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2449. 【中欧旅行記】二人の学者からの贈り物


ブダペストの滞在最終日も終わりに近づいている。これはすなわち、今回の中欧旅行の終焉を意味している。

いよいよ明日の朝、ブダペストからフローニンゲンに戻る。明日の夕方にフローニンゲンに到着し、再びオランダでの生活が幕を開ける。

これはどこか、これまでとは全く異なった生活の始まりを意味しているように思えて仕方ない。今回の中欧旅行はそれほどまでに大きな刺激と促し、そして励ましを私にもたらしてくれた。

今回の旅で得られたことを全て書き留めることができなかったので、フローニンゲンに戻ってからも引き続き文章を書き留めておきたい。いつかこの旅行記が、また思わぬところで、そして思わぬ形で自分の人生に影響をもたらすに違いない。そんなことを思う。

今日は先ほどまで、ある一冊の専門書を読み続けていた。その書籍は、“Theoretical Knowledge (2005)”というタイトルだ。

この書籍とは運命的な出会いを果たした。もしかすると自分にとって必要な書籍と出会いに中欧に来たのではないかと思うほど、今回の旅先では優れた書籍と出会うことができた。

ワルシャワでは合計で五冊ほど書籍を購入し、ブダペストでは四冊ほど書籍を購入した。そのうちの一冊がまさに本書である。この書籍は、ロシアの科学哲学者Vyacheslav Stepin(1934-)が執筆したものであり、思うにここ数年に購入した書籍の中で最も感銘を受けた一冊だと言える。

夕方からずっとこの書籍を読んでおり、下線を引く箇所と書き込みをする箇所が無数にあった。本書は以前から私が関心を寄せていた科学哲学について取り上げており、中でも科学的な知識体系がどのように構築されていくのかのメカニズムとプロセスを解説している。

これほどまでに内容が濃く、表現が明快な科学哲学の専門書をこれまで読んだことはない。この書籍は、一昨日リスト博物館を訪れた後に、街の中心部にある古書店で購入したものである。

最初私はブダペストで書店巡りをするつもりなど全くなかったのだが、ワルシャワで偶然立ち寄った書店で今の私にとって非常に意味のある数冊の書籍と出会えた体験が脳裏に焼き付いており、リスト博物館を訪れ後に複数の書店に立ち寄った。

その中で最初に足を運んだ古書店でこの書籍を購入することができたのである。この古書店はカフェを兼ねており、コーヒーを飲みながら古書を吟味することができる。

私はアイスコーヒーとチョコレートケーキを注文し、店員に哲学書コーナーの場所を聞いた。目当てのコーナーに到着し、そこのテーブルでコーヒーを飲み、古書を吟味し始めた。

その時に手に取った一冊が本書だった。この書籍は、Springer出版から出されているものであり、この出版社は非常にしっかりとした書籍を世に送り出しているといつも思う。

私のお気に入りの出版社の一つなのだが、この出版社から出される書籍は非常に高価だ。本日調べてみてわかったが、本書は新品で購入すると2万5000円ぐらいの価格である。

古書店で本書を手に取った時、それは新品と見間違うぐらいに状態が良く、幸運にもそれを1500円ほどで購入することができた。しかも驚いたことに、最初のページを開いてみると、著者が自筆で誰かに向けてメッセージを書き込んでいた。

その宛名を見ると、なんと科学思想家のエルヴィン・ラズロー(1932-)だった。ラズローはインテグラル理論を学んでいる者にとって非常に有名であり、システム理論を学んでいる者にとっても非常に有名だ。

著者がラズローに贈呈した書籍をこのような形で私が入手することになるとは思ってもみなかった。私はブダペストの古書店で、本書とのこの運命的な出会いに幾分感動していた。

おそらくラズローは何かしらの理由で本書を手放したのだろう。それが今、自分の手元にある。私はこの出来事を、著者とラズローから本書を託されたのではないかと思わずにはいられなかった。

著者がラズローに本書を贈呈した日を見ると、2011年6月28日だということが分かった。ちょうど私が米国のジョン・エフ・ケネディ大学で学び始めた時期と重なっていた。

あの時から七年の月日が流れた。長かったようで短かったようにも思う。

あの頃の自分は、このような科学哲学の書籍を読むようになるとは思ってもいなかっただろう。だが、今の私は紛れもなく本書のような書籍を読むようになった。

ここまでの道のりは決して平坦なものではなく、常に紆余曲折を含み、一進一退の歩みであったが、七年間積み重ねてきたものが徐々に形になり始めている。私はこれから欧州での三年目の生活を迎える。

この三年目の生活も小さな歩みを積み重ねていく貴重な年になるだろうし、これからも私はずっと小さな歩みを積み重ねていく。その歩みが後退を伴おうが、紆余曲折を経ようが一切関係ない。

ただ私は歩き続けていく。私には歩き続けることしかできないのだから。ブダペスト:2018/4/20(金)22:05 

No.985: Combination of Piano and a Japanese Instrument

I just came up with a new experimental idea to combine the sound of piano and a Japanese instrument.

Somebody already may have tried this, but I’ll experiment it by myself. Groningen, 13:04, Sunday, 5/13/2018

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