No.1478 就寝前の気持ち_A Feeling Before Going to Bed
本日の言葉
When you become you, yourself, you see things as they are, and you become at one with your surroundings. Shunryu Suzuki
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タイトル一覧
6308.【日本滞在記】このリアリティ/『マチネの終わりに(2019)』を見て
6309.【日本滞在記】コロナの検査結果が出るまでの一部始終
6308.【日本滞在記】このリアリティ/『マチネの終わりに(2019)』を見て
時刻は日本時間で午前5時半を迎えた。いよいよあと3時間弱で日本に到着する。
アムステルダム空港でKLMの機内に乗った時、ある考えが自分に訪れた。自分はどうやら恐れていたらしい。怖かったということがわかった。日本に帰ることが。
そこからはしばらくその恐れについて考えていた。自分は何を恐れ、何を怖がっていたのだろうか。
この9年間、日本に戻る際に、そして日本から自分の本来の生活地に戻る際に、何とも言えない感覚に囚われていた。その感覚の正体は、どうやら自分が抱えていたある恐れにあったことがふとわかったのである。
それは記述を退けるような内容の恐れであり、今もまだその恐れの正体は分からないと言っていいかもしれない。恐れの要因たりうることはいくつも思いつくのだが、どうもそれらは真因たりえない。
そんなことを考えながら、その問題から離れた。すると先ほど機内で睡眠を取っていたときに、何かが氷解するような感覚があった。そこには静かな感動があったのである。
今、この日記を書き始めて少しばかりの時間が経った。その間にもこのリアリティでは、誰かが笑い、誰かが泣いている。この間にも、ある生命が死に、ある生命が誕生している。
笑いや涙、死と誕生がこのリアリティなのではなく、このリアリティはそれらを超えたものである。全体としてのリアリティだけがここにある。
時計の針を巻き戻してみる。先ほどの睡眠の前に、2本目の映画を見ていた。
2本目に見ていたのは、西谷弘監督が制作した『マチネの終わりに(2019)』という映画である。これは、東京、パリ、ニューヨークを舞台にあるギタリストの男性とジャーナリストの女性の愛の物語を描いた芥川賞作家·平野啓一郎氏の小説をもとに作られたものだ。
ここ最近見ていた映画とは異なるジャンルの映画である。この作品では、福山雅治さんがギタリスト役の蒔野聡史を演じ、石田ゆり子さんがジャーナリストの小峰洋子を演じている。
東京、パリ、ニューヨークというのは自分にとってゆかりのある地であり、東京とニューヨークには実際に生活をしていたことがある。この作品を鑑賞しながら、人生の中に生じる出会いとすれ違いについて考えていた。
作品の中で、主人公の蒔野が述べた言葉が印象に残っている。それは時の流れについて、そして時の性質について考えさせられるものだった。
その言葉が頭から離れず、ふと過去について思い出した。すると、その過去はもうそのときに経験していた過去ではなくなっていて、過去が絶えず新たな意味付けを伴って変化するものであることを知る。過去は本当に変わるらしい。
起きた出来事そのものは変わらなかったとしても、その出来事を取り巻く意味や感覚は、確かに変化するものなのだ。今が変われば過去が変わるということ。それを示唆するような体験だった。
物語の後半で、蒔野がベートーヴェンのある言葉について解釈をしていた。ベートーヴェンが残した言葉は、時が経って初めてわかることがあるということを示唆するものだった。
この日記の冒頭で書き留めていた、自分の中にある恐れもそうだった。9年の時間が経って初めて、今日その瞬間にわかるものがあったのである。何かをわかるためには、やはりそれ相応の時の発酵が必要なのだろう。
今、閉じていた窓のブラインダーを上げてみた。すると、先ほどまで真っ暗だった天空が明るみ始めていることに気づいた。
地平線の向こう側が明るくなり始めていて、地平線が赤味を帯び始めている。そして地平線の上空がエメラルド色に変わり始めている。
地球の景色が変わった。今この瞬間にもそれは変わっていく。
自分が変わった。今この瞬間にも自分は変わっていく。それがこの世界であり、自己なのだ。関空に向かうフライトの中で:2020/10/8(木)06:11
6309.【日本滞在記】コロナの検査結果が出るまでの一部始終
時刻は午前9時を迎えた。関空に到着する予定時刻は8:55だったが、フライトが順調に進み、予定よりも随分と早く到着した。
関空に到着すると、まずは機内にいるマニラ行きの人たちがコロナの検査に案内されていった。その後しばらくして、ビジネスクラスから検査に向かった。
オランダでは現在このような検査は行われていないのではないかと思う——少なくとも日本から来る人に関しては検査がないように思う——。そうしたことから、どのような検査なのか幾分楽しみでもあり、幾分未知ゆえの何とも言えない緊張感があった。
まずは試験管と漏斗を係員の人に渡していただき、そこから唾液を採取するブースに向かって行った。私が入ったブースは6番である。
ブースは仕切られていて、ブースの壁に向かって唾液を出し、試験管のある一定量まで出せた人からその試験管を検査にかけてもらう。ブースの壁には梅干しやレモンの写真が貼られていて、親切にも、「唾液が出にくい方は、アゴや耳あたりをマッサージしてください」という言葉が貼られていた。
いざ唾液を出せと言われると、ちょっとした抵抗感があり、すぐに唾液が出てこなかった。ブースの壁に貼られている梅干しとレモンの写真を見てなんとか唾液を出そうとしていると、ふとメタ認知が働いた。
「自分はパブロフの犬か(笑)!(心理学者パブロフを参照)」と思わず笑いがこみ上げてきたのである。しばらくして唾液がある程度出たと思ったところで、後ろから係員の女性に声を掛けられた。
係員の女性:「どれくらい出ましたか?」
私:「これくらい出ました。まだダメですかね?」
係員の女性:「そうですね、もうちょっとですね~。綺麗な唾液が出ているので頑張ってください!」
なんだか嬉しいような嬉しくないような声を掛けていただいた。その後私は、再び梅干しとレモンの写真を眺め、アゴや耳の周りをマッサージし、なるべく早く唾液を出そうと頑張った。すると今度は男性の係員の方に声を掛けられた。
男性の係員:「6番の方いかがですか?」
私:「(ん?今自分はこのリアリティの中で「6番の方」なのだ)いや~、あと少しです。頑張って出します」
男性の係員:「焦らなくていいですよ~」
私:「どうもありがとうございます」
そのようなやり取りがあった後、なんとか唾液を指定された量まで出すことができた。そして検査員の方に渡した。
そこからは検査結果を待つ必要があり、結果を待つ専用のスペースまで歩いて行った。何か特別な部屋のようなところで待つのかと思ったが、そうではなく、単に空港の2階のフロアの椅子に腰掛けて待つことになった。
検査結果は40~50分で出るとのことであり、結果が出た人の番号がモニターで表示される仕組みになっていた。私は唾液を出したブースは6番だったが、検査の順番は7番だった。「ラッキーセブン」という数字であるが、これで結果が陽性だと洒落にならないと思っていた。
結果が出るまでは、どこか大学入試の結果が出るかのような、少し緊張した状態が続いていた。40分ほど待つのかと思ってしばらく目を閉じてゆっくりし、そこからはパソコンを開いて日記でも書こうと思って一連の日記を書いていた。
40分待つ前提でいたのだが、思いの外早く結果が出始めた。まず3番の方の表示がモニターに現れ、そこからは続々と一桁台の番号がモニターに表示された。
すると、私の番号である7番は飛ばされ、8番と9番が表示された。「唾液を出すのに一苦労したから仕方ないよな···」と思って待っていると、そこからは二桁台の番号が現れ始めた。10、11、17、そこから10番台が続々表示されていき、自分の番号が表示されないので、「まさかのラッキーセブンが陽性か···」という不安が脳裏をよぎる。
するとようやく待ちに待った7番が表示された!私は係員の方に「7番です」と自分の番号を告げ、結果が報告される場所に通されることになった。
結果を伝えてくれる方が白い長机に座っているのが見え、足早に近づいていき、お互いに笑顔で挨拶を交わした。
係員の女性:「はい、陰性です」
私:「そうですか、ありがとうございます」
結果は無事に陰性だった。陽性だったらどうしようという思いでいたが、結果が陰性で本当にホッとした。
遡れば14時間前にアムステルダムのスキポール空港でパスポートコントロールの係員と人と人とのコミュニケーションをしていたことについて書き留めていたように思う。関空でも確かに人と人とのコミュニケーションがあったことは、日本到着後に最初に喜ばしいことであった。関空のラウンジ「比叡」にて:2020/10/8(木)11:13
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