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1198. 精神療法の負の側面


間違いなく自分に何かが起こり、その何かが少しずつ自分の奥深くに浸透していく運動が始まったかのような感覚に今包まれている。それを引き起こしたのは、昨日のライデン訪問だった。

昨日の早朝に自宅を出発し、フローニンゲン駅に到着した私は、早朝の肌寒さもあり、駅構内のコーヒー屋でホットコーヒーを注文した。注文したコーヒーが届き、店内のテーブルに腰掛け、何口か飲んだところで、出発時刻までもう少し時間があったが、プラットホームに向かうことにした。

乗車予定の列車は、すでにプラットホームに到着して出発を待っていた。列車に乗り込むと、私はすぐに、持参した “Authority, Responsiblity, and Education (1959)”をカバンから取り出した。

この書籍は、フローニンゲン大学の社会学棟にある、書籍の寄付所で偶然見つけたものであり、特に権威が教育にもたらす肯定的・否定的な影響について関心があった私にとって、この書籍は非常に参考になる一冊である。

ライデンまでの二時間半ほどの間、私はこの書籍を食い入るように読み進めていた。権威が教育に与える影響とは直接関係ないのだが、著者は、全ての心理的な現象を無意識の問題として説明しようとするフロイトの考え方に否定的な見解を述べている箇所が印象に残っている。

その見解の中で、一つ面白い話があった。「ピタゴラスの定理」で知られる古代ギリシャの数学者ピタゴラスが、ある日、砂の上に三角形を描いているというところからその話は始まる。

そんなピタゴラスのもとに友人がやってきて、ピタゴラスの横に腰掛けてから、二人の会話が始まる。 ピタゴラス:「なぜこんな三角形ばかりを描いているのか自分でもわからないんだ。これらの三角形は、どこか自分を不安にさせるものや魅了するようなものがあるのは確かなんだが。」 ピタゴラスの友人:「そうか、それでは奥さんとの関係はどうなんだい?」 友人がそのような質問をピタゴラスに鋭く投げかけた時、ピタゴラスは少しばかり下を向き、「あぁ!」とつぶやいた。ある気づきを得たピタゴラスは、それ以降、三角形を描くことはなくなり、ピタゴラスの定理を残すことはなかった、というオチの話である。

この話を読んだ時、現実世界に表出している具体的な行動を無意識の世界と不用意に結びつけて説明することの危険性を感じた。これまでの日記で書き留めていたように、私たちの無意識の世界には、創造的な活動に従事するための根源的なエネルギーが存在しており、そこに下手に手を加えることは、創造性を枯渇させてしまうことになりかねない。

つまり、「治癒」という名の下に、無意識の世界に手を触れることには危険性が内包されているのだ。この話は権威の話と直接的に結びつかないと述べたが、そうでもないように思えてきた。

著者は、本書の中で、教育は決して精神療法ではないということを強調していた。この指摘は、非常に重要なもののように思える。

仮に、教師の発言や行動が全て精神療法に裏打ちされたものであった場合、それは子供たちの精神を治癒するという名目の下、彼らの創造性を奪いかねない。

また、教師という権威的な人物がそうした精神療法的な働きかけをした場合、その効果はより強力であるがゆえに、子供たちの無意識に与える影響も強くなり、それが治癒的なものをもたらすことがあったとしても、逆に、子供たちの創造性を枯渇させかねないことに注意が必要だろう。

そのようなことを考えながら、列車の窓から外を眺めていると、朝日に照らされた田園風景が目に飛び込んできた。ひどくのどかな風景の中、巨大な風車が無数に連なっている姿が見えた。

人格のない巨大な風車がゆっくりと動いている様は、少しばかり不気味に映った。2017/6/21

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