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854. 状態空間グリッドを用いたアトラクターの特定について


休日が明け、再び新たな週が始まった。昨日も随分と文章を書いていたが、今日もそのような日になるかもしれない。

少なくとも、特に今週一週間は、複数の論文を同時に執筆していくことになるだろう。数日前に、論文アドバイザーのサスキア・クネン教授から、フィードバックのコメントが記載された論文をメールで受け取った。

いよいよ修士論文の方は佳境を迎える。これまで、自分で立てた計画に沿って論文を着実に執筆していたため、提出期限よりも随分と早く完成できそうである。

今回、クネン先生から得たフィードバックは、論文の “Results”のセクションに関するものであり、具体的には「状態空間分析」の分析結果が記載されている箇所に対するものである。

クネン先生からのフィードバックを見ると、私と同様に、得られた結果が関心を引くものであったということがわかる。ただし、細かな点については、いろいろと修正・補足しなければならない。

特に、「状態空間グリッド(SSG)」という手法について馴染みのない読者のために、もう少しこの手法について説明を加えた方がいいとのことであった。例えば、SSGというのは、確かに、システムの挙動の変動性を分析することができるのだが、実際にはそれをどのように行っているのかを説明することなどである。

この点に付随して、 “Results”のセクションの中で、SSGが出力する複数の指標の意味を説明しながら、分析結果を記載していたのだが、それぞれの指標がそもそもどのように算出されたのかも説明しておくべきだという指摘を受けた。

しかも、各指標の算出方法については、 “Results”のセクションではなく、 “Methods”のセクションに盛り込む方が望ましいとのことであった。ジョン・エフ・ケネディ大学院で修士論文を執筆した時は、数値解析手法を活用しなかったため、そうした解析手法を使った研究をする際に、何をどのセクションに記載しておくべきなのかについて、私の中で明確な基準がなかったようなのだ。

今回のクネン先生からのフィードバックは、私の中でそうした基準を設けることに関して、非常に有益であった。数値解析手法を活用した研究を今後おこなう際に、論文の中で何をどのセクションにどのように記載するかについては、それほど迷うことはないだろう。 上記のような点以外に、より内容に踏み込んだ有益なフィードバックをクネン先生から得た。一つ目は、状態空間グリッドを活用することによって、視覚的にシステムのアトラクター状態を把握することができるのだが、それが本当にアトラクターであることをどのように決定するのか、というものである。

つまり、状態空間におけるある状態がアトラクターであることの定量的な基準はあるのか、あるとすればそれは何なのか、ということを示唆するフィードバックである。このコメントを読んだ時、分析をしながら私も全く同じことを考えていたため、やはりその点を指摘されたかと思った。

この点は、さらに文献を調査しておかなければならない。状態空間グリッドについて取り扱った専門書 “State space grids: Depicting dynamics acorss development (2013)”は、この研究手法に関する最も優れた書籍だと思う。

その書籍を読みながら文章を執筆していた時、アトラクター状態を決定するための方法は、二つあるという記述を発見したのを覚えている。一つは、既存の理論に基づいて、それがアトラクターであるか否かを決定するものである。

例えば、コーチングのクライアントが発達を遂げる直前には、停滞期が必ず存在し、特にそれはセッションの中で、クライアントの繰り返し発言に現れる、という理論があれば、それを元に、状態空間のある状態がアトラクター状態か否かを判断するというものである。

もう一つは、状態空間グリッドの結果から、アトラクター状態を導き出していくというボトムアップ型の方法である。改めて、その専門書を読んでみると、状態空間上のある状態がアトラクター状態であると判断するための幾つかの基準が明記されていた。

このボトムアップ型の方法において、アトラクター状態というのは、確率的にその状態に留まる数よりも多くそこに留まっていることが必要であり、同様に、他の状態よりも多くその場所に留まっているということが条件となる。

これは当たり前と言われれば当たり前なのだが、そこからさらに、偶然にその場所に留まるよりもその状態に多く留まるのかどうかは、帰無仮説を立て、カイ二乗検定を行う必要がある。そしてさらに、統計的な処理をすることによって、アトラクター状態の存在と数を特定する方法があることに気づいた。

ただし、応用数学に関する他の専門書を読んでみると、数学的により厳密にアトラクター状態を特定する方法があり、それはリアプノフ指数を算出することによって判断するというやり方だ。今回の私の研究でそこまで踏み込んで調査するのかはわからないが、とりあえず、今日の午前中に行われるクネン先生とのミーティングで今後の方向性を決めたいと思う。2017/3/20

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