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2606. 「信頼と裏切り」の夢


今日はここ数日に比べて少し遅めに起床した。六時前に起床し、六時半あたりから一日の活動を開始した。

今日も昨日に引き続き、晴天に恵まれるようだ。時刻は六時半を迎え、早朝のこの時間帯は雲一つない青空が広がっている。

今日から一週間は小雨が降る日もありながらも、最高気温は25度を越す日が続く。フローニンゲンは初夏に入ったようだ。

六月のフローニンゲンの平均最高気温が20度だということを考えると、この一週間の気温はずいぶんと高い。また、フローニンゲンの気温が最も高くなる七月と八月の平均最高気温ですら22度であることを考えると、初夏というよりも今週は夏のようだと思った方がいいかもしれない。

早朝の優しいそよ風が吹き、小鳥が街路樹の木々に止まって美しい鳴き声を発している。昨夜も就寝前に小鳥たちの鳴き声を聞くことができた。

夜の鳴き声の響きと朝の鳴き声の響きは随分と印象が異なる。夜の響きはどこか神秘的であり、瞑想的だ。一方朝の響きは、清朗感に溢れている。

小鳥の鳴き声を聞いていると、今朝方の印象的な夢を思い出した。特に二つの場面を覚えている。

夢の中で私は、ある街の会議室の中にいた。会議室の一階にある部屋の中で、別に会議をしていたわけではなく、小中学校時代のある友人と雑談をしていた。

会議室の窓から外を眺めると、遠くの方にある工場から煙がもくもくと立ち上がっているのが見えた。その工場の持ち主は日本のある有名な製薬会社である。

私はその煙を見たとき、その工場から出ているものだとは思わなかった。というのも、その煙の色は汚れた様子はなく、真っ白であり、工場が出すような煙とは似ても似つかなかったからである。

その白い煙は上空に向かっていくにつれて一本の明確な線になっていくかのようであった。それは地上から上空10,000メートルまで立ち上っている、と直感的にわかった。隣にいた友人にこの煙について指摘すると、友人もその煙を眺めた。

友人:「あぁ、あれは工場から出ている煙だね」

友人は何気なくそのように述べた。私はそれを聞いて初めて、その煙が工場から出ていることに気づいたのである。

友人がそのように一言述べた後、先ほどまでは真っ白だった煙の色が濃いい灰色にみるみるうちに変わっていった。害のありそうな色を持つ煙が瞬く間に現れた。

しかも、地上にあるところの煙は厚みを増し、それがうねるようにして遥か上空の方に立ち上っていった。一直線ではなく、それはアーチを描くように、まるで地上から上空に掛かる橋のように思えた。

私は会議室の窓越しから、うねるようにして上空に向かう煙の様子をぼんやりと眺め続けていた。そこで夢の場面が少しばかり変わった。

会議室を出た私は、近くの駅に向かって歩き始めた。途中、以前はメインの駅であったはずの場所が今はもう古びていることに気づいた。

少し前に、その古びた駅に向かって掛かっている歩道橋が崩れたことがある、という話を思い出した。そんな記憶を辿りながら、私は目的の駅に向かって歩き続けた。

駅に到着すると、駅の前には街路樹がたくさん植えられており、強い日差しを防ぐことができた。今日はとても暑い一日であり、歩いていると汗が自然と滲み出る。

そんな暑さをしのぐにはもってこいの日陰が駅の前にいくつもあった。実際に、道行く人たちの多くもそこでひと休みしている。

私も少しばかり日陰で休憩し、しばらくしてから駅の中に入った。すると突然、その場が駅ではなく、不思議な洞窟のような場所に変わった。

そこには係員のような男性が一人と、向こうの方には何やら長蛇の列があった。私は係員の男性に話しかけ、長蛇の列の理由について聞いてみた。

係員の男性:「皆さんあるアトラクションに参加しようと思ってるんですよ」

:「アトラクション?」

係員の男性:「ええ、この洞窟の先には底の見えない穴があって、そこに向かって飛び込むアトラクションです」

係員の男性は笑みを浮かべながらそのように述べた。しかし、アトラクションの概要だけを聞くとあまり笑えるものではなかった。

実際にどのようなアトラクションなのか少しばかり関心があったので、私は長蛇の列の先頭まで行ってみることにした。そこにはぽっかりと大きな口を開けたような不気味な穴があった。

私は恐る恐るその穴の方により近づいていき、穴の奥を確認すると、穴の途中から深い青色の水が湧き出ていることに気づいた。この洞窟自体も暗かったが、真っ暗の不気味な穴の奥に湧き出る水はどこか気味悪く、それでいて不気味な魅力を持っていた。

その場にもまた別の係員の男性がいたので、もう少しこのアトラクションについて聞いてみた。

:「このあとアトラクションはどのように開始されるのですか?」

別の係員:「ええ、まず二人一組になっていただきます。一人の方にある英語の文字が背中に入った防水ジャケットを着てもらい、その方にまず最初に穴の中に飛び込んでもらいます。そして、もう一人の方が続けて穴に飛び込んでもらうところからスタートします」

:「二人のペアを作って、まずは一人の方が穴に飛び込むのですね?」

別の係員:「ええ。ですが厳密には、穴の中間地点に湧き出る水の箇所までは二人一緒に降りていくことが可能です。穴の壁に沿ってゆっくりと降りていっても大丈夫です。そこから水の中に飛び込んでいく時には一人一人になります」

:「最初に水の中に飛び込んでいく方の防水ジャケットに英語の文字が入っていると聞きましたが、それは・・・」

別の係員:「あぁ、それは後ろの方が付いてこれるように発色加工されたジャケットです。そこに刻まれている英語の意味は『信頼して私に付いてきて』です」

:「なるほど」

別の係員:「すでにお気づきかもしれませんが、このアトラクションの後半からはとても過酷な状況が待ち受けています。深い水の中を無限に泳いでいくことが二人に課されています。仮に先頭の人の泳ぐ速度が早い場合、後ろの人はたちまち道を見失ってしまい、無限に続く水の中に閉じ込められてしまうことになります。また、先頭の方の泳ぐ速度が遅い場合にも後ろの方は不満の感情が溜まってくるでしょう。途中途中に休憩地点がありますが、アトラクションが始まってからは水の中にいるので、二人の間で言葉でのコミュニケーションは一切できません。コミュニケーションが全く取れない過酷な状況の中で、いかにコミュニケーションを取りながらゴールに向かっていくかがこのアトラクションを攻略する大事な点になります」

:「そのような内容のアトラクションなんですね。お話を聞いていると、このアトラクションの主題は何やら・・・」

別の係員:「ええ、『信頼と裏切り』です」

私は「信頼と裏切り」という言葉を聞いて背筋がゾクゾクとした。気づけば私は他の人たちに優先してもらう形で長蛇の列の先頭にいて、このアトラクションに参加する決意を固めていた。

大きな口を開けた穴を見ると、その深さに思わず息を飲んだ。私は自分の相方が誰かもわからずその穴に向かっていこうと決心した。

「信頼と裏切り」という言葉がもう一度自分の脳裏によぎり、身震いをしながらも、私は不気味な笑みを浮かべていた。フローニンゲン:2018/5/24(木)07:19

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