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224. フローニンゲン大学での修錬:二年目のプログラムに関する概略


早朝の日課として、目覚めた直後に身体をその日の探究・実践活動に最適なものにするために、20分間ほど簡単な身体運動(合気道を習っていた頃に教わった準備運動と自分が長らく実践をしているヨガを合わせたような運動)を行っている。

その身体運動に並行して、精神分析学あるいは深層心理学の用語で「ドリームリコール」と呼ばれる夢の振り帰り実践を長らく継続している。覚醒時に湧き上がる雑多な思念を記録し、そこから探求を進めるだけではなく、夢の中で現れる思念的ではないシンボルやイメージも探求材料の一つにしたいという思いを、いつからか持つようになった。

覚醒時に絶え間無く流れる思念的情報と睡眠時に湧き上がる非思念的情報の双方を、できるだけ逃さず掴んで行こうと真剣に思ったのはごく最近のことかもしれない。

昨夜の夢は、フローニンゲンの小高い丘に登るというものであった(フローニンゲンという町は実際には平地であり、丘など存在しないと認識している)。

晴れ渡る空の下、丘の頂点を目指す道すがら、突如として不気味な雲が立ち込めてきたのだ。それは真っ黒な雲であり、それが丘の中腹から頂上にかけて覆いかぶさっている。前方に行く人がその雲の中に入っていくと、その人は外から全く見えなくなってしまった。

私はその真っ黒な雲に向かって走っていき、そこへ突き進んでいくことが当然かのごとくその中に躊躇なく入っていった。そこで気づいたのは、その雲の中に入った人を外から見ることはできないのと同時に、中にいる人は外の様子が一切見えないということだった。

そのような性質を持つ雲の中にいる私は、いたって冷静であった。より正確には、不安なく冷静な感情というよりも、内からも外からも何も見えない真っ黒な雲の中を駆け抜けるこの出来事は、自分の人生の中で予め定められていた経験すべき事柄だ、という達観に似た気持ちがあった。

いつの間にか私は丘の頂上まで登り、真っ黒な雲が依然として覆いかぶさっている丘を駆け下りていった。丘の中腹まで降りてくると、先ほどの不気味な雲が嘘のように消え去っていた。雲が消え去った後に出現した空は、雲が現れる前の空と何が違うのか正直あまり分からず、その空を一瞥した後は、淡々と走り続けるべく、自分の足を再び走るモードに変えようとした。そこで目が覚めた。

昨夜の夢に出てきたフローニンゲンでの生活の二年目は、フローニンゲン大学の教育科学修士(理系)のカテゴリーにある「実証的教育学(Evidence-based Education)」のプログラムに進もうと考えている。これまでは発達心理学の枠組みを通じて、人間の成長・発達に関する研究や支援を行ってきたが、その枠組みだけでは先に進めないところまで探究が及んできたと実感している。

このあたりで一度、教育心理学や学習理論などを踏まえた教育学を体系的に学んでおく必要があると強く感じている。また、イマニュエル・カントの晩年の著書 “On Education (1803)”に多大な影響を受けたことも重要な要因である。

当時において、教授法(pedagogy)は体系立った学問領域として確立されていないという問題点をカントは指摘し、「教育の科学」を打ち立てる必要性を提唱した点に私は強く共感している。また、本書の中で最もカントに共感するのは、「教育を通じて、人間は一生涯継続的に成長・発達しうる」という主張である。

何よりもカントは、各人固有の内在的な才能を発掘し、それを発達させていくことを教育の主要な目的とし、人間は教育を通じてその才能を善の方向に発達させていかなければならない、と明確に述べている。この主張はまさに、自分の譲れぬ教育思想の通奏低音として流れているものである。

それでは、どうして実証的な教育研究や実践が必要になるのだろうか?私が思うに、善意にせよ悪意にせよ、無知に根ざされた実践が広く教育の世界で行なわれているように思うのだ。つまり、子供の教育にせよ、成人の教育にせよ、実証的な研究成果から見れば害悪でしかない実践が広く行なわれている可能性があるのではと考えている。

例えば、薬学の世界においては、薬Aは病気を治癒する効果があるが、薬Bは病気を悪化させる効果がある、ということが実証研究から明らかにされ、その実証結果が薬品の開発と普及に寄与するだろう。しかし、教育の世界においてはどうだろうか?

企業の人財育成にせよ、教育実践にせよ、支援者は、自分がどのような効果をもたらす薬を投与しているのかもわからない状況にいるのではないだろうか。そこでは往々にして、知性や能力の成長・発達を阻害してしまうような実践——成分や効果などの不明確な薬の投与——が行われがちである。

それゆえに、実証的な研究を行うこととその研究成果に基づいた実践を行うことは、人間の成長・発達を支援するために大きな貢献を果たすと思うのだ。そのような思いから、フローニンゲンでの二年目は、実証的教育学に関するプログラムに進みたいと思う。

「実証的教育学」のプログラムの目的は、教育の効果をどのように実証的に研究し、教育実践の質を高めるためにどのように実証結果を活用したらいいのかを探究していくことにある。企業組織や学校教育における成長・発達支援に関して、それを実証的に研究することのみならず、それ以上に、研究成果をどのように実践に反映させていくかに課題が山積みになっているという印象を持っている。

そのため、このプログラムを通じて、科学的に信頼性のある実証的研究をどのように進めていくかのみならず、得られた研究成果を人財育成や教育実践にどのようにつなげていくのか、という実務的な側面にも強く焦点を当てていきたいと思う。

このプログラムを進めていく中で、得られた知見を企業組織向けの人財開発プログラムや自身のオンラインラーニングに盛り込んでいきたいと思う。特に、実証的な研究成果に基づくプログラム設計や評価システムの開発、教育心理学や学習理論を組み込んだトレーニング設計を積極的に行なっていきたいと考えている。

このプログラムも「タレントディペロップメントと創造性」のプログラム(記事190)と同様に60単位の履修を卒業要件としているが、こちらは30単位ではなく、20単位が修士論文で占められ、残りの40単位は下記の8つのクラスを履修することに割り当てようと考えている。

1. 定量的教育評価手法

2. 実証的教育学の理論と実践手法

3. 学習理論と教授法

4. 教育科学に関する体系的文献調査手法

5. 発展的教育評価手法

6. 実証的教育学に根ざしたインターンシップ

7. デジタルラーニングとプログラム設計

8. グループ学習の理論と実践

上記8つのクラスに関する詳細は、また別の記事で紹介したいと思う。

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