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3054.【北欧旅行記】シベリウス博物館を訪れて


今、トゥルク大聖堂の前の椅子に腰掛け、アウラ川を眺めながらこの日記を書いている。トゥルクの町は思っていた以上に栄えており、少々驚いた。

とはいえ、フィンランド最古の都というだけあって全体として落ち着きがある。今日はシベリウス博物館に開館ちょうどに到着した。

博物館がまた開いたばかりであったから、しばらくはほぼ貸切の状態で館内の資料を閲覧することができた。館内にはシベリウスに関係する資料のみならず、諸々の楽器の歴史的変遷を伝える資料も充実していた。

館内に置かれているハープシコードは触ることができ、少しばかり音を出してみた。生まれてハープシコードに触れ、奏でられる音にしばし耳を傾けていた。

この博物館はヨーロッパ製の楽器を中心に 1500点以上もの世界各国の楽器を所蔵している。その中にはアジアの楽器も含まれていた。

中でも地下にあるオルガンホールでは、数多くの貴重なピアノとオルガンを見学することができる。博物館の中で私が最も多くの時間を過ごしていたのは間違い無く、シベリウスの生涯にわたる音楽活動と彼の人生を紹介した展示室だ。

シベリウスが自然と家族をこよなく愛していたこと、シベリウスの作曲のこだわり、お金に無頓着だったことなど、展示資料を通じて様々なエピソードを学んだ。帰り際にギフトショップに立ち寄り、シベリウスのドキュメンタリーDVDである“Visual Journey to the Music of Jean Sibelius”を購入した。

店員の方が親切に色々と説明をしてくれ、このDVDにはシベリウスが実際に住んでいた家の周りの自然を美しい映像で紹介したり、シベリウスの代表的な曲がドキュメンタリーの中で流れるということを聞いた。

アムステルダムのゴッホ美術館でゴッホのドキュメンタリーDVDを購入し、ロンドンのナショナルギャラリーでモネのドキュメンタリーDVDを購入したように、今回もシベリウスに関するこのドキュメンタリーDVDを迷わず購入した。中には二枚のDVDと小冊子が入っており、小冊子はシベリウスの生涯と作品について説明をしている。

解説書を読むと、「自然を崇拝し、季節から霊感を得た作曲家」とシベリウスが評されていた。その言葉を読んだ時、私がシベリウスに強く共感するのはこの点なのだということに気づいた。

北欧の自然はシベリウスにとって創造の源泉であり、なおかつ霊感の源泉であった。今、アウラ川を手前に向こうの景色を改めて眺めてみると、フィンランドの自然の豊かさがわかる。

解説書の中にシベリウスの日記が抜粋されていた。それはシベリウスがいかに自然を愛し、特に鳥を愛していたかを伝えるものだった。

1915年4月21日「今日は10時から11時頃に16羽の白鳥を見た。最高に素晴らしい体験だった!あぁ、その美しさ!白鳥たちは長い時間私の近くで円を描き、輝く銀色の線のように霞んだ日の光の中に消えていった。私はこうして今日一日を自然保護区で過ごした」

1915年4月24日「白鳥たちはいつも私の頭の中にて、人生に喜びを与えてくれる。この世の中で、美術も、文学も、音楽も、これらの白鳥や、鶴や、ヒシクイほどの影響を私に与えてくれるものはないと気づくのは奇妙なことだ。彼らの音、存在。私とって、交響曲とは人生の各段階における信仰の告白である」

自然から創造性と霊感を受けたシベリウス。そのシベリウスが私に新たな創造性と霊感を授けてくれているように思う。

トゥルク上空の空は晴れていて、柔らかい白い雲がところどこに浮かんでゆったりと流れている。トゥルク:2018/8/30(木)14:55

過去の曲の音源の保存先はこちらより(Youtube)

過去の曲の楽譜と音源の保存先はこちらより(MuseScore)

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