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700. 窓としての書物と運河を進む砕氷船


書物とは、より広く深い世界を知る窓のような存在である。そのようなことを思わざるをえない気づきを得た。

ある書籍や論文をひとたび読み終えた時、もはや自分が読む前の自分とは違う世界にいるような感覚になったことはないだろうか。そこまで大げさなものでなくても、ある書籍や論文を読み終えた後に、見える景色が以前とは少し違うような感覚を持ったことはないだろうか。

そのような感覚を逃さず捉えた時、私には、書籍や論文といったものたちが、より広く深い世界を知るための窓のような存在に思えてきたのである。今日も、昨日と同様に、様々な書籍や論文に触れた。

昨日と今日も活字世界の中に参入するという行為は全く同じであるはずなのに、昨日見えなかった景色が、今この瞬間に見えるようになっていることが不思議で仕方ないのだ。まさにそれを可能にしてくれているのが、多様な活字世界を形作る書物なのだと知る。

今日読んだ書物は、昨日私の目には映らなかった景色を浮き彫りにしてくれる。それはまるで、昨日の私の内側で凍りついていたものを溶かすかのような、あるいは、そうした凍てつく何かを静かに打ち壊し、新しい世界の景色をそっと私に差し出してくれるかのようである。

書物は、自分が未だ知らない広く深い世界を覗かせてくれる窓であり、同時に、その新たな世界に私たちを導いてくれるための窓なのだと思う。その窓の外から新たな景色を眺めるのではなく、窓から見えた景色に自分の足を踏み入れるからこそ、その世界から戻ってきた時に、それまでの自分が見ていた景色とは違う何かが見え始めるのだ。そうではないだろうか。 書物をそのように捉えた瞬間、私は先週末に見た、凍てつく運河を進む船を眺める人たちの隠された想いにはたと気づかされた。あの時、私が見た船は単なる船ではなく、砕氷船と呼ばれるものなのだろう。

砕氷船とは、文字通り、水面の氷を砕くことを目的にした船である。砕氷船がゆっくり進行する様子を、サイクリングロードの傍からじっと眺めている人々の姿が今も私の目に焼き付いている。

あの場で砕氷船を眺めていた人々の隠された真意は、どこか日常生活の中で凝り固まった心を打ち壊し、新たな気持ちでそこから生活を始めたいと願うようなものだったのではないかと思った。

あの時の私は、砕氷船が進む姿に何の意味も見い出すことができなかった。しかし、今の私はそのような意味を見出すことができる。

私たちは常に、日々の生活を肯定しながらも、その生活をまた新たな視点や気持ちを通じて形作っていきたいと密かに願っているのではないかと思う。だからこそ、氷を勇敢に打ち壊し、そこから新たな表情を持った水面を浮かび上がらせる役割を担う砕氷船に対して、人々は何かしら感じるものがあるのだ。

そして、砕氷船と全く同じ役割を担ってくれるのが、より広く深く、そして新たな世界へ私たちを誘ってくれる書物なのだと強く実感した。2017/1/29

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