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1456. 祈りを捧げるあの老婆の彫像のように


生きることが芸術となり、芸術が生きることとなる。コペンハーゲンのニイ・カールスベルグ・グリプトテク美術館である彫像を眺めた時、そのようなことを思わされた。

あの日、私はその彫像に完全に捉えられていた。魂の底から鷲掴みされたかのように、私はその場に立ちすくんでいた。その彫像は、一人の老婆の祈りの姿を表現したものだった。

私はその作品にただただ見とれてしまい、一切のことを忘れて、ただその作品だけを眺め続けていた。その美術館にはロダンが残した有名な彫像が多数所蔵されていた。

しかしながら、私はロダンの作品よりも、この老婆の祈りの姿を表現した作品の虜になっていたのだ。その作品を様々な角度から眺めたり、ある特定の角度からこの作品を眺め続けていた。

この作品のモチーフとなった老婆は何に祈りを捧げていたのだろうか。さらには、老婆が見つめる視線の先には何があったのだろうか。

私は思わず、この作品が展示されている部屋の中で、老婆が見つめる視線をたどるかのように同じ方向を見つめていた。一つの作品をずっと眺めていたくなるような感覚。

これは誰しも必ず一度は体験したことがあるのではないだろうか。どのような作品に対してその体験が訪れるかは人それぞれだろう。

ただし、一つ言えることは、その作品こそが自分にとってかけがえのない作品であり、自分に対して重要なメッセージを発しているということだ。そうした作品に出会う時、私たちはそこで立ち止まるべきである。

そこに立ち止まり、魂の解脱が済むまでその作品を見続けることが大切となる。老婆の祈りの姿を表現したこの作品を見たのは、かれこれ10日ほど前になる。

未だにこの作品が私を捉えて離さなかった理由がわからない。しかし、一つだけ考えられるのは、この老婆の祈りの姿そのものが芸術であったということだ。

おそらく、この彫像の作者も老婆の祈りながら懸命に生きる姿に芸術を見て取ったに違いない。祈りを捧げながら懸命に生きる姿が、一つの芸術作品として自然と立ち現れてきたに違いないのだ。

ここで私は一つ、自分の仕事に対する大きな光を得たように思う。一人の人間が真摯に生きる時、それは一つの芸術になるのではないだろうか。

また、毎日を懸命に生きる中で生み出す一つ一つの創造物は、一つ一つの芸術作品になり、その人間が生涯を閉じる時、それらは一つの巨大な芸術作品に変要するのではないか。そのようなことを考えていた。

老婆の祈りの作品は、彫像の持つ魅力を教えてくれた。形を掘ること、そして形を残すこと。それらの双方が彫像芸術の中にある。

この作品を眺めた後、ホテルに戻った時、彫像を創出するかのように自分の作品を絶えず生み出していこうと固く誓った。一つの論文、一つの日記、一つの曲は、一人の人間が真摯に生きる中で生み出したのであれば、それらはどれも芸術作品になる。

生きることと作ることが完全に同一化するまで他に何も求めない。論文を執筆すること、日記を書くこと、曲を作ることを絶えず行う中で毎日を十分に生き抜くこと。

それらは自己の人生を著しながら生きることに他ならず、作りながら生きることに他ならない。作りに作る中で生を形取ること。それ以外は何も望まず、何も必要としない。

絶えず絶えず作りに作ることが自分なりに生きることであり、それが自分に与えられた生の究極的な意味であり、宿命に他ならない。

あの老婆の祈りのように、毎日祈りを捧げ、作りに作る日々の充実感と幸福感を絶えず感じていたい。その先の先に、人生の終焉によって初めて生み出される一つの巨大な芸術作品が姿を表すだろう。2017/8/21(月)

No.102: Crave for Creation My wish for life is quite simple; all I want to do is create something to express my inner world.

In other words, my aspiration for life is just writing academic papers, keeping a diary, and composing music.

Do I want anything else? No, I don’t. Do I want to do anything else? No, I don’t.

What do I crave for? I thirst for creation because I was created, because my life is being created every second, and because I am destined for creation. Sunday, 8/27/2017

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