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511. オランダの大学院の成績評価について


今朝起床すると、同じプログラムに所属のエスターからテキストメッセージが届いていた。なにやら、先日実施された「タレントディベロップメントと創造性の発達」のコースの最終試験の結果が出たとのことである。

エスターは親切にも、メッセージの中に彼女のスコアを記載していた。天体物理学を専攻していたためか、数学的香りのする非常に鋭い知性を持つエスターは、学部時代からフローニンゲン大学で学んでおり、コンピューター試験の形式にも慣れていると述べていた。

彼女のスコアを見ると、そのような特徴を持つエスターでさえも、そのぐらいのスコアした獲得できないのか、という思いが湧き上がり、自分のスコアを確認することを若干躊躇した。躊躇しながらも、各生徒が持つポータルサイトを通じて成績を確認すると、エスターよりも高得点を獲得していたことが判明した。

その事実が判明した時、今度は、どのようにエスターの気分を害さないように自分のスコアを伝えるかを考えた。皮肉にも、「タレントディベロップメントと創造性の発達」というコースで習得した考え方を用いると、自分が「規範的アプローチ」と「基準的アプローチ」の間で感情が少し揺さぶられていることに気づいた。

規範的アプローチとは、他者と自分の能力を比較する形で、自分の能力を評価するというものである。一方、基準的アプローチとは、客観的な測定手法に基づいて、自分の能力を評価するものである。エスターのスコアを聞いた時と自分のスコアを確認した時に、間違いなく、規範的アプローチの評価軸が自分の感情世界の中に入り込んでいた。

一方で、基準的アプローチを用いて、1-10の尺度で表されるスコアの中で、当初自分なりに目標地点を設定していたため、その目標との若干のズレに対しても、自分の感情が少し揺れ動かされていたのだ。日本の大学院の成績評価の仕方とその基準については詳しくわからないのだが、米国の大学院で私が学んでいた時、高いGPAを獲得することはそれほど難しいことではないと感じていた。

一方、欧州の大学院に留学する前に、欧州の大学院は成績評価が厳しいという噂を耳にしていた。特に、フローニンゲン大学に入学する前に目を通していた大学院便覧の中に、「1-10の成績評価で8以上を取ることは極めて難しい」という記述を目にしていた。

実際に、今回初めてオランダの大学院で試験を受けてみて、成績評価が確かに厳しいことがわかった。実は、フローニンゲン大学に入学する前から、基準的アプローチを採用して、”summa cum laude(最優等)”でプログラムを修了しようと思っていたのだが、その基準があまりに高く、 “cum laude(優等)”で卒業できるかどうかも見通しが不明瞭だ。

エスターから話を聞くと、不合格ではなくても、成績評価を上げるために追試を受けることができるそうだ。しかし、再び試験の準備をする必要性や、長時間にわたってコンピューター上で再度問題を解く労力、そして、追試を受けることによって今のスコアを上回ることが確実かどうかもわからないため、あまり乗り気はしない。

フローニンゲン大学での一年目のプログラムは、まだ四分の一を終えたばかりなので、残り三つのブロックで巻き返しを図りたいと思う。先日の試験を受け終わった後、短時間で大量の文章を書かせるという瞬発系の試験を好む年齢ではない、と頭の中で独り言を呟きながら会場を後にしていた。

しかしながら、自分の今後のアカデミックのキャリアを考えた時、今回のように、summa cum laudeやcum laudeを獲得するゲームに参入しようと思っていた自分がいることは確かであり、このようなゲームに参入しようとするだけの若さがまだ自分の中にあるのだと思う。

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