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1346. 学術論文の可能性について


早朝より論文を読み進めていると、突然雨が降り始めた。鳥の鳴き声が止み、ただ雨の音だけが聞こえてくる。

木々や地面、そして書斎の窓に打ち付けられる雨音にしばし耳を傾けていた。不規則な雨音を聞きながら、これをデータとして集め、一つの時系列データとして解析をかけるとどのようなことが見えてくるのだろうか、と興味を持った。

昨夜就寝前に最後に読んでいた論文は、定常性(stationarity)と非定常性(non-stationarity)を持つ時系列データの解析理論に関するものである。時間が経過しても平均や分散などが変化しないのが定常性の特徴だ。逆に、時間の経過に応じて平均や分散などが変化するのが非定常性の特徴だ。

今目の前に降り注いでいる雨は、定常的にも思えるし、非定常的にも思える。どちらなのだろうか。

雨が止み、再び小鳥のさえずりが聞こえ始める。雨と小鳥の交響曲。

それぞれがお互いのパートを担当しており、どちらか一方が音を鳴らす時、もう一方は来るべき時に備えて音を出すことを控えている。そんな様子が見て取れる。

それにしても今日は、雲の流れがとても早い。灰色をした薄い雨雲が足早に西から東へと駆け抜けていく。太陽の進行方向とは逆向きに、力強く雲が進んで行く。

小鳥の鳴き声と雨が同時に鳴り始めた。自然が奏でる交響曲も終盤に近づいているのか、それともここが最大の山場なのか。世界を浄化するような雨が降り注ぎ、雨の恵みを感じる。 午前中の仕事はとても順調に進んでいる。朝の時間をいかに充実したものにするかは、以前から意識していることであり、それが完全に定着するようになった。

午前中の仕事の充実ぶりは、自らの身体のバイオメカニズムに沿った睡眠と起床によるところが大きいだろう。就寝時間に関しては基本的に一定であり、基準時間を早まることがあっても遅くなることはないように気をつけている。

一方、起床時間については若干の変動性を設けるようにしている。それはその日における顕在意識下での活動や夢の世界での活動に応じて、睡眠の質が必然的に変化するからである。

太陽の光で自然と起きることを実践し始めて、早いもので十年以上の時が経つ。内側のリズムと外側の自然界のリズムの調和の中で生活を形作ること。こうした生活を送ることによって、多大な充実感と幸福感がもたらされる。 定常性と非定常性、さらにはそれらに付随してエルゴード性について、改めて専門書を通して確認していると、一粒の雨のしずくと同じほどの大きさの啓示を得た。辻邦生先生が小説の可能性について見出した「幸福の実現」は、学術論文を通じても可能であり、実際にそれを可能にしなければならないと思ったのだ。

学術論文は内在的に、小説と同じほどに人々に幸福をもたらす力を秘めている。私にとって、それはまだ可能性の範疇に収まっており、それをいかに実現させていくかが最大の課題だ。

だがこの啓示は、一粒の雨のしずくと同じほどに大切なものだった。2017/7/25(火)

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