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3622. 現代社会の狂気と熱狂:成人発達理論やインテグラル理論に対する人々の態度より


今日も作曲実践、そしてウィルバーの書籍の監訳の仕事に従事しながら、過去の日記を編集していた。その中で、スウェーデンの哲学者、ニック・ボストロムの言葉に考えさせられるものがあった。

ボストロムは、近年巷でよく耳にするようになったAIに関して、人々が手放しにAIを褒め称える——実際には、人間の仕事が奪われるかもしれないなどの危機感を煽る論調もあるが——傾向を批判して、それを “good story bias”と呼んでいる。

これは認知バイアスの一種だが、それを単なる認知上のバイアスだと括って終わりにしてはならないように思う。なぜなら、現代人は、形を変えて、これに類する実に様々なバイアスを抱えているように思うからだ。

それはAIのような事物のみならず、例えば、近年注目を集めている成人発達理論や、現在監訳中の書籍の著者ケン・ウィルバーが提唱したインテグラル理論など、何か目新しい理論に対しても当てはまる事柄だろう。

成人発達理論にせよ、インテグラル理論にせよ、確かにその理論体系は堅牢であり、それらが人間の発達現象を深く扱っているという性質上、多くの人にとって魅力的な理論に映るのは理解ができる。しかし、彼らは、それらの理論をあまりにも無防備に、そして手放しに称賛する傾向があるように思えて仕方ない。

数日前の日記にも書き留めていたが、そうした人々は、諸々の事物に対して覚めた目を持てていないように思う。あまりにも諸々の事物と一体化しており、適度な距離が保てていないのだ。

成人発達理論やインテグラル理論に関しても同様で、どこか藁にもすがるような思いでそれらの理論に救済を求めたり、あまりにも熱烈にそれらの理論を信奉しようとすることは、実はそれらの理論が真に言わんとしていることとは真逆のことであることに気づく必要があるように思う。

もう少し醒めた目を持ち、ある意味くつろいだ形で諸々の事物に接することが重要なのではないだろうか。相も変わらず現代社会は、狂気と熱狂に取り憑かれている。

現在監訳中の書籍に再び言及すると、今回翻訳を担当してくださった知人の方の翻訳は実に素晴らしく、今回八年越しに協働することができてとても嬉しく思う。私の知人であるインテグラル・ジャパンの鈴木規夫さんも私も翻訳者ではないため、その方が翻訳を通じて行う貢献は多大なものがあるように思う。

ケン・ウィルバーの書籍の翻訳に関しては、過去に松永太郎氏など、実に素晴らしい翻訳家の方がいらっしゃったが、現在においては、私の知人であるその翻訳家の方が、ウィルバーの書籍を翻訳する最も優れた翻訳者であるように思う。明日もその方が翻訳した原稿を読むことが楽しみである。

明日は第五章の翻訳をレビューし、明々後日には全てのレビューが完成する。その後、監訳者として「はじめに」と巻末の解説を執筆しようと思う。フローニンゲン:2019/1/2(水)20:26

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