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2708. マルティニ教会でのパイプオルガンコンサートに参加して


晴れ渡る穏やかな午後。たった今、日課である仮眠を取り終え、これから午後の取り組みに従事したいと思う。

昼食後に参加したパイプオルガンコンサートの余韻がまだ全身に残っている。昼食を早めに摂り終え、少し休憩をしてから、私はフローニンゲンの街のシンボルであるマルティニ教会に向かった。

今日のパイプオルガンコンサートはそこで行われる予定になっていた。教会に向かう足取りは軽やかであり、今から参加するコンサートに対して心が高鳴っていた。

教会まで向かう道はいつもの通りであり、途中に行きつけのチーズ屋の前を通り、中央市場の前を通った。今日も市場が賑わっており、市民と観光客の双方が市場で様々な品物を眺めている姿を見た。

市場まで来るともうマルティニ教会のてっぺんが見えてくる。普段マルティニ教会を眺めることはよくあるのだが、教会に近づくにつれ、改めてまじまじと眺めてみると、その荘厳さに息を呑んだ。

マルティニ教会とマルティニ塔は併設されており、塔の時計を見ると、時刻はコンサートが開始される五分前を示していた。改めてマルティ教会を眺めた後、私は教会の中に入った。

入り口で今日のコンサートの参加費である1ユーロを支払い、プログラムをもらった。教会の中に足を踏み入れると、非常に懐かしい感じと新鮮な感じの双方が訪れた。

まず懐かしい感じについては、今から二年前の夏にこの教会でフローニンゲン大学の入学式が行われた時の記憶が思い出されたのである。ここは確かに教会なのだが、非常に規模が大きく、収容人数はかなり多い。

久しぶりに教会の壁や天井を眺めた時、二年前のあの印象的な入学式のことが自然と思い出された。一方で新鮮であったのは、今から二年前に訪れた時には見落としていたような装飾が教会の壁に掛かっていたことだ。また、地面に刻印された文字盤や天井の壁画なども見落としていたことに気づき、それらを眺めた時にこの教会の歴史の重みを改めて実感した。

壁や天井を眺めて感じた新鮮さ以上に目に飛び込んできたのは、言うまでもなく巨大なパイプオルガンだ。二年前の私はパイプオルガンに一切関心がなかったため、おそらくそれを一瞥はしていたであろうが、当時はほとんど何も感じなかったように思う。

しかし、今このようにしてパイプオルガンに強い関心を持ってそれを眺めてみると、この教会が持つパイプオルガンの荘厳さには心を打たれるものがある。第一印象として、人間の手でこのようなものを作れるとは思えない代物だ、という感想を持った。

私はゆっくりとパイプオルガンに近寄って行き、空いている席に腰掛けて、コンサートが始まるまでの間パイプオルガンに釘付けになっていた。コンサートの開始時刻になると、パイプオルガンの下に壇上があり、そこで演奏者が挨拶を始めた。

今日のコンサートは45分間の長さである。演奏者は挨拶をすませると、パイプオルガンの下にある扉を開け、演奏室の方に向かっていった。そこからの45分間は本当に黙想的な時間であった。

巨大なパイプオルガンを眺めながら曲を聴いていると、パイプオルガンという芸術作品を目で鑑賞するのと同時に、音楽を鑑賞するという二重の体験がそこで起きていることに気づいた。パイプオルガンの華やかな天使の装飾、パイプオルガンを支える大理石か何かで作られた石柱に私の意識が向かっていた。

本当にこんな巨大かつ精巧な楽器があることに言葉を失った。45分間のコンサートを終えた後、私はしばらく椅子に腰掛けたまま余韻を味わっていた。

しばらくしてから席を立ち、パイプオルガンの方に近寄って行った。真下からパイプオルガンを眺めたり、斜めからそれを眺めたり、今日のコンサートに参加した中で一番熱心にパイプオルガンそのものを観察していたように思う。

パイプオルガンを演奏することは今後訪れないだろうが、この楽器の仕組みと歴史に関心を持った。パイプオルガンの下であれこれと考え事をしていると、演奏者の方が扉から出てきて、笑顔で私に挨拶をしてきた。

私も笑顔で挨拶をし、「素晴らしい演奏でした」と言葉をかけた。それに対して演奏者の方は再度お礼を述べた。

しばらく教会の中を散策し、教会の一階に置かれているいろいろな所蔵品を眺めていた。すると私の右肩を小さく叩く人がいた。

振り向くと、先ほど入り口でチケットを手渡してくれた受け付けの女性だった。

受け付けの女性:「コンサートはどうだった?」

:「素晴らしかったです。マルティニ教会でのコンサートは初めてだったのでなおさら」

受け付けの女性:「それは良かった。来週の金曜日もまた同じ時間にコンサートがあるから是非いらっしゃい」

:「どうもありがとうございます、ぜひ」

受け付けの女性:「それじゃあ来週またここで会いましょう」

来週もまたこの風情のある教会で荘厳なパイプオルガンの音色を聴けることを嬉しく思った。しかしよく考えると、来週の金曜日はロンドンにいることに気づいた。

残念ながら来週はコンサートに参加できないが、来月以降もほぼ毎週何らかのパイプオルガンコンサートがここで行われているようなので、今後も積極的に足を運びたいと思う。今日の体験をきっかけにまた何かが動き出したような気がする。フローニンゲン:2018/6/15(金)15:27 

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