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3171. 文明の危機について


——人間の文明は、私たちの命と同じぐらいに儚く脆いものである——ポール・ヴァレリー

午前中には、ハーバーマスの書籍を読む前に、“The Collapse of Complex Societies (1988)”を読んでいた。本書が考古学に分類されるものであるということは、本書を購入して手にとって初めて知ったのだが、本書は文明の衰退と崩壊のプロセスとメカニズムを綿密に調査しており、とても感銘を受けた。

複雑性科学の観点から考えると、非常に納得のいく説明が随所になされており、これまで漠然と抱いていた説明論理に対して、考古学的な観点から新たな言葉を提供してもらったような気がした。

本書を読みながら、現代社会の崩壊の危機について考えざるをえなかった。「文明が終わる」ことに関してハッピーエンドはありえなく、絶望的な崩壊が不可避なのだと改めて思う。

そもそも文明が「終わる」ことに関して最初から平和的な終わり方などありはしないのである。「終わる」時には崩壊しかない。そのような考えを一層強く持つ。

著者が指摘しているように、これまでの古代文明と現代文明は諸々の点において異なるのは確かだが、著者が丹念に調査した、崩壊した文明の特徴を見てみると、現代文明もそれに該当するのではないかという思いを強くしていた。

そして実際に著者も、過去に滅びてきた文明と現代文明の共通点を指摘し、崩壊に向けたいくつかのサインが徐々に顕在化していることを指摘する。本書には数多くの古代文明がケーススタディーとして取り上げられており、それらを見ながら改めて思うのは、文明の崩壊が即人類の滅亡とはならなかった歴史についてである。

だが現代文明は、物質圏次元における地球の生存危機が危ぶまれるようになってきており、次に人間の文明が滅びる時には人類まで滅びてしまう可能性もなくはないのではないかという推論が生まれた。

本書を通じて著者は、文明崩壊のプロセスとメカニズムを解明することに加え、文明崩壊から救う手立てについてもインプリケーションを提供している。今後自分が教育哲学について探究していく際において、教育の意義と社会や文明の存続は切っても切り離せないテーマになってくるだろう。上記の書籍についてはまた改めて読み返したいと思う。

これから仮眠を取り、仮眠後にはテレマンに範を求めて作曲実践を行う。それが終われば、再びハーバーマスの書籍の続きを読み進めていく。

ハーバーマスの哲学思想については触れ始めたばかりであるが、すでに多くの洞察を与えてもらっている。そうした洞察は、私の専門である発達心理学に関する思想的な枠組みを再考することを促してくれ、非常に多くの実りを得ている。

これまで自分が探究してきたこと、とりわけ科学的に探究してきたことを、生粋の哲学者の思想をもとにして再検証していくことにこれから従事していく。もしかすると、これまでの私は、発達科学の枠組みに強く縛られすぎていたのかもしれない。

哲学者のハーバート・マルクーゼは、「私たちを自己の制約から解放するために必要なのは、一次元的な思考から脱却することである」と述べているが、人間発達に関するこれまでの自分の思考は一次元的なものであった可能性がある。

それは発達心理学——ないしは発達科学——という一つの大きな領域に則った思考の枠組みであり、ここからさらに人間発達に関する探究を深めていくためには、一次元的な思考から脱却する必要がある。そうしたことを可能にするカギがまさに、哲学的な探究にあるように思える。フローニンゲン:2018/9/24(月)13:38

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