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498. ノイズと変動性


早朝の六時前に起床し、仕事を開始してしばらくすると、いつもより日が昇るのが早いように感じられた。時計を確認してみると、なんといつもより一時間早い七時であった。日が昇る時間が、これほどまでにずれることは起こり得るのだろうか?

もしかすると、ここ最近は、毎朝太陽の光を遮断する雲が空全体を覆っていたのかもしれない、と思ったが、今朝も相当な量の雲が空を覆っているため、その可能性はなさそうだと考えた。この時間から辺りが明るくなるのは久しぶりであるため、いつもとは違った雰囲気の中で仕事を進めていけそうである。

午前中に真っ先に取り組む必要があるのは、いよいよ明後日に控えた最終試験へ向けての準備である。必読論文と書籍の内容を元に、重要な論点に関して、自分なりにワードにまとめるという作業があと少し残っている。この作業を完了させ、ワードを見ながら自分の手でノートに書き出すという作業も行なっていこうと思う。

実際の試験は、コンピューター上で行われるのだが、自分の手を動かして書き出すという作業は、記憶の定着や理解をより促進させてくれると思う。古典的な学習方法に思えるが、声に出しながら自分の手で書き出すという作業は、知識の体系を自分の内側に構築するための優れた方法だと思う。

その作業が完了したら、来週の月曜日に控えているクネン先生とのミーティングに備えて、自分の研究を少し前に進めておこうと思う。具体的には、定性的な研究データから概念カテゴリーを創出していくことと、カート・フィッシャーの段階モデルを活用して、定性データを定量データに変換していく可能性について模索することである。

定性データに対して、概念を当てながら分類していくという「コード化」の作業と、フィッシャーの段階モデルを用いて、データの定量化ができれば、研究上の大きな山場を越えたことになるだろう。もちろん、そこからダイナミックシステムアプローチを適用し、数式モデルを構築してシミレーションをするということも大事な点になるが。

先ほど、「ノイズ」と「変動性」に関する論文を改めて読んでいた。これまでは、「ノイズ」と「変動性」を同じものとして認識していたが、厳密には若干の違いがあることに気づいた。ノイズというのは、学習や実践において不可避に発生するものであり、変動性とは、学習や実践の中における意図的な変化である、という違いがあることがわかった。

つまり、ノイズというのは、私たちが何かを学ぶ時や実践をするときに、意図的ではなく混入してしまう変化のことを指すのだ。例えば、外国語を音読しているときに、気づかないうちに自分で読む速度を変えていたり、あるいは、サッカーをしているときに、外の風によってパスの出し方を無意識的に調節するときに、それらの無意識的な変化をノイズと呼ぶ。

一方、変動性は、学習や実践の中に意図的な変化を織り込むことを指す。例えば、これまでは米国英語を学ぶために、アメリカ人に話しかけていたところを、自分の英語力の幅を広げるために、イギリス人やインド人の英語に触れようとすることは、自ら意図的に生み出した変化だろう。また、持久力をつけるために、これまでは一定のペースでランニングを行っていたところを、インターバールを設けたトレーニングを意図的に導入することは、変動性を組み入れたトレーニングと言えろうだろう。

このような変動性を盛り込んだトレーニングは、私たちの知性や能力が単調な挙動を見せるのではなく、環境の動的な変化に耐えず適応していくという点を強調する。さらに、こうしたトレーニングは、私たちが環境に適応しながら自己を絶えず創出していく「自己組織化」の特性とも関係していると思う。

実証研究が示しているように、変動性を織り込んだトレーニングは、単調な繰り返しを伴う伝統的なトレーニングに比べて、能力レベルを向上させることにつながるのだ。2016/10/30

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