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981. 研究論文の終焉に向けて


昨日は、久しぶりに現在取り掛かっている研究とは直接関係しない書籍を読むことができた。研究で手一杯になる前に読み進めていた “Principles of Systems Science (2015)”の11章を昨日読むことができた。

本書は800ページ近くに及ぶ大著だが、残すところ後三章ほどとなった。また、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの “Difference and Repetition (1968)”を再び最初から読み始め、最初の章を読み終えることができた。

二つの書籍から得るものは非常に多く、昨日の日記に書き留めていたことの多くは、二つの書籍に刺激されて湧き上がった考えをもとに執筆されたものだったと思う。今日も時間を作り、二つの書籍を読み進めていきたい。 昨日は午前中に、論文アドバイザーのサスキア・クネン先生とのミーティングがあった。先生とのミーティングも残すところ、後二回ほどになった。

研究論文の方も完成間近であり、昨日のミーティングでは、 研究論文の“Results”のセクションを主に取り上げ、最後に “Discussion”のセクションについて意見交換をした。以前紹介したように、結局、今回の研究では「状態空間グリッド(SSG)」という一つの手法だけを活用することにした。

「交差再帰定量化解析(CRQA)」や「トレンド除去変動解析(DFA)」などの非線形ダイナミクスの手法は、次回以降の研究に持ち越すことにした。この変更を受けて、SSGを教師と学習者の発話行動のみに適用するのではなく、発話構造にも適用する方向に舵を切った。

実はクネン先生に論文のドラフトを提出する三日前まで、CRQAとDFAの適用を念頭に置いて文章を書いていたのだが、急遽そちらのアイデアから離れ、カート・フィッシャーのダイナミックスキル理論によって定量化した発話レベルにSSGを適用することにしたのだ。

私がCRQAやDFAを適用することに苦戦しながらも、なんとかそれらを活用したいと思っていることをクネン先生も知っていたのだが、やはり論文の構成と今回の研究がもたらす意義を考えると、SSGのみを活用することが望ましいと判断したことを説明すると、先生も非常に納得しているようだった。

それよりもむしろ、先生は最初からSSG一本に絞ったほうが実りのある研究につながることを知っており、あえてそれを私に言わなかったような節がある。あえてその点を明示的に述べず、暗黙的にほのめかすことによって、それらの手法に関する探究の余地を私に与えてくれたように思う。

専門書を除き、論文だけを考えてみても、二つの手法についてそれぞれ20本ぐらいの論文を読み込んでいた。それでもそれらの手法の持つ意味と活用方法について完全に消化できたわけではなかった。

結局、そうした未消化状態のままでは、それらの手法を研究にうまく活用できるはずもなく、今回はそれらの手法を活用しないことが賢明だと思ったのだ。今回の研究をここまでのところで振り返ってみると、紆余曲折が非常にあった。

研究というものも、人間の発達と同様に、非線形かつダイナミックに進んで行くものなのだと再認識させられる。今回の方向転換は、研究上における最後の発達的飛躍であり、ここからは発達プロセスの終焉に向けて論文を書き進めていきたい。

明日から論文の手直しを再開し、特に “Discussion”の記述をより分厚いものにしていく予定である。この最後のパートは、今回の研究の発見事項を深く内省する優れた機会であるということを、クネン先生から昨日教えられたような気がする。

そのため、明日は研究の発見事項をじっくりと内省する時間を設けたい。2017/4/25

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