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8. 心の構造の動的な性質:既存の発達理論パラダイムを超えて


心の構造というのはそもそも何を指すのでしょうか?皆さんであればこの質問にどのように答えますか?また生涯に渡る心の発達を考える際に、どうして心の構造の性質を明らかにすることが重要になるのでしょうか?いったんここで立ち止まり、それらの問いを自分自身に投げかけてみてください。

カート・フィッシャーは、心の構造とは行動を生み出す動的なシステムと捉えています。そして心の動的な構造を分析することは、心の構造を「不可変的な型」とみなす伝統的な観点とは異なっていると言及しています。

実際には、心の構造をある種の静的な型とみなしてしまうパラダイムは、いまも根強く発達理論の分野に蔓延しています。こうしたパラダイムが支配的であれば、心の構造が持つ動的な要素(可変性)を発見することは困難になってしまいます。あるいはそうした要素を発見したとしても、既存のパラダイムに覆い隠されてしまうでしょう。

そのため、発達理論が暗黙的に了解していた既存のパラダイムを超えて、心の動的な特性に着目することは、現在の発達理論が陥っている病理から発達理論それ自体を救い出す契機になると思います。

心の構造が動的なものであるとする理論モデルを構築するためには、動的な構造が、既存の発達論者が述べる「静的な型」とどのように異なるのかを理解することが鍵になります。カート・フィッシャーは、システムが内在的に持つ「安定性」も考慮しており、心の構造が持つ可変性と安定性を同時に考えることが最初のステップであると述べています。

これまでの理論モデルは、可変性を蔑ろにしていたために、動的な構造が持つ質的差異(レベル)を明瞭に解き明かすことができませんでした。

それでは心の構造を適切に説明する理論モデルとはどのようなものでしょうか?それは、心というシステムが適切に機能し、時間と空間という枠組みの中でシステムそれ自体を維持する「安定性」だけを説明するものではなく、心という動的なシステムが内包する自己組織的な特徴から生じる「可変性」も説明するものでなければなりません。

つまり、心の構造を説明する理論モデルは、生物学的、社会的な影響など多様な影響下において動的に組成される行動のメカニズムを解き明かす必要があるのです。

次回の記事では、リビングシステムに内在する動的な構造について紹介したいと思います。

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