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3206.【ボストン旅行記】キャサリン・エルギン教授との面談より


つい先ほどキャサリン・エルギン教授との面談を終えた。時間にしておよそ20分ほどあれこれと話を伺うことができた。

面談を終えて、今は再びハーバード大学教育大学院(HGSE)の図書館に戻ってきてこの日記を書き留めている。今日初めてエルギン教授とお会いしたために、最初に手短に自分のバックグラウンドを紹介し、そこから今の自分の哲学的な関心事項を共有した。

エルギン教授が今学期に提供しているもう一つのコースは教育哲学であり、そのコースの中で私の関心事項を探究していくことが可能であるとわかった。芸術教育の意義と芸術教育を取り巻く社会的な論説空間の発展とその問題について探究することに関して、そのコースは最適なものであるとわかった。

前者に関しては、デューイの教育思想を参照すると良いとエルギン教授から助言をいただいた。興味深かったのは、デューイは芸術そのものの価値を強調していたのではなく、芸術を通じてのコミュニティーや社会の形成に芸術の意義を見出していたようだ。

まさに私は、確かに芸術作品そのものに何かしらの価値があることは否めないが、芸術の真の価値は社会への参画と社会の発達を促すことなのではないかとここ最近思うようになっていた。そうした自分の関心をより深めていくために、エルギン教授から助言をいただいたように、デューイの書籍をフローニンゲンに帰ったら旺盛に読み進めていこうと思う。

芸術および芸術教育を社会の発展という文脈において探究していくこと。それが明確になったことは大変嬉しかった。

もう一つの私の関心である、芸術教育を取り巻く社会的な言説空間の歴史的発展に関しても、エルギン教授は大変素晴らしいテーマだとおしゃってくださった。このテーマを探究するに際して参照するべき哲学者について尋ねたところ、部屋に置かれている無数の書籍から最適なものを選んでくださることになった。

だがその場ですぐにこのテーマについて直接的に言及している哲学者の仕事を紹介することは難しいとエルギン教授は述べ、その分そのテーマは新たな観点を含んでいるとおっしゃってくださった。それを聞いて、そのテーマに関心を持った私に与えられた役割は、このテーマを深く探究し、芸術教育を取り巻く社会的な論説空間の変容および発達に関与していくことなのだと改めて思った。

ちょうど明後日に、芸術教育プログラムのディレクターであるスティーブ・サイデル教授と面談する機会をいただいたので、サイデル教授にも同様の質問をしてみるべきだとエルギン教授から助言があった。

最後にエルギン教授の最新刊の書籍についての感想を述べた。そして、現在執筆中の書籍がどのような内容のものなのかを聞いてみた。すると、現在は教育哲学の話題に触れた書籍を執筆している最中であるとのことであった。

確かにこれまでも、エルギン教授は教育哲学に関する論文を多数執筆しているが、教育哲学だけを取り上げた書籍を執筆していない。そのあたりの事情に尋ねてみたところ、笑いながら、「私はまだ教育哲学についてほとんど何もわかってないの」と述べたことには、驚きと共に、探究者としての真摯さを感じた。

エルギン教授はもう70歳を迎えており、長らく教育哲学の探究を世界最高峰の学術機関で行っていながらも、教育哲学についてはほとんどわからないほどにそれは奥深いものであることを私に教えてくれたように思った。

教育というのは本当に奥深いテーマであり、教育哲学は一生涯をかけて探究していくに価する領域なのだと思う。20分ほどの時間は本当にあっという間に過ぎた。

まだHGSEに来れるかどうかも定かではないのだが、来年エルギン教授のもとで自分のテーマを探究することができたらどれだけ幸せなことかと思った。ボストン:2018/10/1(月)11:16

No.1333: Autumn Grass Flowers

It’s a calm evening, and today is slowly approaching the end.

I’ll stop today’s music composition and start to edit my previous journals. Groningen, 17:34, Saturday, 10/20/2018

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