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2413. 【中欧旅行記】遥か彼方の地点に向かって


つい先ほど列車がフローニンゲン中央駅を出発し、スキポール空港に向けて出発をした。自宅を出発した頃には少しずつ外が明るくなっており、駅に到着する頃にはフローニンゲンの街を包む闇が晴れていた。

また、早朝の六時にもかかわらず、外の気温は生暖かかった。昨夜未明に雨が降っており、その影響もあって気温が上がっていたのだろう。さらには、こうした朝の気温の高まりは、春の到来を示すものに他ならない。

自宅から駅に向かっている最中、私はこの早朝の気温の高まりを喜んだ。長い冬が終わり、もう春がやってきたのだとほぼ確信したのである。

早朝の気温の高まりだけではなく、道を歩いている最中に、春の花々の香りがどことなく漂ってきていた。その香りを嗅ぐと、どこか昔の記憶が思い出された。

幼少の頃の春の思い出の記憶が次々と蘇ってくる。香りには記憶を喚起するような力があるのかもしれない。ここからも、香りが伴う記憶の強さを実感する。私は思わぬ形で春を確かに実感することになった。

早朝のこの時間帯に外に出ることは滅多になく、それこそ旅行に出かける時ぐらいである。今朝、春の到来を確かに噛み締めることができて幸運だった。

フローニンゲンを出発した列車は順調にスキポール空港に向かっている。車窓から見える景色がとても親しみのあるもののように思える。

フローニンゲンに来てから二年ほどの時間が経つ。その期間に、この街は私の新たな故郷になったのだろう。

スキポール空港からフローニンゲンに向かった初めての日のことを思い出す。あまりにのどかな景色が延々と続く光景に最初は驚かされた。広大な畑が広がっており、そこには馬や牛が飼われている。そして、大きな風車が時折顔を覗かせる。

そのような光景はそれまでの私にとってはとても見慣れないものだった。だが今は、それらの景色が自分の内側の故郷を構成している。

人は本当に歩んでいくものらしい。人は一歩一歩未知なる世界に足を踏み入れ、少しずつ自己の存在を深め、人生そのものを深めていく生き物らしい。

今窓から見えるこの光景が自分の内側に、一つのかけがえのない故郷として映し出される。この風景に対してそのような心象を持つことを当時の私は予想できただろうか。フローニンゲンの街が自分の大切な故郷の一つになることなど想像できただろうか。

人生はそうした予想や想像を超える形で進行していく。そうした進行が、人生の深耕を促していく。そのようなことを思わずにはいられない。

今回の旅が、また自分にとっての新たな出発になる予感がしている。こうした予感すらも超えたことが起こるだろうか。

そうであれば、それに自己を委ねたいと思う。フローニゲンを出発した列車が、着実にスキポール空港に向かっていく。その終着駅を超えて、どこか私は遥か彼方の駅のない地点に向かっているかのようである。スキポール空港へ向けた列車の中:2018/4/13(金)07:16

No.966:Tender Clouds

I can see some clouds smiling, which makes us smile. Tender clouds exist everywhere. Groningen, 12:08, Thursday, 5/3/2018

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