1245. 部分と全体の入れ子構造としての「レベル」


早朝の天気とは打って変わり、午後から快晴が広がり始めた。昼食を摂り終えた私は、論文を一本読み、いつもと同じように20分の仮眠を取った。

昨日と同様に、それは深い休息をもたらすような仮眠であった。そのわずかな時間において、私は夢を見ない深い眠りの世界に沈んでいき、そこで限りない休息を経験していた。

こうした仮眠をもたらしたのは、ここ最近の私の探究生活から見れば必然かもしれない。深い休息を取ろうとする意識が自然と現れ、それがこうした休息をもたらしてくれたのだろう。

深い休息を伴う仮眠の後、多くの場合、時間感覚が消失し、仮眠から目覚めた直後は、まだその日であることに驚くことがよくある。同時に、夢を見ない深い眠りの意識の中で消失していた小さな自己が、再び活動を始める際の、あの何とも言えない自己消失と自己連続の感覚は、未だに不思議な感覚として知覚される。今日もそのような体験をした。

仮眠から目覚めると、見事に晴れ渡った空に気づき、私は嬉しくなった。私の気分も自然と晴れ渡り、午前中の続きとして、論文をいくつか読み進めていた。

早朝にスピノザの論文集を読み終えた私は、デイヴィッド・ウィザリントンの論文を読み始めた。ウィザリントンは、発達科学と複雑性科学を架橋するメタ理論の研究に従事している研究者であり、彼の論文はいつも示唆に富む。

午前中から夕方にかけて、彼の論文を五本ほど読み、中でも “Embodiment and Agency: Toward a Holistic Synthesis for Developmental Science (2013)”は大変洞察に溢れていた。

この論文では、発達現象を説明する複数の思想的立場を取り上げ、それらがどのような還元主義に陥っているのかを指摘し、それらの限界を乗り越える思想的立場をいくつか紹介し、それらの思想立場についてもメタ的な比較検討を加えている。

正直なところ、発達現象を捉える前提となる思想的立場について基礎的な知識がなければ、この論文を読むことはできない。「有機体的発達思想」「機械論的発達思想」「文脈主義的発達思想」などの思想立場を理解し、さらには、ダイナミックシステム理論を適用したエスター・セレンやリンダ・スミスの思想的立場を理解していることが、この論文を読む出発点となる。

午前中から夕方にかけて読んでいた四本の論文とは異なり、この論文を読み進めるのは想像以上に時間がかかった。今後、発達科学と複雑性科学を架橋するメタ理論的な論文を執筆する際に、この論文は必ず引用文献の一つになるだろう。

この論文を読みながらふと考えていたのは、複数の発達思想を比較検討するような極度に抽象的なテーマではなく、第二弾の書籍『成人発達理論による能力の成長』でも取り上げた、「レベル」という概念についてであった。

この概念は、カート・フィッシャー以前の新ピアジェ派やピアジェ派においては、「発達段階」という概念で捉えられている。先日、日本人の知人の方から連絡を受けたが、どうも日本の教育研究者や実践者の中には、ピアジェが最も初期に提唱した発達段階モデルしか触れていないためなのか、レベル(あるいは「発達段階」)という概念を毛嫌いする傾向にあるようだ。

この点については、以前の日記にも紹介したように思うが、その時に言及していなかったこととして、発達科学で言う「レベル」という概念は、質的差異のことを示し、それは部分と全体の入れ子構造のことを指す。

仮に、レベルという概念を真っ向から否定するのであれば、こうした入れ子構造の存在そのものがないものとして扱われてしまう。こうした部分と全体の関係性は、米国の思想家ケン・ウィルバーが指摘しているように、私たちのリアリティを構成する最も重要なものである。

実際に、部分と全体の関係性は至る所で見られ、原子と分子の関係性というのはまさに最たる例であり、それと同様の関係性が、人間の器や能力の成長においても見られるのだ。拙書の中で紹介した、富士山の例を用いると、地上から山頂までを一つの大きな全体と捉えた際に、山頂に至るまでの一つ一つの山の地点は部分となる。

そして、五合目は全体の山から見た場合の部分に過ぎないが、五合目は一合目からその地点までの一つの全体として存在している。仮にレベルという概念を認めないのであれば、成長や学習において、私たちは山のどこを歩いているのかを見失ってしまうだろう。

また、山のどこかの地点でつまづいた際、その人物がどの地点にいるのかを見極めることをしなければ、救助も支援も成り立たないだろう。レベルの存在を認めるというのは、部分と全体の入れ子構造を認識することであり、そうした認識があって初めて、正しい支援策や介入方法が成立すると思うのだ。2017/7/1

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