時刻は八時半を迎えた。辺りは随分と明るくなった。
日曜日の早朝の空の上を、薄い雲がゆっくりと動いていくのが見える。雲が動いているのが目に見えるので、それはゆっくりというよりも、幾分早い速度だと言えるかもしれない。
今、ちょうど一日分のコーヒーを作り終えた。今日は午後から接心をするため、コーヒーを飲むのは午前中の一杯だけにしようと思う。
今朝方の夢について先ほどまで振り返っていたが、あと二つほど別の夢を見ていたことを思い出した。今朝方は随分と多くの夢を見ていたものである。
夢の中で私は、ある歴史上の人物の記念館にいた。両親と共にそこへ訪れていた。
その歴史上の人物は日本人なのだが、長く欧米で生活をすることによって、もはや風貌が日本人のようには見えない。風貌だけがわかり、名前や何をした人なのかがわからなかったため、この記念館を訪れることによって、少しでもその人物について知れたらと思った。
記念館は、まさにその人物が住んでいた家を公開したものである。その人物の家は、完全に欧米風の作りになっていた。
両親と私は、その人物が使っていた書斎に向かった。書斎の中に入ると、左手に立派な本棚があることに気づいた。
私は、どのような書物がそこに置かれているのかを確認した。すると、日本語の書籍はほとんどなく、フランス語とドイツ語の書籍が中心であり、英語の書籍も少々置かれていた。
背表紙を眺めてみても、フランス語やドイツ語のタイトルのため、それらの書籍がどのような内容のものなのかはわからなかった。少しばかり本棚を眺めた後、書斎の奥に向かった。
書斎の机は縦長の窓に面していて、そこから外の景色をいつでも眺めることができる。書斎には、窓から差し込む太陽の光で溢れていた。
書斎に置かれている本棚も立派なものだったが、それ以上に机も立派であった。
父:「この机は6,500万円ぐらいはするな」
母:「えっ?」
私:「6,500万円かぁ、結構な値段だね」
私はそのように述べながら、手で机をさすった。すると突然、父が机の上にかけられたカバーを勢いよく外した。
カバーの外された机の上に視線を落とすと、そこにはヨーロッパ言語で書かれた新聞の切り抜きや何枚かの写真が挟まってあった。
私:「あれっ、この写真お父さんに似てない?(笑)」
母:「本当だぁ(笑)」
それは、その歴史上の人物がアルプスかどこかの山を登った時の写真だった。燦然と輝く太陽を背景にし、その人物が一人で満面の笑みを浮かべている。
彼の全身は防寒着で包まれており、頭に暖かそうなニット帽のようなものを被っている。その自分の風貌と表情がどこか父に見えた。
母と私は父を少々からかったが、三人ともその人物が父ではないことを百も承知であった。ただ、どこかその人物は父を思わせるものをいくつも持っていたことは確かだった。
父:「じゃあ、そろそろ行くか」
父がそのように述べると、私たち三人はゆっくりとその書斎を後にした。その書斎には、どこか幸福の香りが染み付いていた。
きっとその人物の人生は幸福に包まれたものだったのだろう、と私は思った。フローニンゲン:2018/12/9(日)08:49
No.1470: A Fragment of Sunset
Although it had sometimes drizzled today, now it stops.
I can see a fragment of the glow of the sunset. Groningen, 16:17, Monday, 12/10/2018