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703. 書物との出会いを大切にすること


昨日は、「複雑性と人間発達」の最終試験に向けて複数の文献を読み込んでいた。文献というのは繰り返し読めば読むほど、理解が深まり、知識の体系が徐々に分厚くなっていくということを改めて実感した。

最終試験への準備がひと段落したところで、今回のコースの内容をさらに深掘りしていくために、コースで取り扱ったもの以外で優れた論文や専門書籍はないか検索していた。当然ながら、そうした文献は探せば探すほど、山ほど出てくるわけであり、昨日も思わぬ掘り出し物を探し当てることができた。

論文に関しては、フローニンゲン大学のオンラインジャーナルを活用して何本かダウンロードし、専門書に関しては合計四冊ほどを、イギリスとドイツのアマゾンに注文することにした。以前紹介したように、私は重要な論文や書籍は必ず紙媒体で所有するようにしている。

PDFの形式では、五感から情報を取り入れる密度がどうしても希薄になり、知識体系の確固とした土台を作ることに不適切だと思っている。そして、昨夜、つくづく重要な論文や書籍は手元に持っておくことが大事だと実感することがあった。

「複雑性と人間発達」のコースは、複雑性科学の領域に属するダイナミックシステムアプローチや応用数学の非線形ダイナミクスを正面から取り扱うものである。このコースの最中、課題図書以外に私がいつも参考にしていたのは、 “Nonlinear dynamical systems analysis for the behavioral sciences using read data (2011)”という専門書であった。

この専門書には、クラスで取り上げた数式の背景や数学的な概念の理論的な説明、さらには、クラスで学習した数々の研究手法のより詳しい説明が記載されている。クラスの進行に合わせて、私は何度この専門書のページをめくっただろうか。

それぐらい、この専門書は、非線形ダイナミクスの解析手法の説明が充実していると言える。そこでふと、そもそもこの専門書は今回のコースの課題図書や参考図書ではないのに、どうして今私の手元にあるのかを考えていた。

すると、そういえばこの専門書は、私が昨年日本にいた時に米国から取り寄せたものであることを思い出したのだ。おそらく、東京で生活をし始めてすぐに購入したものだと思うのだが、当時はこの専門書を開くことなどほとんどなかったように思う。

だが、当時の私は、それでもこの専門書は今後の自分の研究や実務に重要であるに違いないという確信があったのだ。それゆえに、この書籍を購入していたのだと思う。

購入から一年経ち、当時の直感が正しかったことを示すかのように、現在の私は、この専門書にはとてもお世話になっている。やはり、自分が少しでも参考になると思う専門書は購入し、手元に所持しておくことが大事だということを改めて実感した。

いついかなる時にその書籍が必要となるかわからないが、必要となる時に書籍の形としてそれが本棚に眠っている姿を見ると、安堵した気持ちになったことがある人も多いのではないだろうか。私は自分の本棚を眺める時はいつも、そのような不思議な安堵感を覚えるのである。

書物との出会いを大切にするというのは、実物の書物を本棚に置き、その書物を必要とする時に、感謝の気持ちを持ちながらその書物のページを開くことなのではないかと思う。2017/1/31

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