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102. ドーソンおよびコモンズの発達測定モデルに見られる共通の特質:階層的複雑性


今回の記事は、テオ・ドーソンとマイケル・コモンズの発達測定モデルに共通して見られる「階層的複雑性」について簡単に紹介したいと思います。階層的複雑性を分析することは、どちらのモデルにおいても主要なテーマです。階層的複雑性は、概念の階層構造と論理の階層構造という二つの要素に分けることができます。

階層的複雑性を根幹とする両者のモデルは、思考の抽象性の階層的発達を予想することや分析を可能にします。それを可能にするメカニズムは、カート・フィッシャーが指摘するように、新しい概念は以前の階層構造を基にして誕生し、次の階層構造に織り込まれる形で構築されていくという理論に裏付けられています。

このように私たちの思考は、以前に獲得した概念を統合し、複数の概念をより抽象的な一つの塊にまとめあげることによって、より複雑・高度になっていきます。つまり、高次の階層構造を獲得し、より抽象的な概念を用いるようになれば、複数の概念を個々別々に活用する制限から解放される形で意味を構築することができます。

例えば、日本語で「栄誉」という言葉がありますが、この言葉が持つ概念の階層的複雑性は、ドーソンとフィッシャーのモデルで言うところのレベル10「抽象配置段階」から見られます。ここで、「栄誉」という言葉は、「評判」「信頼」「親切心」と言った一段階下のレベル「単一抽象段階」で見られる概念をまとめあげることによって生まれます。

同様に、「人格的誠実性」という言葉は、レベル11「抽象システム段階」で初めて見られます。この言葉は、例えば「栄誉」「責任感」「価値観」といった一段下の概念階層の言葉に基づいて構築されています。

一般的に、ロバート・キーガン、オットー・ラスキー、スザンヌ・クックグロイター、ローレンス・コールバーグ、キャロル・ギリガンなどの発達心理学者の測定モデルでは、一つ一つの言葉が持つ階層構造にそれほど注意を払いませんが、ドーソンやコモンズの測定モデルでは、概念の階層構造に着目する点が非常にユニークだと思います。

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