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2689. 宇宙空間に飛び出す夢


今朝は六時過ぎに起床した。時刻は七時を迎えようとしている。

小鳥のさえずりが開けた窓から聞こえて来る。空一面が薄い雲に覆われていて、朝日は一切見えない。冷たい風がサラサラと流れている。

今朝方は強烈な印象をもたらす夢を見た。夢の中で体験した感覚が今もまだ自分の内側に残っている。

冷や汗が出るような体験であり、同時に超越的な感覚をもたらす体験であった。目覚めてみると、こんなに低い気温であるにもかかわらず、私は大量の寝汗をかいていたことに気づいた。

目覚めと共にシャワールームに向かい、シャワーを浴びた。シャワーを浴びながらも今朝方の夢についてずっと考えていた。

夢の中で私は、ある宇宙ステーションの建物の中にいた。この宇宙ステーションは地球にあり、米国のどこかの州にあった。

私はその建物の中のセミナールームのような場所にいた。なにやらこれから宇宙に関する講演がここでなされるらしい。会場は広々としており、随分と多くの人を収容することができる。

会場に並べられていたのは平凡なパイプ椅子であったが、それが綺麗に並べられていた。私は一つの椅子に腰掛けた。

程なくして講演が始まると、講演者がいきなり私に質問をしてきた。私はその問いに戸惑うことなく、むしろその問いを楽しむかのように、自分が知っている範囲で、そしてこれまで自分が考えてきた範囲で回答をした。

すると、講演者を含めて、会場全体の人たちが私の回答に驚いているようであり、感嘆の声が至る所で生まれた。私はその声に悪い気持ちは一切しなかった。むしろ、そうした称賛の声をもらえたことを嬉しく思った。

私が回答をしたところで、講演者が今度のアクティビティとして、その場にいる全員で一つのお題に回答するというゲームのようなものを提案した。そのお題をよく理解しないまま、私はそのゲームに参加した。

間違いなく宇宙に関するお題であるはずなのだが、ゲームに参加し始めてからもそのテーマが掴めなかった。ゲームが始まりだすと、徐々に全員が一つの輪になっていった。

私の右隣には、小中高を共に過ごした小柄な友人がいた。私はその友人と話しながらこのゲームに参加していた。

気づいているみると、会場にいる全員が一つの輪を作り出しており、その様子は圧巻であった。全員が椅子に腰掛けながら移動をし、会場が巨大な輪を作り出す最後の最後になって、右隣の友人と私だけが輪の外側にいることに気づいた。

そこですぐさま輪の中に入っていくために、輪の切れ目を見つけようとした。椅子に腰掛けている人たちの背中を見ながら、どこか切れ目がないかを探していると、一つ切れ目を見つけた。

その切れ目に入れてもらおうとして目の前に座っている男性に背中越しに声をかけた。するとその男性は、日本を代表するバンドのヴォーカルであった。まさかこのような場所で実際の人物に会えるとは思っていなかったため、私はひどく驚いた。

しかもこのバンドの曲は昔から聴いているものであり、今でも時折聴いている。そうしたことからも、この歌手に会えたことはとても嬉しいことであった。

私はその歌手に挨拶をすると、彼はとても気さくに挨拶を返してくれた。とても腰の低い対応をしてくれたことは私をさらに感動させた。

会場全体を見ると、先ほどまでは全員が輪になって椅子に腰掛けていたのだが、今は全員が椅子の後ろに立っている。その歌手の方が私に冗談めかした提案をしてくれた。

その歌手:「僕は椅子の後ろに立つから、君はこの椅子に腰掛けるといいよ」

:「いいんですか?でも自分がこの椅子に腰掛けるのは恐縮なのですが・・・」

そのように私が述べると、その歌手は笑顔を見せながら手招きをして私を椅子に座らせた。このバンドとその歌手の方の人気を考えると、自分がその方の椅子に腰掛けるというのはとても気が引けることであった。

さらには会場全体の人が椅子の後ろに立っているのであるから、なおさらそれは目立つ行為であった。しかし、私はこんな機会は滅多にないであろうという思いから、思い切って椅子に腰掛けた。

すると案の定、会場中の視線が私に向かってきた。私はそれに狼狽することなく、むしろ注目を浴びていることが心地よく感じた。

すると突然その歌手の方が後ろから、「それでは今から出発します」と述べた。その瞬間に、椅子が巨大なブランコのような乗り物になった。

しかも、先ほどまでは天井があったセミナールームの天井がなくなっており、そこには紺碧の青空があった。その青色はとても濃く深い。全ての存在を飲み込んでしまうぐらいの濃い青色がかった空がそこに広がっていた。

私が座った椅子がブランコになり、その歌手の方はブランコの下に張り付く形でブランコを動かし始めた。最初はゆっくりとしていたが、徐々にその速度は増し、高度はぐんぐんと上昇していった。

あるところから、私は幾分恐怖を覚え始めた。ブランコの動く速度と高さがもう耐えられないほどのものになり始めたのだ。しかし、それでもその歌手はブランコを動かすことをやめはしなかった。

私は幾分自暴自棄になり、いや全てをその体験に委ねるかのように、急激な速度で動くブランコに身を委ねた。ブランコが往復運動を進めるにつれて速度と高さが増していき、ブランコの高さが頂点に達する都度、紺碧の空が手に届く距離になっていった。

私はそれがどこか嬉しく、恍惚とした表情を浮かべながらブランコの往復運動に自己を委ねていた。あるところから、私の身体の感覚が徐々に無くなりつつあることに気づいた。

だが、ブランコを握った手だけは感覚を確かなものにしておかないと、ブランコから滑り落ちてしまうと思った。そうした意識だけが私の頭の中にあったが、徐々にその意識すらも無くなっていった。

ブランコを下から動かすその歌手はあるところを境目に静かに歌を口ずさみ始めた。その歌は私もよく知っているものであり、これまで何度も聞いてきたものだった。

その歌が始まる頃、もう私には身体感覚が無くなっており、意識もほとんどないような状態であった。ブランコの速度が無常力状態を作り出すまで加速し、もはやその高度は大気圏を突き抜けていくほどになった時、私の意識は完全に飛んだ。

耳元で懐かしい歌だけが聞こえて来る。だが、私の意識はもうない。身体感覚もない。

歌だけがそこにこだましており、宇宙空間だけが目の前にあった。私の意識は完全に飛び、同時に身体は宇宙空間に投げ出されていた。

その状態がどれほど続いただろうか。ゆっくりとだが、ブランコが地球に帰っていく。

ブランコは静かにその速度と高度を落とし始めた。ブランコの下にいたその歌手の方はまだ静かに歌を歌っている。

ブランコが地球に戻ってしばらくすると、その歌手の方はブランコを下から抱きかかえたまま眠りについたようだ。それに呼応するかのように、意識が飛んでいた私は夢見の意識に入った。

揺られるブランコの上と下に二人の男性が夢見の意識状態で眠っている。ブランコの動きがようやく完全に止まった時、二人は目を覚ました。

目を覚ましてみると、それは酩酊状態のような感覚であった。この地球に戻ってきたという感覚がまだ信じられず、私の意識は朦朧としたままであった。

足取りもおぼつかなかったため、私は先ほどまで隣にいた旧友に助けられながら近くのテーブル席に腰掛け、静かに水を飲み始めた。私の目の前を、一緒にブランコに乗っていた歌手の方が静かに通り過ぎていった。

彼は私を一瞥し、小さく微笑んでから無言でその場を去っていった。私も小さく微笑み、身体感覚がまだ取り戻せていないながらも小さく会釈をした。そこで夢から覚めた。フローニンゲン:2018/6/12(火)07:33 

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