスト:2018/4/20(金)18:00 

No.984:Combustibility

I’m contemplating the distinction between walking in the heaven and so in the hell.

Although the climate of Groningen is cool, the self that lives in such an environment can find inside myself the combustibility of the hell. Groningen, 09:26, Sunday, 5/13/2018

過去の曲の音源の保存先はこちらより(Youtube)

過去の曲の楽譜と音源の保存先はこちらより(MuseScore)

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