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1249. この一年間の夕食とデカルトについて


初夏の太陽の愛情を注がれて育った赤々とした大きなトマト一つ、みずみずしいセロリ一本、北欧を彷彿とさせるニシンの酢漬け一匹。この一年間の私の夕食のほとんどは、その三つだけだ。

昼食時に多めのサラダを摂る時に、有機穀物で作られたパン一枚と行きつけのチーズ屋で購入したチーズを少々食べなければ、夕食時にそれらを食べることもあるが、基本的には上記の三つの食物を摂るだけで私の夕食は終わる。

特に節制を意識しているわけではなく、それは本能的に必須の食生活だと思っている。私の本能が求めるのは、食欲を満たすことではなく、必然的に過食をすることではない。

結局、自らの存在を保つのは、思考と感覚に裏打ちされた探究にあるのであって、そうしたことを可能にする際に、多くの食べ物を胃に入れておくことでは賢い行為ではない。私は「食」というものを非常に重要視しているが、それは決して多くのものを食べることにあるのではない。

自ら必要とするものを必要最低限に摂取することが何より重要なのだと思う。過食により身体を鈍重にすることは、精神を鈍重にすることにつながり、それは自己の存在そのものを鈍重なものにすることにつながる。

今の食生活のお陰で、私はこの一年間、絶えず読み、絶えず書くだけの肉体的・精神的持続力を得られているように思う。 夕食後、森有正先生が執筆された『デカルトとパスカル』の最初の章を読んだ。この書籍は、一昨年に日本に滞在していた時に購入したものであり、以前から読みたいと思っていたが、なかなか手をつけることができなかった。

今、ようやくこの書物と向き合う時が来たのだと思う。私は、森先生の他の書籍を通じてデカルトをより深く知ることになり、これまで抱いていたデカルトへの印象を打ち壊し、再構成していくような試みを促された。

ただし、先生の他の書籍を通じて断片的にデカルトの思想やあり方について知ることには限界があり、今日から時間を確保しながら一章ずつ本書を読んでいくことにした。他の偉大な哲学者と同様に、デカルトもまた、自らの生と思索が深い次元で一致していた人物であったことを知る。

特に、彼の「懐疑」という探究方法は、概念的な探究方法だったのでは決してなく、実存的な探究方法だったということに感銘を受けた。欧州で生活を始めて以降、私は何度も何度も「自己批判」という概念と向き合わざるをえない状況に置かれ、自己批判を通して、その概念が持つ深い意味を掴もうとしていた。

デカルトが、懐疑という実存的な自己否定の本質に、徹底的な自己肯定を見出していたことは、私にとって励ましをもたらすものであった。そして、徹底的な自己肯定に裏打ちされた懐疑を通じて、デカルトは、自己に自己の存在を通じて絶えず規律を与え、精神の陶冶を不断に試みていった。その姿には打たれるものがあった。

また、そもそもデカルトが思想家としてそのような態度で思索活動に従事することになった決定的な契機が、ある日の夢による啓示であったことを知った。1619年11月10日、若き日のデカルトを不意に襲った、連続する三つの啓示的な夢がデカルトを探究に駆り立て、探究を通じてこの世界を生き抜くことを決定付けたことを知った。

この史実を知ったとき、デカルトは、人知を越えた存在に導かれるようにして、探究の世界に参入せざるをえなかった人間だったのだとわかった。デカルトの思想体系に触れる際、こうしたデカルト本人を掴んで離さない実存的な主題を理解することできなければ、彼の思想を掴んでいくことなど全くできないと思われる。

デカルトの思想体系に熱いものが込められているように感じ始めたのは、彼の思索のあり方が、徹底的なまでに自身の生の深い部分に根ざされていたからなのだと思う。2017/7/2

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