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2270. 成長の可視化とシミレーションについて


天気というのは本当にダイナミックシステムだと思う。おそらく、数日先ぐらいの近未来の天気の予測は可能だと思うのだが、それより先の将来になるとその予測は難しい。

これは人間の成長に関するシミレーションにおいても当てはまるとつくづく思う。昨年はとりわけ、複雑性科学の一領域であるダイナミックシステム理論の観点から人間発達についての探究を進めていた。

今もこの分野への関心は強く、実際、現在取り掛かっているMOOCに関する研究に対して複雑性科学の研究手法を活用している。天気の予測や人間の成長の予測が難しいのは、ひとえに天気も人間もダイナミックシステムであるからだろう。

それらを構成する要素の相互作用や、システムを取り巻く要因との相互作用は発達プロセスに思わぬ形——そして思わぬ度合い——の影響を与える。複雑性科学の中で最も有名なのは初期値問題だと思うが、初期値がわずかばかり異なるだけで、その後のシステムの挙動は大きく変わる。

天気や人間の変化のプロセスをシミレーションするのが難しいのは、こうした初期値問題と密接に関わっているだろう。人間の成長プロセスの可視化、およびそのシミレーションは昨年から特に力を入れて取り組んでいるテーマである。

特に、フローニンゲン大学のポール・ヴァン・ギアート教授と昨年の私の研究アドバイザーであるサスキア・クネン教授は、成長のシミレーションに関して非常に大きな貢献を果たしている人物である。

彼らから学んだ理論や方法を使えば、確かに成長のシミレーションは可能なのだが、それでも常に上記の問題が付きまとうことは確かだ。そのため、現段階において成長プロセスのシミレーションを行う際に注意しなければならないのは、たった一度のシミレーションをもってして、長期的な成長を予測してはならないということだろう。

そうではなく、天気を数日単位で予測していくかのように、小まめにデータポイントを取得して、シミレーションの予測精度を高めていくことが必要になる。データポイントを随時取得していく形でシミレーションを繰り返していければ、その精度は向上していくだろう。

その際に重要なのは、やはりデータポイントを取得するためのアセスメントやツールの開発であろう。既存のアセスメントやツールをいくつか調べてみると、興味深いものがあることは確かである。

それらを活用して十分なデータポイントを取得するというアプローチと、もし仮に特定の領域に関する成長を予測する必要があるのであれば、それにふさわしいアセスメントを開発するというアプローチがある。

まだプロジェクトとして正式に立ち上がってはいないが、現在アセスメントの開発を含め、成長の可視化と予測に関する協働の話を何件か頂いている。このテーマは私も非常に関心があり、学術的な研究に留まるのではなく、実務の世界での適用を行いたいと考えていたため、プロジェクトの話が進んでくれることを願う。

昨年に複雑性科学の領域に身を置き、今年は実証的教育学の領域に身を置いてみると、成長の可視化とシミレーションに関して、既存の発達心理学の測定手法に囚われる必要はないのではないかという考えが強くなっている。

特に、構造的発達心理学の測定手法は時間と手間がかかりすぎるため、企業社会からのアセスメントの要請に直ちに答えていくのは難しいことが多い。もちろん、そうした要請に応える形でアセスメントを開発することは可能であるし、それもまた現在話に上がっている協働プロジェクトの一つである。

一方で、個人や組織の構造的な成長を可視化する際に、例えば複雑性科学の手法を用いれば、構造的発達心理学の枠組みで取得したデータのみならず、より簡便的に取得した時系列データの構造特性を明らかにすることができる。

これも構造的な発達の可視化に他ならないというのが、複雑性科学と発達科学を架橋した近年の研究者たちの見解であり、私もそのように考え始めている。来季から、アセスメントの開発と成長の可視化とシミレーションに関するプロジェクトに従事することができれば幸いだ。

この日記を書き始めた時は全く別のテーマについて書こうと思っていたのだが、冒頭の天気の話から派生した話題について書き続けている自分がいたことに気づく。そう、天気はダイナミックシステムであり、明後日からはまた最高気温が0度になる。

そして早朝の天気予報とは異なり、明日は雪ではなく、なんとか曇りの中で一日を過ごせそうだ。明日の最低気温はマイナス6度であり、インターン先のオフィスに行く時は随分と寒いだろうと思われる。

来季からの期待を胸にまた明日を過ごしたいと思う。フローニンゲン:2018/3/15(木)15:35   

No.870: Two Directions of Creativity

In the morning, I was reading Wilber’s latest book.

I found two interesting and different directions of creativity.

One is an involutionary direction to create something out of nothing. The other one is an evolutionary direction to create something out of everything.

I hope that my daily practice involves both directions of creativity for this reality. Groningen, 10:48, Monday, 3/19/2018

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