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3438. 六時間に及ぶ接心を終えて


先週の土曜日に引き続き、今日もまた午後から長時間にわたって座禅をしていた。先週は四時間半ほど座っており、今日もそれと同じくらい座ろうと思っていたのだが、それを上回る形で六時間弱座っていた。

昼食を摂ることなく、12時半から午後の六時半まで座っていた。先週に引き続き、いや先週以上にそこでの知覚体験は強いものであった。

座禅の深まりと共にどのようなことが自分の脳内で起こるのかについては、諸々の専門書や過去の経験によって知っているつもりだったのだが、今日はいかんせん座っている時間が長かったためか、意識の深まりのピークで知覚していた事柄は想像を遥かに超えるようなものばかりだった。

そこで知覚される内的ビジョンについて圧倒されることはなかったのだが、そこで得られる洞察が珍妙なものばかりで相当に面食らった。いくつか書ける範囲のものについては書き留め、ここでは書けないながらも重要なものについては心に留めておく。

今日の座禅瞑想においては、最初の二時間弱をモーツァルトの三大交響曲を聴いており、残りの時間は全て、バッハの平均律クラヴィーア曲集を聴いていた。それらの曲を聴きながら、端的には聴く者としての自己は完全に溶解し、世界が完全にその曲となった。

奇妙な表現としては、そこでは音楽を聴く者だけではなく、聴かれる対象としての音楽も完全に溶解していた。つまり、主体と客体が完全に溶解し、ただ世界全てがその音楽であった。

より具体的な体験としては、モーツァルトの交響曲のどれかを聴いている最中に、自分の脳と意識がペンキで次々と上書きされるかのように、何度も何度も新たなものに更新されていく体験を知覚していた。これはかなり奇妙であり、自分が自分ではなくなるような恐怖が一瞬生じ、一度目を開けて自分が無事かを確かめた。大丈夫であることを確認してから再び目を閉じると、意識は再び一気に深みに向かっていった。

珍妙な洞察としては、「やはり1円と100億円は同じものである。確かに見る角度によっては価値が異なるように見ることもできるが、究極的には両者は同一のものである」「構成概念として人為的に作られたIQという尺度は、200あたりを上限とするのではなく、少なくとも1,000や10,000まで存在し、誰しもが∞のIQを獲得することが可能であり、その瞬間に構成概念としてのIQは崩壊し、意味をなさなくなる」という類の気づきが、およそ数十から百近く得られた。

バッハの平均律クラヴィーア曲集は旧約聖書に喩えられるだけあってか、それを聴いている最中はとても平穏な気持ちになっていた。ただし、意識が深まっている最中でもあったため、バッハの曲を聴いている最中も様々な気づきが得られた。

早朝の日記で書き留めていたことに関係してか、私たちは誰しもが唯一無二性を持っていながらも、同時に他の唯一無二な存在から何かを引き継ぐ形でこの世界を生きている、という洞察が得られた。人はそれぞれ固有のバトンを持っており、それを他者に譲り渡し、そのバトンが連綿と受け継がれていく様を知覚していた。

座り始めて四時間半が経ったあたりに、突然自分の内側から創造エネルギーのようなものが湧き上がり、やはり日記と曲を膨大な数作っていこうと再度気持ちを新たにした。結局、何万と日記と曲を作っても宇宙に届くことはないのだが、それでも自分の内側で形になることを待っているものに対しては形を与え続けていこうと思った。

つらつらと今日の座禅体験について書き留めてきたが、最後にもう一つだけ得られた洞察を書き留めておくと、バッハの曲を聴いている最中に、一般的に考えられている時間の矢とは逆向きに音楽が流れていることに気づいた。

これは説明が難しいのだが、楽譜上、さらには演奏上、通常の知覚であればある決まった方向に音楽は流れていくものだと思う。楽譜上であれば、左から右へ、演奏上であれば、音楽は現在時点から未来時点に向かって流れていくように知覚されるはずだ。

しかし、座禅中に体験していたのは、それとは全く逆向きの流れであった。楽譜上の感覚であれば、音楽が右から左へ流れ、演奏上の感覚であれば、未来時点から現在時点に向かって流れていくように知覚されていたのである。

より厳密には、音が生み出されるのは常に今というこの瞬間であるため、曲を聴いている最中に感じていたのは、絶え間ない今というつぶてが自分の方に向かってくるような感覚であった。それはとても印象深い感覚であった。

今日は随分と長く座ったため、来週や再来週は長時間座ることをせず、接心として長時間座るのは年末にもう一度ぐらいにしようと思う。フローニンゲン:2018/11/24(土)20:09

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