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1167. 口笛のこぼれる火曜日


口笛を思わず吹きながら歩いてしまうかのような午後だった。午前中の仕事を終え、昼食後に行きつけの美容室に足を運んだ。

毎回、私はロダニムという美容師に髪を切ってもらうのだが、一つの専門領域で個を確立し、技術を磨き続ける人間とは非常に話がしやすい。ロダニムはそんな人間の一人だ。

いつものように、フローニンゲンの天気の話を含め、たわいもない話題から対話が始まった。おそらく、オランダ人は今の季節のことを「夏」だとみなすのだと思うが、私からしてみれば、それは「春」である。

日の出と日の入り時間は確かに夏のそれだが、気温の快適さはまさに春そのものだと言っていい。一昨日、何気なくフローニンゲンの年間の気温の推移に関するデータを眺めてみたところ、来月の七月が年間を通して最も気温が高く、今月と八月は年間で二番目に気温が高い月となる。

今月も半ばに差し掛かりつつあるが、それでも非常に爽やかな気温である。さすがに私はもはやジャケットを羽織ることはなくなったが、自転車に乗っている人たちはジャケットを羽織っている姿をよく見かける。

ロダニムと天気の話を若干したところで、夏の休暇に関する話題となった。なにやらロダニムは、スペイン領の小さな島に奥さんと十日ほど旅行に出かけるそうだ。

モロッコに近い島とのことであり、そこは人も多くなく、お勧めな場所とのことである。私は、八月の半ばにノルウェーに行く予定であり、そのことをロダニムに伝えた。

ロダニムも過去にノルウェーを訪れたことがあるらしく、ノルウェーの自然の雄大さは圧巻だったそうだ。まさに、私が今回の旅に期待しているのも、そうした自然の雄大さに触れることであり、その他に望むことは特にない。

ノルウェーの深い森や雄大なフィヨルドに触れながら、その場所でゆっくりと七日間ぐらい過ごしたいと思う。ロダニムから提案があったのは、せっかくならデンマークに行き、その足でノルウェーに向かうというものだった。

未だデンマークには足を踏み入れたことがないので、その案も確かに良いかもしれないと思った。その後もロダニムと雑談をしていると、あっという間に時間が経ち、散髪が終わった。

美容室を出た私は、行きつけのチーズ屋に立ち寄り、今日はチーズを買わずナッツ類だけを購入した。チーズ屋を後にした私は、思わず口笛を吹きながらフローニンゲンの街を歩いていた。

全ての物事が、一つの摂理の中で静かに流れていくような感覚が私の内側にあった。

取り巻く自然も、自分の人生も、全ての事柄が静かに、そして着実にあるべき方向に向かっているような気がしていた。2017/6/13

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