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10553-10556: ミュンヘンからの便り 2023年7月1日(金)



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タイトル一覧

10553.【ミュンヘン滞在記】今朝方の夢

10554.【ミュンヘン滞在記】死生観の醸成を通じた恩恵

10555.【ミュンヘン滞在記】オンラインゼミナールの第37回のクラスの振り返り

10556.【ミュンヘン滞在記】Haus der Kunstでの7冊の良書との出会い


10553.【ミュンヘン滞在記】今朝方の夢


時刻は午前7時を迎えた。今し方、ホテルのレストランに降りて、ダブルエスプレッソと水をもらってきた。水は後ほど飲むとして、まずはダブルエスプレッソをゆっくり飲みながら朝の取り組みに従事したいと思う。今日も観光に出かけていくだけではなく、翻訳作業や創作活動をいつものように行っていこうと思う。翻訳作業の方は着実に進行していて、旅から帰ったらさらに翻訳のペースを上げることができるだろうから、その完成は比較的すぐにやってくるのではないかと思う。


今朝方はいくつか夢を見ていたが、鮮明に覚えているものは意外と少ない。まず全ての夢に共通して、特に感情の波がさほどなかったように思う。端的には、夢の世界は比較的落ち着いていたのではないかと思う。そんな中、1つ覚えているのは、高校2年生の時に同じクラスになったある女子から医療従事者になることを進められた場面があったことである。確かそれを教室の中で言われたように思う。彼女自身も医療関係の仕事に就くために、高校卒業後は専門学校に通うことになっているとのことだった。私は自分が医療関係の仕事に就くというイメージが全くわかず、彼女からの勧めに最初は乗り気ではなかった。しかし、医者ではないにせよ、人々を癒す仕事であれば確かに自分に向いている側面もあるかもしれないと考え始めた。その考えが芽生えた時に夢から覚めた。


ぼんやりとその他の夢について何か思い出せないかと試している。夢の逃げ足は本当に早く、昨日、絵画作品との出会いもまた一期一会のようなものであるのと思ったのと同じく、夢との出会いもまた一期一会なのだと思わされる。どこか今朝方の夢は全体としてクリーム色のような色彩を帯びていたことが印象的である。ミュンヘン:2023/7/1(土)07:22


10554.【ミュンヘン滞在記】死生観の醸成を通じた恩恵


今朝方起床した瞬間には雨が降っていたミュンヘンの街は、今もう雨を浴びておらず、土曜日の静かな感じが辺りを包んでいる。プラハ以上に産業化と近代化が推し進められているミュンヘンは、確かにプラハほどの落ち着きはないが、休日の落ち着きは心地良いものだ。


今の気温は15度で、空は曇っている。午後からは晴れてくるようだが、気温はさほど上がらず、22度が最高気温とのことなので、今日はとても過ごしやすそうだ。今日は午前中から正午前にかけてゼミナールの第36回のクラスがある。課題図書として『日本人の死生観を読む:明治武士道から「おくりびと」へ』を扱っていて、今日は第2章の「死生観という語と死生観言説の始まり」を取り上げる。現在のゼミナールでは、死生観を丁寧に扱っており、それを通じて自分の死生観も少しずつではあるが発達を見せている。日々の様々な瞬間に死について自分なりに考えることが多くなっており、もちろんテーマがテーマなだけに、そして人は誰も自らの死を経験できないという点において、死について考えるのは難しいが、それを考えようとする意識の轍が形成されているのは確かである。その轍のおかげで、そこから死に関連した自分の新たな考えが芽生えている。例えば、昨日の絵画との出会いが一期一会であるという気づきであったり、今朝方の夢を見るということもまたそこに一期一会性が内包されているという気づきもまた、死生観の醸成を通じてもたらされたものだと思われる。死生観を発達させていく試みはこれからも焦らずに取り組んでいこう。それと足並みを揃える形で自己もまた発達していくだろう。


ゼミナールのクラスを終えたら、今日はまずHaus der Kunstという現代アート美術館に訪れたい。ホテルからは歩いて30分弱あるが、それは良い散歩になるだろうし、何よりも自らの足で歩くことによって目に入るものの印象が濃くなり、身体を通じてミュンヘンの街を捉えることに繋がる点は見逃せない。こうした恩恵があるから、自分は旅先で歩くようにしているのである。その後に訪れるのはバイエルン州立民族学博物館で、ここには5つの大陸の芸術作品が数多く所蔵されており、それぞれの大陸の美的感性の比較を行いたいと思う。これまでゼミナールの中で世界の宗教について学んできたこともあるので、それぞれの宗教の精神性と芸術性を比較する試みもこの博物館で行いたい。今日はそれら2箇所を巡り、帰りにオーガニックスーパーで夕食を購入し、ホテルに戻ってこようと思う。今日の観光の中でどのような一期一会が待っているのかとても楽しみである。というよりも、今自分が存在している一瞬一瞬が一期一会であるという意識を研ぎ澄ませたいものである。ミュンヘン:2023/7/1(土)07:44


10555.【ミュンヘン滞在記】オンラインゼミナールの第37回のクラスの振り返り


時刻は正午を迎えた。早朝に降っていた雨は止み、空は少し曇っているが、ミュンヘンの街には明るさが見られる。


つい今し方、第37回のゼミナールのクラスを終えた。今日のクラスの中でも印象に残っていることは多数あるが、その中でも、自分が自らの死をどのように受け止め、意味づけをしているのかという内的なものと、社会が私たちに押し付けてくる外的な死生観をきちんと区別することの重要性を思った。まずはそれらの違いを明確にした上で、現代社会を覆っている死生観が何かを冷静に見つめ、その過程の中で自らの真正な死生観を見出していくことが重要だと思ったのである。このことは、トランスヒューマンの時代の到来に際してさらに重要性が増すだろう。トランスヒューマンの時代においては、死の在り方が変容し、死の距離も変化するだろう。一人一人がどのような死生観を持って生きるかが大いに問われるようになるのがトランスヒューマンの時代なのではないかと思う。当然ながら、社会に蔓延するある種の空気のような形で集合的な死生観も醸成されてくるだろうが、結局のところ1人の人間として自らのどのような死生観を持って生きるかがこれまで以上に問われるようになってきそうな気配がある。


その他にも、思考のランダム性を高めることの重要性についても冒頭で話題に挙がっていたのが印象的である。思考のランダム性は自分の中では即興性という言葉に置き換えることができ、これはここ最近の自分がよく考えているテーマでもあったので興味深く話を聞いていた。自分が普段心掛けているのは、芸術的な実践を中心にして、言葉よりも先に身体が表現を望む方法でそれを自由に表現していく実践を行っている。言葉を使って話をする場面でもあって、それこそフリースタイルラップというものがあるように、言葉を使っていても即興的な実践はすることができるのだ。それでは今からミュンヘンの街に観光に繰り出して来たいと思うが、その中でも今日のクラスの振り返りをもう少し行いたいと思う。ミュンヘン:2023/7/1(土)12:20


10556.【ミュンヘン滞在記】Haus der Kunstでの7冊の良書との出会い


時刻は午後4時半に近づいている。正午にゼミナールのクラスを終えて、少し仮眠を取ってから観光に出掛けた。今日はまずHaus der Kunstに足を運んだ。ここは現代美術館で、写真の展示を含め、現代アートの作品を色々と堪能できた。中でも写真の展示を見ているときに、私たちの身体的な所作は改めて文化的な産物であることを思った。身振り手振りもそうだし、ひょっとすると表情にすら文化的な差異がある。当然ながら文化普遍的な身体的所作があることは認めるが、写真の展示を見ていると、文化ごとに特徴的な差異があることを見逃すことはできない。そうなってくると私たちの身体は、フーコーが述べる生政治的な形での影響下にあるだけではなく、多分に文化的な影響を受けていることがわかる。そこからそれは、今日のゼミナールのクラスでも扱った死生観に対しても当てはまることであり、さらには美意識に対しても当てはまることだと思った。そのようなことを考えながら、展示されている写真を撮影した写真家の美意識や世界観についても思いを馳せていた。その写真がそうであるのは、写真家の美意識と世界観がさせたのである。それは現実世界を写し撮っていながらも、多分に写真家のレンズを通した世界として顕現している。


この美術館を訪れて良かったと思うのは、ミュージアムショップで7冊の優れた学術書と出会えたことである。こうした書物との出会いもまた一期一会でとても感謝している。過去ミュージアムショップで思わぬ良書と出会うことがあり、今日はそうした機会に恵まれた。『成人発達理論から考える成長疲労社会への処方箋』でも取り上げたビョンチョル·ハンが最新刊を出版していることに偶然気づき、“Absence (2023)”という書籍をまず手に取って購入することにした。そこから“Gaston Bachelard: A Philosophy of the Surreal (2016)” “Toward a Transindividual Self: A study in social dramaturgy (2022)” “Aesthetics of Installation Art (2003)” “Artful Objects: Graham Harman on Art and the Business of Speculative Realism (2021)” “Becoming an Artwork (2022)” “After the Internet: Digital Networks between Capital and the Common (2022)”の6冊を購入することにした。合計7冊の良書と出会えただけでもこの美術館を訪れた価値があったと思う。旅先で購入した書籍は思い出と相まって、その書籍への思い入れが増し、その書物から得られる内容がより豊かになるといつも思う。旅行から戻って来たら、今日購入した書籍をじっくりと読み進めていきたいと思う。ミュンヘン:2023/7/1(土)16:51

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