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2832. コーヒーの入れ方と生き方


時刻は午前八時を迎えた。一羽の小鳥が今、高らかな鳴き声を上げた。

先ほど、考え事をしながらコーヒーを作ろうとしていたら、水の分量を大幅に間違えた。起床直後に作っているお茶の分量と同じほどの1リットルの水をコーヒーメーカーに注いでいる自分がいることに気づいた。

実は私は冬の時代には毎日1リットルほどのお茶とコーヒーを飲んでいた。今から考えるとそれは過剰であり、フランスの文豪バルザック並みに毎日コーヒーを飲んでいたことがわかる。

1リットルと書くと量が多いように思うが、大体コーヒーカップ5杯ほどの分量である。現在はコーヒーを毎日午前と午後に一杯ずつしか飲んでいない。

寒さの厳しい冬になったらまた分量が増えるかもしれないが、当面はコーヒーを飲みすぎないようにこれくらいの量に留めておきたい。コーヒーの分量を間違えてしまったので、今からもう一度コーヒーを作り直す。

最近はコーヒーを作るときの工夫として、滴るお湯の速度を遅くするようにしている。より濃いコーヒーを抽出するためにはコーヒーメーカーから出てくるお湯の速度がゆるかな方がいいのではないかと考え、今はお湯の出口の下にフォークを横に置き、フォークを滴る形でお湯が降りていく工夫をした。

以前は木製の箸を使って同じことをしていたのだが、見ると、箸の先端が熱によって変形してきていることに気づき、箸を使うことはやめにした。スプーンでは陥没した部分にお湯が溜まってしまい、確かにスプーンを逆さにして対処するというアイデアもあったが、フォークの方がお湯の落ち方が良い。

日本に住んでいた時は自分が選んだコーヒーメーカーを使っていたが、今は家に備え付けのものを使っている。今後はまた自分で選んだコーヒーメーカーを使いたいと思う。

先ほど、創造活動だけに従事する生活とそうした生活を可能にするための投資の重要性について少しばかり文章を書き留めていたように思う。欧州での二年目の生活が終わりに差し掛かるに連れて、自分が情熱を傾けられることだけに従事する生き方をしていこうと思った。

書斎の窓辺によってきた小鳥を眺めていた時に、その小鳥は嫌々そこで休んでいるわけではないことに気づいた。また、嫌々空を飛んでいるわけでもないことを知った。

嫌々物事に取り組む傾向があるというのはもしかしたら人間だけなのではないかと思う。「やる気がないならやめちまえ」「嫌ならやらなくていいわよ」というのは幼少時代に両親から言われてきたセリフである。

これは甘えを助長するものではなく、むしろこうしたセリフを述べるときの両親は厳しい態度であったから、それは躾の一環であったように思う。今振り返ってみると、それらのセリフに内包されている教育的意義と、人間が真に生きることの真理が見えてくる。

昨日も就寝前に、やる気がないならやめた方がいいし、嫌ならやらない方がいいということを思った。人はある対象に真に情熱を傾けているのであれば、それをすぐにやめることなどできないはずである。

仮にやめたいと思えばすぐにやめればいい。最初からその対象は自分の情熱の範囲外にあるのだから。

私はこれまで様々なことに挑戦し、同時にその分だけ様々なことをやめてきた。やる気がないなら本当にやめるべきだ。嫌だと思うならばそれを早急にやめるべきだ。

やめずに残ったものが自分の本当の使命なのだと思う。色々なことに挑戦し、色々なことに挑戦する中で結局私に残ったものは一体何だったのだろうか。それを昨夜考えていた。

すると幾分笑いが込み上げてきた。結局自分に残ったのは、日記、作曲、デッサン、そして読書だった。

これら四つであれば、人生を終える最後の日の最後の瞬間まで従事することができるし、そうしたいと思わせるものだということに気づかされた。慣習的な目でそれら四つを眺めれば、それらの活動は取るに足らないことかもしれない。

さらにそれらを飽くなき金銭獲得を希求する現代社会の病理的な目を通して眺めてみれば、これら四つの活動は金銭獲得に結び付きにくいという特徴を持つがゆえに、本当に取るに足らないものだと見なされてしまうだろう。

本当に取るに足らないと見なされてしまうものが自分にとって本当に大切なものだということに気づかされた。やめたくないと思うものに出会えるまでやめ続けていくこと、活動に従事するその行為そのものに没頭できる対象に出会えるまで様々なことを嫌いになって手放していくこと。

やめ続け、手放し続けた末に残ったものを人生の最後の最後の瞬間まで続けていけばいいのではないだろうか。人間以外の生き物はそうして生きている。フローニンゲン:2018/7/13(金)08:44

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