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38. ピアジェの理論の再考:ピアジェの功績と超克すべき点


発達理論を語る際に、ピアジェが残した功績を忘れることはできません。確かにルソー、カント、ヘーゲルなど、ピアジェ以前の思想家も人間の発達について言及していましたが、心の発達が持つ構造的な特性を体系的に研究したのは、ピアジェが最初であると述べても過言ではありません(ピアジェよりも少し先に優れた研究をしていたジェームズ・マーク・ボールドウィンも忘れてはなりませんが)。

現存する発達理論家の誰もが、ピアジェの功績に敬意を表しています。ダイナミックスキル理論を提唱したカート・フィッシャーもその一人であり、ピアジェから直々に発達理論を学び、ピアジェ思想の影響下、今もなお発達理論の研究を継続しています。

現代の発達論者は、ピアジェが残した遺産を継承しつつも、それらを超克しようとする研究を絶えずおこなっています。代表的な例が、今述べたカート・フィッシャーの研究であり、ヴァン・ガートのダイナミックシステム理論を用いた研究であり、エスター・セレンの研究です。

ピアジェの理論モデルを見直している研究者の指摘で共通しているのは、ピアジェの理論モデルは、人間の発達を線形的なプロセスとみなしてしまっているという点です。つまり、ピアジェは、心の各発達段階が持つ質的差異を明らかにしてくれたのですが、人間の発達が本来持つ複雑性を蔑ろにしてしまったのです。

これまで多くの発達理論家が、ピアジェがおこなった実験を文脈を変えておこなってみると、ピアジェが述べている発達モデルと合致しない実験結果が数多く得られています。例えば、コップに入った水の体積を測定する実験や、ひもの長さを推論する実験などにおいて、他者からの支援を媒介させると、全く違った実験結果が得られています。

すなわち、これらの実験結果が明らかにしているのは、私たちの認知的発達というのは、ピアジェが想定しているよりもより柔軟かつ変動的なものなのです。

喩えて言えば、ピアジェは人間の心の発達をマーチングバンドの行進のように見ていたのに対し、カート・フィッシャーやヴァン・ガートを始めとする、システム理論的アプローチを採用する発達理論家は、人間の発達を群衆の混沌とした運動と見ています。

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