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245. 創発特性


昨日、地表で温められた大気が上昇気流となり、積乱雲が発生していた。どうやら地表と上空にはかなりの温度差があったようだ。発生した積乱雲の影響からか、本日の東京は少しばかり雨が降り注いでいる。

地表と上空の温度差によって生み出される積乱雲を眺めながら、形而下の世界と形而上の世界との差は、何を生み出すのか気になり始めた。そうした差によって積乱雲的な何かが発生するのだろうか。

これまでバラバラだった知識が一つの体系となり、新たな認識世界が開けたという経験をしたことはあるだろうか。これまで別々に発揮していた能力が一つの新しい能力となって発揮される瞬間に立ち会ったことはあるだろうか。

ダイナミックシステム理論では、これらの現象を「創発特性(emergent property)」、あるいは単純に「創発(emergence)」と呼ぶ。「全体は部分の単純総和以上のものである」という有名な言葉は、創発特性を見事に言い表している。

創発特性は、システムを構成する個別個別の要素には存在せず、それらの要素が統合され、一つのシステムとして機能する際に生まれるものである。身近な例で言うと、10日後から私が生活を始めるフローニンゲンの街を代表する交通手段である自転車が挙げられる。

自転車は、実際のところ、サドルやタイヤ、そしてハンドルなど複数のパーツから構成されている。自転車が自転車として機能するためには、それらのパーツが統合される必要がある。全てのパーツが組み立てられて初めて、私たちはその乗り物を自転車として活用することができるようになるのだ。

一昔前であれば、野原などにタイヤのない自転車の骨組みが落ちていたりしたが、それはタイヤという部品が欠けているため、厳密には自転車ではない。ここで興味深いのは、自転車を構成する別々のパーツが組み合わさった瞬間に生まれる新たな機能である。その新たな機能というのがまさに、交通手段として私たちが活用できる自転車の特性である。

そして創発特性で重要なのは、それが生まれるためには、構成要素(部分)の相互作用が不可欠であるということだ。構成要素がバラバラに機能していては、創発は生じない。そこには要素間のやり取りが必要なのだ。

上記の自転車の例で考えると、サドルとタイヤ、そしてハンドルが連動して機能することによって、自転車が動きだすということだ。

別の例を考えると、企業組織におけるチームビルディングにおいても、いくら構成員の能力が優れていても、そこに相互作用がなければ優れたチームは出来上がらない、ということを私たちはたびたび目にしているだろう。これは私のオンラインゼミナールの経験であるが、グループ学習の質を左右するのは学習者間の相互作用が大きいと感じている。

ゼミナールの受講生同士のやり取りが多ければ多いほど、クラスの中で創発現象が起こり、議論が盛り上がるのである。受講生同士が多様な意見をその場に提示することで、それらは最初はバラバラな情報でも、グループで議論を深めることによって新しい認識に至ることがある。これはまさに、創発特性が織り成す現象だろう。

グループ学習のメンバーによってどのような創発が起こるか事前にある程度予想することもできるかもしれないが、往々にして事前には全く予想できないようなことが起こる。その点に、創発の妙味が隠されている。

ダイナミックシステム理論の様々なアプローチを本格的に活用することによって、どれほどまで創発現象を予想できるのかを検討してみたいという気持ちがある。対象をある特定の能力に絞るか、あるグループの学習プロセスに焦点を当てて、創発現象の予測範囲を浮き彫りにしてみたい。

いずれにせよ、部分が相互作用をなすことによって、部分の単純な総和以上のものが生まれるということ、さらには部分の相互作用を無視した場合、そうした創発特性が消滅してしまうということを念頭に置いておくことが、個人や組織の発達を考える際に重要になるだろう。

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