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インテグラル理論と成人発達理論に関するお勧め書籍(12/10/2019にアップデート)


いつも「発達理論の学び舎」をご覧になっていただきどうもありがとうございます。

おかげさまで、監訳書『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』は多くの方に読まれつつあるようです。

インテグラル理論や成人発達理論に対する注目が高まるにつれて、「インテグラル理論や成人発達理論に関するお勧めの書籍はありますか?」と尋ねられることがよくあります。

そうしたことを背景に、今回は幾つかお勧めの書籍を簡単に紹介したいと思います。インテグラル理論や成人発達理論に関するお勧めの書籍はそれこそ無数にあるのですが、絶版になってしまっているものが多く、入手しやすいものだけを下記に紹介させていただきます。

*こちらの音声ファイル(約33分)にて、下記の書籍のそれぞれについて口頭で説明させていただいています(音声ファイルはGoogle Driveに保存されているため、Google DriveにアクセスできるPCよりご視聴・ダウンロードください)。

インテグラル理論に関するお勧めの書籍

本書は、インテグラル・ジャパン代表の鈴木規夫さんが執筆されたものであり、インテグラル理論の枠組みを実践で活用するための優れた指南書です。特に、インテグラル理論の枠組みの中で核となる四つの象限の活用方法を丁寧に解説しています。

本書の出版年は古く、インテグラル理論そのものを扱っているわけではないのですが、ウィルバーの翻訳書の中で現在でも辛うじて手に入るものであり、ウィルバーの発達思想を学ぶのに有益な書籍です。また、人間発達の観点から、治癒と変容に関する実践的な知を得る上でもお勧めの一冊です。

本当であれば、翻訳版の『実践インテグラル・ライフ―自己成長の設計図』を挙げたいところですが、現在絶版のようです。原著の英語は非常に読みやすく、インテグラル理論をご自身の変容や治癒に活用する際の大きな見取り図を提供してくれる点で本書を推薦します。本書は、監訳書『インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル』ではあまり言及されていない統合的な実践について詳しく紹介しており、特にスピリットやシャドーに関するワークの説明が参考になるかと思います。

ここ数年において出版された書籍も含め、数あるウィルバーの書籍の中でも、人間発達について非常に深く掘り下げている点から本書をお勧めさせていただきます。特に、巻末に掲載されている数十個の発達段階モデルを比較している表の史料価値は優れています。ウィルバーの発達理論をより深く探究したいと思われている方にお勧めの一冊です。

本書は、私がジョン・エフ・ケネディ大学に在籍していた時にお世話になっていたマーク・フォーマン博士が執筆したものです。本書は、発達心理学者スザンヌ・クック=グロイターの発達モデルに依拠しながら、各発達段階(ティールを超えて、ターコイズやインディゴに該当する段階まで説明しています)について丁寧に解説しているのみならず、各発達段階に固有の病や課題にはどのようなものがあり、それらの病や課題に対する介入方法も紹介しています。フォーマン博士自身がサイコセラピストということもあり、サイコセラピーの技法に関する紹介が充実しており、紹介されている技法はコーチやカウンセラーなどの方にも有益でしょう。また、本書は全体を通してインテグラル理論の枠組みを活用しているため、インテグラル理論の実践書としても非常に価値ある一冊だと言えます。

インテグラル理論および成人発達理論を取り巻く昨今の風潮に建設的な批判を投げかけているお勧めの書籍

本書は、私が以前に在籍していたマサチューセッツ州レクティカの共同設立者の一人であるザカリー・スタインが最近出版した書籍です。日本の社会でも、徐々にインテグラル理論や成人発達理論が知られるようになってきましたが、それらの理論の取り扱いには課題が山積みのように思われます。そうした課題の解決に向けて、優れた視点をいくつも提供してくれているのが本書です。インテグラル理論や成人発達理論を取り巻く言説の問題点は何か、私たちはどのようにそれらの理論と付き合っていけばいいのかを考察するための貴重な一冊としてお勧めです。

成人発達理論に関するお勧めの実践書籍

本書を通じて、成人発達理論をリーダーシップ開発に活用する際の理論的枠組みを深く学習することができます。そのため本書は、リーダーシップ開発にご関心のある実務家の方にお勧めです。

本書は、認知的発達理論の枠組みから、エグゼクティブの思考形態について解説しており、書籍の副題にあるように、エグゼクティブ開発の実践的な手引き書としての側面がありお勧めです。

インテグラル理論の枠組みで言えば、「内省能力(内省的知性)」のラインを深く研究したパトリシア・キングとカレン・キッチナーの書籍です。昨今、リフレクションの実践が流行していますが、その実践に理論的な裏付けをする上でも本書は一読の価値があると思います。特に、内省能力がいかに発達していくのかについて、発達段階1から段階7まで詳しく解説しており、リフレクションの実践に関心のある方にお勧めの一冊です。

成人発達理論に関するお勧めの学術書籍

下記の10冊は、基本的に大学院レベルで人間発達を探究したいと思われる方にお勧めの書籍です。理想としては、実務家の方にも目を通していただき、人間発達に関する一段深い理解を獲得していただければと思います。

発達測定に関するお勧めの書籍

下記の書籍の多くは、残念ながら日本のアマゾンからはほとんど入手できないようですが、発達測定に関してご関心のある方もいらっしゃるかと思いますので、厳選した5冊を紹介させていただきます。

本書は、ロバート・キーガンが提唱した「主体・客体インタビュー」というインタビュー形式の発達測定方法について解説しています。事例や分析プロセスの解説は丁寧ですが、下記の書籍の著者であるオットー・ラスキーは、キーガンの主体・客体インタビューをさらに洗練させたものを考案しており、どちらか一冊を選べと言われれば、下記の2の書籍の方をよりお勧めさせていただきます。

本書は、以前私が師事をしていたオットー・ラスキー博士が執筆したものであり、キーガンの主体・客体インタビューをさらに洗練させたインタビュー手法について解説をしています。豊富な会話事例と巻末にある分析マニュアルは、発達測定に関心のある方にとって非常に有益かと思います。こちらの書籍については、拙訳がございますので、原文で読むことに抵抗のある方はご参考にしていただければと思います。

本書は、上記2の続編であり、内容としては、キーガンの発達理論ではなく、マイケル・バサチーズの認知的発達理論を取り上げています。注目に値するのは、認知的発達過程において見られる28個の思考形態を詳細に説明し、それらがどのようなプロセスで発達していくのかを丁寧に解説している点です。本書の巻末には150ページほどの分析マニュアルが掲載されており、こちらも非常に価値のある資料です。

ハーバード大学教育大学院に在籍していた時にロバート・キーガンに師事をしていたスザンヌ・クック=グロイターの書籍です。本書では、インタビュー形式ではなく、文章完成形式の発達測定について解説がなされています。本書だけで文章完成形式の発達測定について学ぶのは難しいですが、非常に参考になる観点をいくつも紹介してくれているため、お勧めの一冊です。

上記のスザンヌ・クック=グロイターは、自我の発達研究で功績を残したジェーン・ロヴィンジャーの発達理論および発達測定方法をさらに洗練させたことで有名です。本書は、ロヴィンジャーが執筆したものであり、文章完成形式の発達測定の古典的な名著です。巻末の添付資料には、実際のアセスメントの際に活用される質問項目も掲載されています。

上記の5冊はいずれも発達測定に焦点を当てた専門的な内容になります。そのため、発達測定という特定領域にご関心のある方のみにお勧めの書籍です。ただし、2と3の書籍は、ラスキー博士自身がサイコセラピストでもあり、かつコーチでもあるという背景から、実践に資する事柄を数多く論じているため、サイコセラピストやコーチなどの対人支援に携わられておられる方にもお勧めです。

番外編(その他のお勧め書籍)

仏教の禅、イスラム教のスーフィズム、ユダヤ教のカバラなど、世界には意識の発達を説明する思想体系や実践技法が数多く存在しています。本書は、意識の探究において多大な功績を残した井筒俊彦先生の名著です。本書を読むことによって、西洋の発達心理学的な観点からだけではなく、東洋思想の観点からも、意識発達プロセスに対する理解を深めていくことができるでしょう。

言葉(コトバ)と意識の発達には深い関係があり、言葉の観点から人間発達について理解を深めるのにうってつけの一冊です。

本書は、フランス哲学者の森有正先生のエッセー集であり、その中には「バビロンの流れのほとりにて」が収録されています。こちらは、森先生がフランスに渡ってから執筆されたものであり、思索的日記形式で描かれているため、非常に読みやすく、随所随所の記述には人間発達の本髄のような事柄が書かれています。欧州での生活を始める前から本書を読み始め、直近の数年間において何度も繰り返し読んだ思い入れのある一冊です。

本書は、森有正先生と親交のあった、小説家の辻邦生先生の日記集です。全5巻にわたる一連のパリの留学記は、いかに生きるかを含め、人間発達の観点からも大きな影響を私に与えてくれました。本書は日記なのですが、もはや辻文学としての一つの文学作品なのではないかと思われます。

こちらは、『インテグラル理論』の翻訳者でもある門林奨さんが翻訳された論文です。原文は、上述のスザンヌ・クック=グロイターが執筆した“Ego Development: Nine Levels of Increasing Embrace Susanne Cook-Greuter (2005)”という論文です。 本論文は2013年に改定がなされましたが、2005年に公開されたこちらの論文から大きな変更はそれほどなく、門林さんの分かりやすい翻訳によって、自我の発達について詳しく理解するにはうってつけの論文です。

6 文献リストとして参考になるであろう拙著の論文

下記の三つの論文は、フローニンゲン大学に在籍している時に執筆したものになります。いずれも本文の内容に関して参考になることはほとんどないと思われますが、論文中において人間発達に関する文献を数多く引用しているため、論文の最後に掲載されいている文献リストは何かの参考になるかもしれないと思い、三つの論文を共有させていただきます。

11/4/2019にアップデート

本書は、平易な言葉を用いながら、禅や悟りとは何であるかを本質的に解説しています。著者の鈴木大拙先生が述べるように、禅や悟りというものを言葉を通じて理性的に把握しようとするだけでは何も意味がありません。そこでは直接体験が何よりも大切となります。本書は、そうした直接体験へいざなう書でありながら、同時に、高度な意識の発達段階において、現実世界がどのように知覚され、どのような言語表現をする傾向があるのかを理解する手助けにもなる書です。

本書は、美学者今道友信先生によって書かれた書籍であり、美学論を扱う先生の書籍の中でも読みやすい一冊です。美とは何なのか?「実践美学」とは何なのか?に関心がある方はもちろんのこと、本書の中には発達と美との関係性を示唆する記述が随所にあり、人間発達と美について考察を深めることに非常に有益な一冊です。

【追記】

今後も折を見て、お勧め書籍のアップデートをしていきたいと思います。

12/10/2019にアップデート

一昨年あたりから少しずつ、シュタイナー教育やシュタイナーの人間観・発達思想・種々の領域における実践(芸術、経済、医療、農業など)について探究をしています。ちょうど今住んでいるオランダには、イエナプラン教育、モンテッソーリ教育、ドルトンスクールなど、実に様々な教育が存在しています。

オランダのフローニンゲン大学に在籍していた最後の年は、私は教育科学学科に在籍しており、種々の教育手法についてフローニンゲン大学の教授たちと色々と意見交換する機会に恵まれていました。その経験を経て改めてそれぞれの教育手法を眺めて見たときに、それらは全て大変素晴らしい教育実践なのですが、インテグラル理論や発達理論の観点からすると、シュタイナー教育の持つ幅(span)と深さ(depth)は他の教育手法にはないほどに広く深いものがあります。

とりわけ、人間の霊的発達を核に据えて、そこから知的な教育、身体的な教育、芸術的な教育が、それぞれバラバラではなく統合的になされる点に、シュタイナー教育の大きな特徴と価値があり、まさにそれはインテグラル教育と呼ぶにふさわしいものかと思います。

これまで断片的ではありますが、一昨年から今日にかけて、シュタイナー教育やシュタイナーの思想についてはブログ記事の随所で言及していたように思います。今後も、断片的に色々と調べてわかったこと、そして何よりシュタイナーの教育思想と教育実践を、成人となった私自身が日々の自分の学習に取り入れている過程の中で得られた気づきや発見を今後もブログ記事の方に書き留めておきたいと思います。

シュタイナー教育は、インテグラル理論や成人発達理論の観点から見ても大変興味深いものであり、それは子供たちの霊的発達を射程に入れた全人格的な成長にとって意義があるだけではなく、私たち大人にとっての霊的発達や全人格的な成長に資する点にも大きな意義があるかと思われます。シュタイナー教育の実践風景がわかる素晴らしい動画を先日見つけましたので、下記に共有したいと思います。

私自身、シュタイナー教育を自らの絶え間ない自己教育の根幹に据え、日々自己とこの世界に対して新たな気づきや発見を得ているため、今後もそれらの気づきや発見を取り留めの無い形で些細ながらも共有していきたいと思います。

シュタイナーの世界①自由への教育

I「教育は芸術だ」II「教室は社会へ広がる」

シュタイナーの世界②自由への教育

III「光とともに大地に」 IV「シュタイナー教育の原点」

シュタイナーの世界③自由への教育

V「シュタイナーの思想と社会実践」VI 「人と社会を癒す 医療と金融」

過去の曲の音源の保存先はこちらより(Youtube)

過去の曲の楽譜と音源の保存先はこちらより(MuseScore)

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