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2445. 【中欧旅行記】不可能性に向かって


衝撃的なオルガンコンサートから一夜が明けた。昨夜私は間違いなく、聖イシュトヴァーン大聖堂の中で超越的な意識状態を体験していたと言える。

昨夜のコンサートについては今後様々な観点で文章を書き留めるだろう。今この瞬間に全てを書き留めることができないのは、その体験を私がまだ咀嚼している最中であり、それには時間がかかるからである。

オルガンの音色が持つ深層的な意味と力、そして音楽が持つ深層的な意味と力が分かるようになってくるためには、自己自身を高め、そして深めていくことが何より大切だということを目の当たりにしたかのようであった。

昨夜コンサートを終え、ホテルに戻ってきた後に、「西洋音楽を深く学び、同時にそれを東洋思想の観点から捉え直したい」という思いが高まった。おそらくそれは、コンサート中にオルガンが発する音の大伽藍に包まれた時、「音楽を通じて即身成仏が可能である」と確信を得たことと関係しているだろう。

あのオルガンの大伽藍は間違いなく地獄や悪魔を見せることも可能である。しかし、オルガン音楽の本質的な役割を考えれば、そうした側面よりもむしろ、天国や天使を見せることが可能であることの方が大事なのかもしれない。

音を鳴らすということに関してオルガンは音の極致に辿り着けるのではないかと思わさられるほどだった。人間存在にとって、オルガンが生み出す音の世界の中に参入することは、発達の階梯を凄まじい速度で上がり下がりすることに等しいのではないかと思った。

それはつかの間の体験だが、発達段階をあれほどまでに自由にかつ激しく上下に移動させる推進力には本当に驚かされた。コンサート中の私の意識状態はサトルの意識にあったように思う。

目を閉じてみればそれは一目瞭然であり、音の大伽藍の変幻自在な変化に応じて心象イメージがどんどんと移り変わっていったのだ。知覚された心象イメージは美の極致にあるものであり、私の心と脳にそれは今も刻まれており、今後もそれは私の内側で残り続けるだろう。

改めて、西洋文明の生きた遺産であるクラシック音楽を理解するには、西洋文化を深く理解しなければ不可能だということに気づかされる。同時に、他の文化を深く理解することほど難しいことはないという思いも湧き上がる。

異なる文化圏に住む日本人の私にとって、それはほとんど不可能なことのように思えてくる。少なくとも日本にいながらにして西洋の文化を深く理解することは限りなく不可能であり、欧州に二年間住んだだけでは全く話にならないということも確かだ。

もう一年欧州で生活を営んだとしても、文化理解の進展に関しては今とほとんど変わらないかもしれない。だが、限りなく不可能に近いと分かっていながらも、私はこれから真剣に、昨夜のような音楽世界を創出した西洋の音楽文明について理解を深めていきたいと強く思う。

自分の人生にとって、それはもう避けては通れないことなのだ。私は日本人としてこれまで様々な国を訪れ、いくつかの国で生活をしてきた。

そうした経験を通じて思うのは、日本文化の中だけでしか到達しえない境地のものがあり、同様に米国や欧州の文化の中だけでしか到達しえない境地のものがあるということだ。それらの例をここで挙げる必要など全くないだろう。

今後何百年かかっても、欧米諸国が辿り着けない深みと高みを持ったものが日本にはある。逆に、日本が今後何百年かけても欧米諸国が辿り着いた深みと高みに至ることのできないものが欧米の文化の中に深く存在の根を下ろしていることを理解しなければならない。

こうした理解をしてみると、私は少しばかり気が滅入りそうになった。クラシック音楽というのはまさにヨーロッパ文明が生んだ産物であり、それを日本人の私が果たしてどこまで理解できるのだろうかと考えた時、暗澹たる気持ちになった。

それはあまりにも高すぎる壁であり、壁の天井さえ今は全く見えない。前途多難であることは容易に想像がつく。しかしながら、昨日の音楽体験を忘れることさえなければ、一歩一歩その壁を登っていくことが可能なのではないかという希望を持ちたい。

ブダペストで迎える四日目の朝も快晴だ。優しい朝日がホテルに降り注いでいる。ブダペスト:2018/4/20(金)07:05 

No.981: Dedicated Reflective Study and Practice

I want to engage in dedicated reflective study and practice for music composition.

It doesn’t matter how much time it takes. I already know that it takes time to develop a level of any skills. Groningen, 09:23, Friday, 5/11/2018

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