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627. 小泉八雲旧居で見た小宇宙


年末に久しぶりの家族旅行を行った。年末年始を実家で過ごすのは実に四年振りであり、今回のように家族全員で旅行に出かける機会に恵まれて有り難く思う。

今回の旅先は、島根県と鳥取県である。厳密には、宿泊先は鳥取県の大山を見張らせる場所にあり、主に観光をしたのは島根県の名所である。二泊三日の旅行の初日にまず訪れたのは、島根県の松江城である。

実は、以前に勤めていた会社の社員旅行で今から七年前に松江城に訪れたことがあるのだが、当時は幹事をしていたこともあり、ゆっくりと城を見学することはできず、ほとんど記憶に残っていなかった。

幸運にも今回は、じっくりと城の中にある資料を見ることができた。日本に残る城を見学する際に湧き上がる感情は、欧州に残る城を見学する際に湧き上がる感情とまた異なる。

ただし、今の私は、それら二つの感情の差について語る言葉を持ち合わせていない。この点については、また一つオランダに持ち越す課題となった。

松江城の次に訪れたのは、松江藩七代藩主の松平不昧公(ふまいこう)が建築した「明々庵(めいめいあん)」と言う茶室である。非常に風情のある茶室であり、そこで和菓子と共に一杯のお茶をいただいた。

和的なものに触れることは、自分の心身を芯からほぐしてくれる。一息つくというのはこういうことを意味するのだろう。茶道に関して疎い私も、その世界の奥行きの深さだけは少しずつわかるようになってきた。

世の中には、実に深くまで開拓された領域があるものだ、と感嘆の声を漏らさずにはいられなかった。新たな道を切り開き、その道を極めていくために、いかに多くの時間と鍛錬を必要とするかに思いを馳せた時、背筋が正されるような思いになった。

明々庵の後に訪れたのは、小泉八雲旧居である。小泉八雲が実際に住んでいた家の庭を見た時、そこに小宇宙が広がっていることを確かに見た。横に座って写真を撮影していた父が、「小宇宙だ」という一言を呟いた。

その庭を見た瞬間に、私もそこに小宇宙が広がっていることを確かに感じ取っていたため、父のその一言は不思議な共振現象であるように思った。日本の庭園が小宇宙を形成しているということを耳にしたことはあったが、実際にこの目でそれが小宇宙であると実感したことはこれまでない。

この庭の規模は大きくなく、むしろとても小さなものなのだが、そこに広がる小宇宙を見た時、打たれるものがあったのだ。とても小さな庭に飲み込まれそうになったのは、産まれて初めてのことだろう。

明々庵にせよこの庭にせよ、物理的な大きさを超越した遥かに巨大かつ深遠な世界が、目には見えないところで確かに広がっているということを感じ取れるようになってきているのは、自分の内側の成熟の証なのかもしれない。

それを確認させてくれたのが、これらの場所であり、私のさらなる進歩を促すように仕向けてくれたのが、これらの場所だったのだ。2016/12/28の出来事

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